飲食店向け無断キャンセル対策ガイド|防止策や損害請求など基礎知識を紹介

予約を無断キャンセルされて困っている飲食店店員のイラスト

飲食店などを予約したにもかかわらず、当日に来店しない「予約の無断キャンセル(ノーショー)」が問題になっています。飲食店経営に関わる人にとって、無断キャンセルは用意した食材や仕込みが無駄になってしまうだけでなく、お店の稼働率低下につながる非常に大きな問題です。

経済産業省のレポート「令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」では、無断キャンセルは年間2,000億円の被害額になるとも推計されています。どうして無断キャンセルが起きてしまうのか、また、どうすれば無断キャンセルの防止・対策ができるのかを紹介していきます。

こんな人におすすめ

  • 無断キャンセルが起きてしまう背景を知りたい人
  • 無断キャンセルの防止や損害を抑える方法を知りたい人
  • 無断キャンセルした利用者に損害を請求できるのか知りたい人

無断キャンセルが起こる背景

そもそも、なぜ無断キャンセルが起こるのでしょうか。お客さん側の背景はさまざまですが、主に次のような理由が考えられます。

  • Webを通じて気軽に予約できるようになり、その分、「お店に行かない」という判断に罪悪感を抱かなくなった
  • 宴会などの場所を確保するため複数店舗を予約したまま、来店しない店舗に連絡をしない
  • 予約の取りにくい人気のお店のため、当日の予定は分からないが、とりあえず予約を入れておく
  • 食事の予定が急にキャンセルになった
  • 天候の悪化により、来店できない・行きたくなくなった
  • その日の気分で、別のものを食べたくなった

株式会社TableCheckの調査「【2019年版】第3回『飲食店の無断キャンセルに関する消費者意識調査』」の結果によると、飲食店の予約経路はWebのグルメサイトが最も多くなっています。この傾向は2020年に実施された同調査も共通です。現在、グルメサイト経由での予約が一般的になり、その分、「気軽な無断キャンセル」が増え、問題化していると見て取れます。

無断キャンセルの根本原因と防止策

予約の電話を受けている飲食店の店員の写真

最終的に無断キャンセルになってしまう原因にはさまざまな背景がありますが、大きく以下の4つのパターンに分類されます。

  • 予約したことを忘れてしまう
  • 予約キャンセルの連絡ができない・方法が分からない
  • 心理的にキャンセルの連絡をしにくい
  • お店や日時を勘違いしていた

お店が工夫することで、こうした原因への対策を考えることができます。それぞれのケースについて見ていきましょう。

1. 予約したことを忘れてしまう

まず、お客さんが予約したことを忘れてしまうケースです。ただ、この「忘れた」にもいくつかのパターンが考えられます。

一つは、単純に予約していたことをうっかり忘れていたというパターンです。そのほか、確実にお店を確保するべく数店舗に予約を入れたが、行けなくなったお店にキャンセルの連絡をし忘れてしまったというパターンもあるでしょう。また、人気店など遠い日程でしか予約が取れず、時間の経過で予約したことを忘れてしまうケースもあります。

<防止策:予約したお客さんへの事前確認を徹底する>

予約日の前にお客さんに確認することで、予約忘れを防ぐことができます。電話やメールで予約内容を通知する、電話番号にショートメッセ―ジを送信するなどの方法があります。宴会など大人数の場合は、人数の増減確認の連絡などを通じて自然に来店意思を確認するとともに、「予約していたこと」を伝えることもできます。

2. 予約キャンセルの連絡ができない・方法が分からない

続いて、お客さんから予約キャンセルの連絡ができない・方法が分からないというケースです。

人気店は電話してもつながりにくかったり、お店によって特定の時間しか電話がつながらなかったりすることもあります。平日の日中しか連絡を受け付けていないような場合、オフィスワーカーの人には連絡が難しいかもしれません。あるいはキャンセルの連絡先や方法がはっきり明記されていないこともあります。

<防止策:キャンセルの仕方やキャンセルポリシーをきちんと伝える>

キャンセル方法を伝える、分かりやすくしておくことが大切です。具体的な方法としては、予約時にキャンセルの方法を伝えておく、Webで24時間いつでも受付・キャンセルできる仕組みを導入するなどがあります。予約した人が自分のタイミングでキャンセルできる仕組みをつくれば、このパターンの無断キャンセルは低減できる可能性があります。

3. 心理的にキャンセルの連絡をしにくい

予約した人が、心理的にキャンセルの連絡をするのを気まずく感じてしまうケースもあります。「せっかく予約を受け付けてくれたのに、断るのが悪い」と感じてしまうのは、理解しやすい心情です。

キャンセル連絡の方法が電話に限られる場合はより顕著で、来店できない理由を伝えたくない、理由を聞かれたくないというケースも考えられます。

<防止策:キャンセルの心理的ハードルを下げる仕組みづくり>

キャンセルの心理的なハードルを下げることが解決方法になります。Webなど会話を必要としないキャンセル受付の仕組みを導入するのがおすすめです。Webであれば時間帯を選ばないので、タイミングを気にせず連絡できるようにもなります。そのほか、関係性ができていない一見さんからの予約を、そもそも受けないという判断もあります。

4. お店や日時を勘違いしていた

お店や日時を勘違いしてしまっていたケースもあります。

近隣にある似た店名やグループ店同士で間違って予約していた、または日時を勘違いしていた可能性があります。いくつかのお店で検討したとき、違うお店に決めたと錯覚してしまう場合もあります。

<防止策:予約内容の確認を徹底する>

お客さんにお店と日時の両方を間違いなく確認してもらうための体制づくりが大切です。受付時に店名や場所も合わせて丁寧に確認する、来店数日前にリマインドをするなどの方法があります。

また、お客さんに連絡する際は「日時と曜日を合わせて確認する」「予約時間が10時ならば、それは午前か午後かを間違えないように」といった、勘違いしやすいポイントを重点的に確認しましょう。しっかり確認すれば、先方の間違いに気付くことができます。そのほか、予約専用の電話番号を用意して予約受付時間帯を設ける方法もあります。店舗混雑時などの人的な予約受付ミスを防止できます。

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無断キャンセルの防止に役立つサービス

無断キャンセルの防止に役立つサービスもあります。お客さんとのやりとりを円滑にしたり予約内容を記録したりできるサービスが、防止策として活用可能です。

  1. サブライン
  2. LINEで予約
  3. トレタ予約番
  4. Google フォーム

1. サブライン

「サブライン」は、050で始まる番号の電話回線が開通できる株式会社インターパークのサービスです。発行した電話番号を予約専用の回線として使えるだけでなく、通話の録音機能を設定することで、連絡内容の証拠を残すこともできます(録音料金は2.2円/分)。

電話番号の取得が1番号330円、さらに月額基本料金は550円なので、低コストで導入・運用できます。番号取得以外の初期費用は0円、通話料金も携帯キャリアの約1/4~1/2の金額となっています。

契約は書類が不要でパソコンから申し込み可能。スマホにアプリをインストールするだけで、最短5分で導入できます。契約期間の縛りなどもなく、やめたいときに解約できるので、「まずは試してみる」という判断もしやすいでしょう。

参考:ドタキャン防止に予約専用番号を持とう!|SUBLINE(サブライン)

2. LINEで予約

LINEで予約」は、LINE上でお店の予約ができるサービスです。予約内容のリマインドを送れたりキャンセル受付もできたりするなど、無断キャンセル防止にも役立ちます。そのほか、予約数の増減やキャンセル率といった予約にまつわるデータ分析機能も備えているので、予約増やキャンセル減のための施策に活用できます。

ユーザーは、店舗のLINE公式アカウントなどからアプリを切り替えることなく、普段から使っているLINEの中で予約を完結させることができます。操作も簡単で使いやすく、予約件数の増加にも期待できます。

LINEで予約」を利用するには、LINE公式アカウントと予約機能を持つ連携サービスとの契約が必要です。連携サービス側でLINE公式アカウントとの紐づけを行って予約機能と連携させると、LINE内での予約が可能になります。

参考:LINEで予約|LINEヤフー for Business

3. トレタ予約番

「トレタ予約番」は、株式会社トレタが提供する、予約受付などの電話対応をAIが代行してくれるサービスです。予約の対応のほかキャンセル電話にも24時間365日対応できるため、無断キャンセルの防止にもつながります。お客さんは好きなタイミングで連絡できるほか、混雑時などに「お店に電話がつながらない」といったストレスもありません。

また、店舗側のミスを減らすことにもつながります。手書きの台帳で予約管理している場合、SNSや電話、来店といった複数のルートからの予約があったときに転記もれやダブルブッキングのリスクが生じます。しかし、トレタ予約番を導入すると台帳が一元化されるため、こうした人的ミスをなくすことが可能です。

料金プランは月額5,000円と1万5,000円のふたつのプランが用意されています。また、申し込みから最短20日程度で導入可能です。

参考:トレタ予約番|飲食店向けAIによる予約電話サービスなら

4. Google フォーム

Google フォームをキャンセル専用の受付フォームとして活用することができます。入力する項目などを自分で設定する手間はかかりますが、無料で導入できるのが利点です。キャンセル専用の受付フォームとして活用すれば、お客さんにとってキャンセル連絡の心理的なハードルを下げることができるでしょう。また、お客さんの好きなタイミングでキャンセル連絡ができるのも利点です。

公開方法はメール・URLの共有・HTMLの埋め込みに対応しています。自動返信メールを送信することもでき、キャンセル完了のお知らせに役立てることが可能です。

参考:Google Forms: オンライン フォーム作成ツール | Google Workspace

 

ここで紹介した4つ以外にもさまざまなサービスが存在します。価格やサービス内容をチェックして、自店舗にフィットしそうなものを選びましょう。

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無断キャンセルの損害を抑えるサービス

無断キャンセルは、「まず防止する」が基本ですが、どれだけ対策しても発生してしまうものです。以下のようなサービスを上手に活用すれば無断キャンセルが起きてしまっても損害を抑えることができます。

  1. Gardiaリスク保証サービス
  2. TableCheck
  3. TABETE
  4. ノーキャントドットコム

それぞれのサービスについて解説します。

1. Gardiaリスク保証サービス

Gardia株式会社の提供する「Gardiaリスク保証サービス」は、飲食店などで無断キャンセルが発生した際、その被害保証を行っているサービスです。2018年の時点で5,000店舗を超える導入実績を誇ります。

さらに、食べログやfavyといったグルメサイトと連携しており、連携サイト経由の予約が無断キャンセルされた場合も保証するサービスを展開しています。

大人数の宴会など大口の予約が多い店舗は、掲載するグルメサイトを選ぶ際に無断キャンセルの保障プランがあるかどうかも考慮してみるとよいでしょう。

参考:SERVICE | Gardia株式会社

2. TableCheck

「TableCheck」は、株式会社TableCheckが提供する飲食店予約顧客管理システムです。予約受付時にクレジットカード情報を登録し、店頭での会計が不要になる非接触型決済が可能です。事前にクレジットカード情報を取得しておくことで、万が一無断キャンセルが発生してもキャンセル料を確実に回収できます。キャンセルの発生も低減できるでしょう。

また、入力する情報は自分で設定でき、予約時は情報の入力だけを行う「与信型」や予約時に支払いまで済ませる「事前決済型」が選べます。主要銘柄のクレジットカードのほか、中国系のQR決済とも連携可能です。

さらに、来店日の前にSMSやEメールで予約確認のお知らせを自動送信でき、予約の取り間違いによるミスやうっかり忘れの防止にも役立ちます。

参考:TableCheck|利用満足度No.1飲食店予約顧客管理システム(旧:TableSolution)

3. TABETE

「TABETE」は、株式会社コークッキングによるフードシェアリングサービスです。価格と引き取り希望の時間を指定することで、料理をテイクアウトしたい人とお店をマッチングしてくれます。ユーザーは決済を済ませてから受け取りに来店するので、無断キャンセルによる金銭的な損害は発生しません。配達や集金といった店側の負担がないのも魅力です。

導入費の1万円のほかは登録料などランニングコストが一切不要で、必要なときだけ利用できる点がメリットです。無断キャンセルのほか、食材を仕入れ過ぎてしまった、料理を作り過ぎてしまったというケースでも食材ロス防止策として活用できます。

参考:TABETE - 食品ロスを削減するフードシェアリングサービス

4. ノーキャンドットコム

無断キャンセルしたユーザーから弁護士がキャンセル料を回収してくれるサービスです。着手金無料・成果報酬型で、手数料は回収金額の33%となっています。日本全国にサービス展開しており、無料登録と運営側による店舗確認が済めば、無断キャンセルがあったときにWebから申し込むことができます。

請求額は不問で、無断キャンセルをしたお客さんの電話番号と名前が分かれば、1人分から依頼日の6カ月前までさかのぼった請求まで対応してくれます。

単価の高いお店は検討の価値があるかもしれません。ただし、飲食店はお客さんからの評判が大切なビジネスでもあります。よほど悪質な無断キャンセルでない限りは、他の手段で解決できることが望ましいでしょう。

参考:飲食店のキャンセル料回収&無断キャンセルの予防ならノーキャンドットコム「飲食版」

無断キャンセルの損害額を請求することはできるのか

六法全書の写真

上記のような防止策を講じても、損害が発生してしまう場合もあります。お客さんに無断キャンセルをされた場合、損害請求をすることは、そもそも法的に可能なのでしょうか。

結論、損害請求は可能です。無断キャンセルは「民法第415号の債務不履行」や「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益の侵害」とみなされる可能性がある行為です。実際、2018年に東京簡易裁判所で民事訴訟の裁判が行われた例があります。

参考記事:宴会の無断キャンセルで裁判も 飲食店、悪質客に対抗(日本経済新聞・2023年1月閲覧)

悪質な無断キャンセル行為に対しては「刑法233条の偽計業務妨害罪」となり、2019年には嫌がらせ目的の無断キャンセルが刑事事件として扱われたケースもあります。

参考記事:居酒屋の予約「無断キャンセル」で逮捕の衝撃…どんな場合でも罪に問われるの?(弁護士ドットコムニュース・2023年1月閲覧)

電話やネット予約にも損害請求は可能

電話やネットを通じた予約など「書面が存在しない契約」でも契約は有効です。民法522条により、契約の内容に対して締結を申し入れる意思表示をした時点で契約は成立し、書面の作成は必要ないとされています。

ただし、現実問題として、キャンセルに対する考え方である「キャンセルポリシー」を明示して事前の告知・説明をしておいた方が無難です。説明をしていない場合、万が一法廷で争う際の優位度は下がります。一般的な予約サイトは、サイト経由での予約時にキャンセルポリシーを掲示しています。

電話であれば、終話後にショートメールでキャンセルポリシーを送付し、電話口でもキャンセル時のルールや違約金について口頭で説明をするなどといった対策をしていることが望ましいでしょう。

なお、利用者の本名や住所などが分からなくても、電話番号さえ分かれば裁判を起こすことは可能です。弁護士を通じて電話番号から利用者を照会することができます。

キャンセル料の考え方

キャンセル料は、適切な金額設定が求められます。罰金の意味を込め高額に設定したいという気持ちもあるかもしれませんが、食事代より高く設定することはできません。では、キャンセル料はどの程度の金額が適正なのでしょうか。

コース料理の場合、全額請求できるとされます。同じコースを同じ人数の他の団体に提供するのは困難で、食材などがロスになる可能性が高いと考えられるからです。

一方、コースではなく席予約のみの場合はどうでしょうか。席のみの予約でも、平均的な客単価の5割程度をキャンセル料として請求できるのではないか、という意見があります。

これは業界団体と弁護士らによって構成される団体による指針で、経済産業省や農林水産省、消費者庁も議論に参加しています。収益構造などから店側の負担は売上の5~7割と見積もられ、5割程度が目安とされました。

参考:No show 飲食店における無断キャンセルの対策ガイドライン

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お店側は、まずは無断キャンセル防止に注力しよう

繰り返しになりますが、無断キャンセルへの対策方針は「損害を防ぐ」ではなく、「無断キャンセルを防ぐ」です。

損害を取り戻すのは大きな手間と時間が必要で、裁判ともなればお店側の費用も大きくなります。よほど悪質なケースを除き、店舗運営の傍ら裁判を起こすのは得策ではありません。飲食店経営におけるストレスを低減する意味でも、まずは「無断キャンセルされないお店づくり」を心がけるといいでしょう。

すでに述べたとおり、無断キャンセルの大部分はうっかり忘れていた、連絡が面倒、といった原因から発生します。細かな確認など、小さなことの積み重ねで、お店、お客さんそれぞれにキャンセルにまつわるストレスを減らせます。

まとめ:キャンセルされない関係性をつくるために。LINE公式アカウントでお客さんと関係を築こう

無断キャンセル対策は、お店の利益を守る上で大切な施策です。予約時に対策できる仕組みづくりやサービスなどを活用し備えておくことが大切です。

また、一方でお客さんと良好な関係を築いてお店のファンを増やし「キャンセルされない関係性」を築いていくことも防止策になります。新しいお客さんを迎え、こつこつとファン化していくことがお店の利益を守ることになります。

お客さんとのコミュニケーション手段としては「LINE公式アカウント」の活用がおすすめです。お客さんの属性に合わせて情報を発信できるほか、個別にメッセージを返信することも可能なため、お店とお客さんとの関係性の構築にも役立ちます。また予約機能もあるので、組み合わせて活用するとより高い効果を得ることができます。以下のバナーから詳細を確認してみてください。

イラスト/つのがい