商圏人口の調べ方。飲食店を成功に導く商圏分析の手法と活用方法を解説

商圏人口の図を勉強している人のイラスト

商圏人口の分析は、新規飲食店の出店を検討する上で欠かせない作業です。また、既存店でも運営を最適化する上で手に入れることができる機会になります。

飲食店を成功させるためには、人の動きに関するデータを収集・分析し、それをもとに新規店の出店場所やターゲット層、広告宣伝を実施する範囲を決める必要があります。

商圏人口の効率的な調べ方、飲食店での商圏人口に関するデータの活用方法について分かりやすく説明します。

こんな人におすすめ

  • 新しく飲食店の出店を検討している
  • 商圏人口の調べ方を知りたい
  • お店の集客を増やしたい

商圏とは?

「商圏」とは、お店の商品・サービスを提供する際のターゲットとなる地域を指します。

お店の商圏内に住む人の数「商圏人口」といい、「商圏分析」では自店の商圏人口、男女比や年代、世帯、競合店の有無などを調査・分析します。商圏を調べることで、例えば、チラシを配布するべき範囲を把握できるなど、効果的なマーケティングが展開できます。

また、新規でお店をオープンする際、お客さんが来店しやすい条件がそろう立地を探るためにも商圏分析は重要です。さらに、店舗のコンセプトや想定ターゲットとその商圏がマッチしているかどうかといった検討材料としても活用できます。

商圏分析の第一歩。円商圏を作成し「自店に合った商圏」と商圏人口を見極めよう

「商圏分析」と聞くと難しそうな印象を受けるかもしれませんが、「円商圏」をもとにした比較的シンプルな調べ方があります。「円商圏」を設定し、そこから商圏人口を割り出す調べ方について説明します。

円商圏とは?

円商圏とは、自店舗を中心に半径を指定し、描いた円の内側の部分を指します。円商圏を作成する際は、店舗周辺の住宅地図をコピーした紙とペンやコンパスを用意します。
店舗からの距離や移動時間によって円商圏の目安となる半径は異なり、大きくは以下の図のように第1次〜3次の3つの商圏に分けられます。

商圏人口を解説したイラスト

編集部作成
第1次商圏

店舗から徒歩約10~15分程度の範囲です。気軽に立ち寄れる距離感なので、この商圏内のお客さんならば、業態によってはほぼ毎日利用してもらえる可能性があります。ファストフード、定食、ラーメンなどお客さんに気軽に使ってもらえる業態に向きます。

第2次商圏

店舗から自転車で10~15分程度の範囲で、週1~2回来店する可能性があると考えられます。居酒屋、焼肉店など、ちょっとした集まりに使える業態に向きます。

第3次商圏(専門品商圏)

店舗から自動車で30~40分の距離で、1~3カ月に数回の来店が期待できる商圏です。専門性が高い商品やサービスを取り扱う場合などに利用することがあります。グレードの高いメニューやマニアックなメニューを提供する業態にフィットします。

円商圏をもとに商圏人口を割り出す方法

住宅地図を確認しながら円商圏内に含まれる町名をピックアップし、自治体のWebサイトなどから人口データを調査して商圏人口を割り出します。例えば、東京都新宿区の場合、「住民基本台帳人口 町丁別男女別人口及び世帯数」といった情報を公開しているので、こうした情報をデータとして活用します。

商圏分析をする2ステップ

商圏分析をする際の2つのステップについて解説します。

1. フィールドワーク(自分の足で実地調査)を行う

商圏を自分の足で実地調査(フィールドワーク)してみましょう。実際に歩くことで、坂道の有無といった地理や街並み、住民の様子や動線、移動手段など、地図を見ているだけでは分かりづらい地域の特徴が把握できます。

お店周辺の人の通行量、自転車や自動車の交通量も確認しましょう。朝の通勤時間帯、ランチタイム、帰宅時間帯、飲み会で賑わう時間帯など、1日の中で区切ってそれぞれ傾向を把握できると、なお有効です。

また、商圏内の競合店を調査することも大切です。競合店の数や雰囲気を調べておくことで、自店の集客方法やコンセプトの検討材料にできます。

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2. 商圏分析ソフトを使う

出店予定地や商圏を設定することで、商圏人口などのデータを集計してくれるデジタルツールがあります。無料で使用できるサービスもあるので、積極的に活用しましょう。

jSTAT MAP

jSTAT MAP」は、独立行政法人統計センターが運用し、政府統計データのポータルサイトで提供されている無料サービスです。

都道府県や市区町村、町などの地域ごとに地図と統計データが表示され、住民の状況を視覚的に確認できます。地図にピンを刺す「プロット作成機能」、統計グラフを作成して地図上に表示できる「統計グラフ作成機能」などの機能が利用可能で、市場分析だけでなく防災や施設整備の企画立案にも役立つ情報分析ができます。

商圏スコープ

商圏スコープ」はGISデザイン事務所が提供する、無料の商圏分析iPhoneアプリです。出店地の半径10キロまで指定でき、商圏人口・世帯数をマップで把握できます。マップをタップすると商圏人口や世帯数を集計してくれるだけでなく、どのエリアにどのくらい人口があるかといった人口 / 世帯分布も確認できます。

商圏内の人口増減の予測や事業所数、事業所の従業員数、駅のどちら側に人口が多いかなどの情報も閲覧できるので、飲食店経営のための基本データとして活用可能です。商圏分析に特化したさまざまなデータや機能を活用することで、集客施策の最適化を図ることができるでしょう。

TERRAMAP

直感的でわかりやすい操作の商圏分析ソフト「TERRAMAP」は、全国の人口や世帯数などの統計情報を活用した商圏分析ができます。

費用は月額38,000円(税別)の「TERRAMAP Web」、月額80,000円の「TERRAMAP Web Plus」があります(それぞれ、別途、保守費用が発生。また、月額制ではなく買い切り版のソフトもあり)。

「TERRAMAP Web Plus」では125m〜1kmのメッシュデータ(地図を格子状に区切ったデータのこと)を搭載しているだけでなく、徒歩や自転車、車や電車など移動手段ごとの商圏の作成機能もあり、より詳細な分析情報を得ることができます。

円商圏だけではなく、任意に商圏を設定できる「フリーハンド商圏」といった非常に豊富な商圏設定機能を備えます。出退店分析や顧客データ分析、店舗の売上計測に役立つソフトです。

月額使用料は比較的高価ですが、多店舗展開を目指すなど、ビジネスを拡大する局面においては使用を検討してみるのもいいでしょう。

商圏人口の調査・分析の3つのポイント

商圏人口の調査・分析の際に押さえておきたい3つのポイントを紹介します。

  1. 対象地域の人口や交通状況を確認する
  2. 住民のライフスタイルを確認する
  3. 商圏バリアを確認する

1. 対象地域の人口や交通状況を確認する

人口や人口構成比率、その地域の将来的な人口増減を調査しましょう。現状の分析だけではなく、「将来的に宅地開発計画があるか」「交通インフラの整備予定があるか」など、出店地域の今後の動向についても把握します。

また、人口の性別や年齢別の割合、世帯数と伸び率も重要な情報です。各世帯の構成や住居タイプの情報は、お店の規模や業態、コンセプトを決めることに役立つでしょう。昼夜間人口比率、所得水準の情報は、ランチとディナーのどちらに注力したらよいか、メニュー単価を検討するための指針になります。

圏内に大学があるなら回転率を高くして価格設定を低くする、オフィスビルがあるならランチ営業に力を入れるなど、住民以外の人の流れもお店の集客方法の検討材料になるので確認しておきましょう。

2. 住民のライフスタイルを確認する

地域内にターゲットとなる層が住んでいるかどうか、お店を利用する可能性がある地域住民が、どのようなライフスタイルを送っているのかを確認しましょう。

移動手段や日々の過ごし方、立ち寄る店など大まかなライフスタイルをつかんでおくことで、お洒落で静かなお店がいいのか、あるいは賑やかな大店スタイルがいいのかなど、自店舗のコンセプト作成にも役立ちます。

3. 商圏バリアを確認する

商圏バリアとは、お客さんの来店を阻害する要素のことです。河川や山などの自然物や幹線道路・大型商業施設などのことを指します。

距離的には同じでも、河川の橋や山のトンネルを越えての来店はお客さんにとって物理的・心理的ハードルになります。幹線道路なら信号機や横断歩道の位置、大型商業施設の迂回も来店の障壁になる可能性があります。

来店を妨げる要素を把握することで、お客さんがその商圏バリアを越えてでも来店したくなるような差別化を図るなど対策について検討できるでしょう。

商圏人口を調べたらLINE公式アカウントやLINEチラシで効率的な宣伝を

商圏人口を調べることで、どのようなお客さんが自店舗の商圏にいるのかが具体的に見えてきます。分析結果を活用し、どのような集客方法が最も効率的かを考えなければなりません。

商圏内のお客さんにチラシを配布する場合、「LINEチラシ」ではLINEアプリ上からデジタルチラシを配信できるため、紙のチラシで発生する印刷や配布コストが削減できます。

ユーザーはLINEアプリ上で気軽にチラシを閲覧できるため、お店の宣伝にも有効です。今後オプションとして提供を予定しているLINE Beaconを活用した来店計測機能では、顧客情報を管理・分析することもできるため、効率的な集客につながります。

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また、一度来店したお客さんに友だち追加してもらい、その後の継続的な情報発信に活用できるのがLINE公式アカウントです。メッセージ配信だけでなく、普段のLINEと同じようなチャットやクーポン、ショップカードなどの機能も使用することができます。

商圏分析を行った上でLINE公式アカウントの機能を効果的に使用しているお店の事例

商圏分析で得られたデータ、そしてLINE公式アカウントを店舗経営に活用している事例を紹介します。

  1. 1度のメッセージ配信でテイクアウト売上20万円|長沼精肉店
  2. Web経由の予約数が月間2.5倍に増加|極上赤身 焼肉 藤
  3. 「LINEで予約」の活用で予約数が3倍に増加|赤から

1. 1度のメッセージ配信でテイクアウト売上20万円! ユーザーとの距離の近さを数字につなげる精肉店のLINE活用

地域密着型の老舗精肉店「長沼精肉店」では、商圏分析によりメインのお客さんが主婦層であることを割り出し、LINE公式アカウントから主婦の生活サイクルに合わせた情報を告知しています。

精肉店「長沼精肉店」のLINE活用を紹介した図

テイクアウトメニューに関する告知は、配信地域を店舗周辺に絞ったセグメント配信を実施し、効果を最大化することに成功しています。

牛肉をふんだんに使ったテイクアウトどんぶりを100杯限定で案内したところ、早いときは予約枠が配信後10分で埋まり、一度のメッセージ配信で約20万円の売上を記録したこともあるそうです。

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2. Web経由の予約数が月間2.5倍に増加!焼肉店の「LINEで予約」活用法

「住宅街近くに立地」「年配のお客さんも多い」という商圏にある「極上赤身 焼肉 藤」では、不特定多数への広告や情報配信では大きな効果は期待できず、リピーター獲得が最重要と分析しました。

「極上赤身 焼肉 藤」が実施した「LINEで予約」の活用を紹介した図

そこで、リピーター獲得に効果的なLINE公式アカウントを活用したメッセージ配信やリッチメニューの予約フォームを活用するといった施策によって、Web経由の予約数を2.5倍に増やしました。

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3. 「LINEで予約」の活用で予約数が3倍に増加!地域に根付く飲食店「赤から」のメディア戦略

同一ブランドでも、店舗によってイベントやおすすめメニューが異なる「赤から」では、店舗ごとにLINE公式アカウントを運営しています。

飲食店「赤から」が「LINE予約」を活用した図

地方都市に展開している各店舗それぞれのおすすめメニューやイベントをLINE公式アカウントで告知し、商圏に合わせた情報発信をしています。また「LINEで予約」を導入し、お客さんと継続的に接点を持ちながら実際の予約数を可視化することで、予約数を大幅に増加させています。

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まとめ:商圏分析とLINE公式アカウントで集客を最大化しよう

商圏分析とは、いわば、自店舗のある街とそこに暮らす人たちを「よく知ること」です。リピーターや常連客で賑わう、地域で愛されるお店づくりを追求する上で、相手をよく知り、適切なサービスを提供する、とは欠かせない要素です。

そして、商圏分析を通じて得られた、街と人々のデータをもとに、適切なコミュニケーションを実施するのも大事です。チラシ施策に効果的なLINEチラシや、お得な情報を配信できるLINE公式アカウントを活用し、商圏に暮らす人々とコミュニケーションしてみてください。