【行動科学×習慣】SNS更新は4回目ごとに〇〇を⁉︎ 継続の秘策とは?

f:id:onaji_me:20211021114133j:plain

精神論ではなく、行動に焦点を当てて実践する行動科学を店舗運営や接客に活用する方法について、行動科学コンサルタントの冨山真由さんにご指南いただく連載企画。今回は、滞りがちなお店のSNS更新に着目。つい後回しにしてしまうのはなぜなのか、その理由と解決法について話を聞きました。過去の記事は下記からご覧ください。

人はなぜ継続できない!? 脱却のカギは「4」と他者からの承認

f:id:onaji_me:20211021114136j:plain

――行動が継続しないといわれる理由を、行動科学の観点から教えてください。

冨山:そもそも、人の記憶は72時間しか定着しないといわれています。いざ「やろう!」と決意しても、3日間しか記憶はもたない。つまり、人は誰しも3日坊主なのです。

では、3日以上続けるにはどうすればいいかというと、4日目や4回目など、「4」という数字を大事にすることです。例えば、お店のSNSを毎週更新している場合、4週目に何か楽しいイベントを用意するなど、続けたくなるような施策を考え、その翌週からはまた1週目、2週目……と考えていきます。これが、最もシンプルに実践できる「続けるコツ」です。

また、人は意志の力では続かないともいわれます。SNSの更新も最初は楽しいのに、だんだん面倒に感じてしまう人がいますよね。人は楽しめたり、やりがいを持てたりしないと続かないものです。もし、スタッフにお願いしているSNSの更新が滞っていたら、管理責任者の方はまず「承認の声掛け」を行うことを意識しましょう。

具体例を挙げると、スタッフがSNSを更新してくれたら、管理責任者が毎回「いいね」「♡」ボタンを押すのはもちろんのこと、2回に1回くらいは「今日も更新ありがとう」「投稿見たよ」といった承認の言葉を掛ける必要があります。それがスタッフのやりがいとなり、面倒でも続けたいと思うようになるのです。

POINT:承認の声掛けは一定期間繰り返すことが大切

行動科学では、A:環境や条件を整えB:行動しC:結果を評価するという「ABCサイクル」を循環させることが重要だと考えます。このサイクルのCにあたるのが「承認の声掛け」。特に、新しい行動を定着させるためには、最初の数カ月など一定期間の声掛けを行いましょう。

 

SNSが続かない原因は「コンセプト」と「仕組み」欠落の可能性も!

f:id:onaji_me:20211021114139j:plain

­­――SNSの更新が滞っているお店を散見しますが、要因があるとすれば、どのようなことだと思いますか?

冨山:もしかしたら、個人のSNSと同じ感覚で使っているのではないでしょうか。思いついたときに、思いつくままの内容を掲載していると、更新は滞りがちになります。しかし、お店のSNSとは本来、ある程度事前の準備が必要なものです。ハッシュタグを明確に決め、どの投稿がどれくらい閲覧されたかを分析し、集客や顧客満足度につなげる。まずは、SNSをビジネス活用するという認識を持つことが大前提になります。

それを踏まえて、以下の2つのポイントを押さえましょう。

SNS発信のコンセプトを明確にする

発信する内容のコンセプトを明確にすることが大切です。お店の方針や理念につながるため、コンセプトは本来、経営者側が決めるべきことです。しかし、トレンドに詳しいスタッフにも一緒に考えてほしい場合は、「お店がお客に伝えたいこと」「大切にしている思い」などを共有してください。まずはそこからがスタートです。

POINT:写真の撮り方も明確にすべきコンセプトの一つ

同じお店のページでも写真に統一感がないと、より良い効果が生まれません。複数名のスタッフがSNS更新を担当していると、人によって写真の撮り方も違えば、画像加工アプリを使う人がいるかもしれません。同じSNSアカウントなのに統一感のない写真を掲載していると、コンセプトが明確に伝わらず逆効果です。特にInstagramなどビジュアルが重要なSNSではコンセプトの明確化と共に、写真撮影時の角度、アングル、加工アプリの使用可否といったルール決めが必要です。

 

スケジュールを立て、更新を「仕組み化」する

仕事に対する責任感の強さや撮影スキルは、人によって異なります。SNSを業務の一つとし、個人の経験やスキルに左右されない仕組みづくりが必要です。特にSNS担当者がいないお店では、スケジュール管理が一番重要。まず、更新日時を決め、それに合わせて投稿する写真やコメントを事前に用意します。

例えば、ケーキ屋さんが期間限定の果物を使ったケーキの販売を計画しているとしたら、「火曜日の14時に、SNS用の商品写真を撮影する。そのために11時までに試作品を用意する」というように予定を組みます。また、1回の撮影で数種類、複数カットを撮影しておき、写真に合わせたコメントも準備。決められた日時に発信できるようストックしておきましょう。

思いつきではなく「作業日」を設定し、事前準備から更新までを仕組み化する。それが習慣となり、いずれは常態化していきます。

POINT:SNS担当は最小人数で。役割分担もしっかりと決める

担当者を最小限にし、〇〇さんは撮影、△△さんはテキスト作成など、役割分担をきちんと決めることも続けるためのコツです。SNSの更新をスタッフに任せても構いませんが、更新前には必ず責任者がチェックするのが鉄則です。そうすることでスケジュールを管理できるほか、予定にない情報の配信や余計なものが写り込んだまま配信されるというリスクも回避できます。

 

管理責任者が「行動を継続する」ために必要なのは、捨てるスキル⁉︎

f:id:onaji_me:20211021114142j:plain

――責任者が忙しくて、SNSの管理ができない場合はどうしたらよいでしょうか?

冨山:確かに、忙しくてだんだん手が回らないといった悩みを聞くことがありますね。やらなければいけないと分かっていてもできないのには理由があり、行動科学では「不足行動」と「過剰行動」に分けて考えます。

不足行動とは

本当はやりたいのにできない行動のこと。例えば、ランニングに行こうとしたが、面白い動画を見つけて夢中になり、行かずじまいになってしまうなど。不足行動は、結果を得るまでに「時間」「手間」「コスト」などが発生するため、継続できないことが多い。

過剰行動とは

本当はやめようとしているのにやってしまう行動のことで、別名「ライバル行動」と呼ばれる。例えば、禁煙や禁酒、ギャンブルなどが該当し、吸えばリラックス、飲めば・当たれば楽しいなど、すぐに結果が得られるためにやめられない行動を指す。過剰行動は、それ自体が享楽的で誘惑に富んだものが多い。

責任者にありがちなのは、SNS管理や担当者に対する承認の声掛けができていない「不足行動」と、その不足行動の起因となる多重業務の「過剰行動」です。そして、この「不足行動」と「過剰行動」は、常に私たちの中でせめぎ合っていて、たいてい「過剰行動」が勝ちます。

では、この多重業務という「過剰行動」を抑えるためにはどうしたら良いのかというと、やらないことを決めればいいのです。

皆さんは、やらなければいけないことの「優先順位」を決めることはよくあると思います。でも、結果的にできなかった、ということもありませんか? 行動科学では、これは意味のない順位付けと考えます。

結果的にできないかもしれないことより、やらないことの順位「劣後順位」を決めることを推奨しています。SNSの管理や担当者に対する承認の声掛けは、1日10分もあればできること。その分、やらなくてよいことを洗い出してみてください。

POINT:「管理をしない=人に頼る」という選択肢も一つ

そもそもSNSの管理をしないという選択肢もあるのではないでしょうか。責任者は承認ボタンを押すだけで、投稿前のチェックやスケジュール管理は責任ある立場のスタッフに任せる。任せられるスタッフがいなければ育成する。それも難しい場合は、専門スキルを持っている業者にアウトソーシングすることを考えてもいいでしょう。すべてを自分自身でカバーする必要はありません。さまざまな手段を活用し、「続ける仕組み」をつくりましょう。

 

続けるコツが身に付く3STEP

f:id:onaji_me:20211021114146j:plain

――SNSの発信をこれから始める、またはやり方を見直したいお店のためにアドバイスをお願いします。

冨山:人は最初に頑張りすぎてしまうと、途中であきらめてしまうことがあります。 “燃え尽き症候群”という言葉を聞いたことがある人もいると思いますが、最初は「よしやるぞ!」と意気込んでも、だんだん続かなくなってしまうので、少しずつ慣れさせることがポイントです。

そこで、具体的な方法を3つのステップで紹介します。

STEP1:ツールの絞り込み

まず、SNSのツールは1つに絞りましょう。ブログ、LINE、Instagram、ホームページなど、全てやるのではなく、お店や担当者が使いやすいツールで構いません。まずは1つのツールで、無理なく更新を続けられるような仕組みづくりをしていきます。

STEP2:更新頻度

SNSの更新は2日に1回くらいがちょうどいいと言われますが、だからといって最初から更新頻度を2日に1回に設定する必要はありません。まずは1週間に1回、または2週間に1回くらいでも、続けられそうなペースでスタートしましょう。4回目イベントもお忘れなく。

STEP3:担当者を決める

複数人で担当すると混乱を招くので、担当者は1~2人程度にします。やりたい人やできる人を募っても構いませんが、ある程度責任のある立場のスタッフに任せた方が賢明です。そして、管理責任者は担当者と一緒にSNSのコンセプトを決め、発信する内容やスケジュール管理を話し合いましょう。

――最後に。続けていくうえで、管理責任者が注意すべきことはありますか?

冨山:承認の声掛けの必要性について前述しましたが、その際の褒め方には注意が必要です。例えば、「〇〇さんセンスあるね」といった声掛けはNG。やりがいを感じさせ、続けてもらうためには、担当者自身のセンスやスキルに対してではなく、お願いした「撮影」や「コメント」などの行動に対してのみ承認するよう意識してください。

SNSは、「いいね」の数で反響が目に見えて分かるからこそ、担当者が頑張りすぎてしまうこともあります。頑張りすぎると燃え尽き症候群に陥ってしまう以外にも、心理的な負担を抱えるなどさまざまな問題を引き起こしかねません。

そうならないよう、SNSをビジネスとして活用する意識を持つことが大切。そして事前に更新頻度を決め、更新させすぎないようにするなど、しっかりとした仕組みづくりを行いましょう。

 

監修者プロフィール/冨山真由さん
大学で健康行動理論を学んだのち、医療業界にて受診者への行動変容アプローチ指導や予防医療推進のための環境づくりを経て、人材育成の業界へ。日本では数少ない行動科学コンサルタントとして、多店舗展開の飲食店をはじめ大手メーカー、金融サービス業など数多くの企業の新人研修、マネージャー・店長研修に携わる。学術理論に基づき、現場で実践させるために体系化されたオリジナルメソッドに定評あり。
http://mayu-tomiyama.com/

f:id:onaji_me:20210806131953j:plain

取材・文/前田実穂
編集ライター、メディアディレクター。原宿カルチャーから社会インフラまで、そしてローティーンからシニアまでとジャンル・世代問わず幅広く経験。飲食と接客が好きすぎて下北沢にてバルを運営(6年目)。実はITOベンチャーのCRM職出身という異色の経歴も。

画像提供/Joel /PIXTA(ピクスタ)