飲食店のワンオペ営業のコツ。従業員が限界を感じないための工夫も解説

飲食店でスタッフがワンオペ営業をしているイラスト

メディアなどでも取り上げられることの多い飲食店のワンオペ(ワンオペレーション)営業は、「注文した料理がすぐに出てこないかもしれない」「スタッフの負担が増えて、サービスの質が悪くなってしまうかもしれない」といった視点から、ネガティブな印象を持つ人もいるかもしれません。

しかし、デメリットを十分に理解した上で戦略的に取り入れることができれば、お店の経営にとってプラスにもなり得ます。

飲食店のワンオペ営業を検討している人に向けて、メリット・デメリットのほか、スタッフの負担を軽減しながら効果的にワンオペ営業を取り入れるコツを紹介します。

こんな人におすすめ

  • 飲食店のワンオペ営業を検討している人
  • 効率的な店舗の運営方法を探している人
  • ワンオペ営業のメリット・デメリットを知りたい人
  • スタッフにワンオペ営業をしてもらう上で、注意すべきポイントを知りたい

飲食店のワンオペ営業とは?

飲食店でお客さんが店員を呼んでいる写真

飲食店において、スタッフが1人で調理やホールの接客対応、片付けなどを全てこなすことを、ワンオペレーション(通称:ワンオペ)営業と呼び、通常であれば複数人でシフトを組むところを、1人に任せきりにしている状態を指す意味で使われています。

ワンオペ営業で対応可能な席数とは?

ワンオペ営業を導入するには、どれぐらいの規模の店舗が適しているのでしょうか?

目安としては、10席程度の小規模な店舗の運営が対応の限界だと考えられています。しかし、飲食店の業態や提供するメニューの内容によっては、さらに少ない席数しか対応できない可能性があります。また、採用直後など、経験の浅いスタッフに任せる場合も、対応できる座席数は少なくなるでしょう。

ワンオペ営業は、お客さんだけでなくスタッフからもネガティブに捉えられがちです。その原因の一つに、人手不足がきっかけでお店を1人で回さざるを得ないといった、マイナス要因による導入が挙げられます。本来であればワンオペ営業を想定していない大規模な店舗にもかかわらず、スタッフ1人にお店を任せきりにしてしまっているケースがあるのです。

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飲食店のワンオペ営業は違法?

ワンオペ営業が違法に当たるのかという問題ですが、結論から言うと、ワンオペ営業自体には違法性がなく、店主(経営者)自ら1人でお店を切り盛りする分には問題ありません。

ただし、アルバイトスタッフなど、経営者以外のスタッフにお店を任せる場合は、副次的に違法となってしまう場合があるため注意が必要です。具体的には、法で定められた休憩が取得できないケースです。

労働基準法第三十四条では、6時間を超えて勤務する場合は45分以上の休憩、8時間を超えて勤務する場合には1時間以上の休憩を取ることが定められています。

ワンオペによる顧客対応などで業務負担が大きくなると、スタッフが現場から手を離せなくなることが考えられます。法律で定められた休憩時間を与えられない場合、労働基準法に抵触して経営者が法的に罰せられるケースがあるのです。

ワンオペ営業を導入する際は、スタッフが適切な休憩を取得できる環境を整えることが大切です。

ワンオペ営業のメリット

ワンオペ営業を導入する一番のメリットは、人件費を節約できるという点にあります。

多くの飲食店においてお客さんの人数は一定ではなく、時間や時期によって繁閑(忙しいことと暇なこと)があります。特に24時間営業のお店などは、深夜のように来客の少ない時間帯に働くスタッフを減らすことで、客数が少なくても利益を確保できることになります。

人件費は、食材費と並んでお店の運営にかかる最も大きなコストです。来客数を予想してシフトを組み、可能であればワンオペ営業を行って人件費を抑えることで、食材に原価をかけて料理の質を高めたり、営業利益を高めたりするなど、お店を成長させるための施策に投資できます。

ワンオペ営業のデメリット

飲食店の店員が調理器具を両手に持っている写真

ワンオペ営業は人件費を抑えられる一方で、1人のスタッフに全ての店舗業務をこなしてもらう必要があります。そのため、心身ともに負担が大きく、次のようなデメリットが考えられます。

  1. ミスが起きやすくなる
  2. サービスレベルが低下してしまう
  3. 不測の事態に対応できない
  4. 離職率が増加してしまう

1. ミスが起きやすくなる

スタッフが1人だけで多くの業務をこなすため、一気に複数のお客さんの来店や注文が重なると、注文の間違いや料理の出し忘れなどのミスが起こりやすくなります。

ミスが増えるとお客さんの不満がたまり、口コミで低評価をつけられてしまう可能性もあります。結果的に新規、リピートともに客足が遠のいてしまい、売上が下がることにもつながりかねません。

2. サービスレベルが低下してしまう

不適切な環境でワンオペ営業を導入すると、人手が足りず、お客さんへの対応が遅くなり、サービスレベルも低下します。

特に、忙しい時間帯は片付けを後回しにしてしまいがちです。会計後のテーブルで食べ終わった食器をいつまでも下げられず、店内が散らかった雰囲気になると、お客さんに悪い印象を与えてしまいます。

また、調理をしながらお客さんの対応もこなす必要があるため、スタッフに余裕がなくなると料理の質も下がってしまう可能性があります。

3. 不測の事態に対応できない

店内にスタッフが1人しかいないため、不測の事態が起こった場合に対処ができません。例えば、スタッフ自身の体調不良や機器の故障、お客さん同士のトラブルなどが起きた際に、店舗運営に支障が出てしまうことが考えられます。

他にも、お手洗いや材料をバックヤードから取り出すときなど、やむを得ず店頭から離れる必要がある時に、店内が一時的にスタッフ不在になってしまいます。お客さんへの対応ができないことはもちろんですが、防犯面でもあまり好ましくありません。

4. 離職率が増加してしまう

接客、調理、会計、洗い物などの雑務を含め、全ての業務を1人で対応してもらう必要があるため、仕事のつらさからスタッフの離職率が上がるケースがあります。

ワンオペ営業の心身への負担は非常に大きく、特にアルバイトスタッフなど時間給で働く人からは、割の合わない仕事と思われがちです。離職が増えると、新しいスタッフの募集費用や教育コストがかさむのはもちろん、最悪の場合、店舗営業そのものに支障をきたすこともあり得るのです。

ワンオペ営業で失敗しないためのコツ

飲食店の店員が1人でさまざまな調理を担当しているイラスト

ワンオペ営業を行うと、人件費が削減できる一方、さまざまなデメリットが発生する可能性があります。トラブルを少しでも減らすためには、次のようなことに気を付けて、可能な限りスタッフの負担を軽減することが必要です。

  1. メニューを工夫する
  2. 設備投資して、店舗の自動化を進める
  3. 長時間の勤務にならないようにする
  4. 繁忙状況に合わせて、シフトをこまめに調整する
  5. ホールのみなど、部分的なワンオペから始める
  6. 周辺のお店と比べて、納得できる待遇を用意する
  7. スタッフと定期的にコミュニケーションをとる
  8. 人手不足が原因のワンオペ営業は、極力やらない

1. メニューを工夫する

ワンオペ営業を無理なく続けるためには、提供する料理に工夫をする必要があります。具体的には、1人でも簡単に、かつ短時間で作れるメニューに絞って営業することが考えられます。対応するスタッフの負担を軽減できる上、待ち時間が短くなるため、お客さんにとってもメリットがあります。

調理に手間のかかるメニューがある場合は、特に注意する必要があります。料理の内容や調理工程に妥協できないポイントがある場合は、時間帯によってメニュー数を絞ったり、変えたりするのも一つの方法です。

2. 設備投資して、店舗の自動化を進める

スタッフの負担を減らすためには、仕事を自動化することも有効です。

例えば、自動販売機から食券を買うなど、注文方法をシステム化することで、会計の手間を省くことができます。調理に関しては、自動でご飯を盛りつけられる機材、材料をセットするだけで調理できる機材を導入しているお店もあります。1人でも対応しやすいカウンターを中心とした店舗レイアウトにするなど、お店の設計段階からワンオペを想定しておくことも重要です。

また、LINE公式アカウントから注文を受け付けられるようにしたり、予約をとれるようにしたりするなど、接客のオペレーションを効率化することも検討するといいでしょう。

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3. 長時間の勤務にならないようにする

長時間のワンオペ営業は、スタッフの負担が重くなります。また、前述した通り、スタッフが法律で決まった休憩時間を取得できなければ、労働基準法に抵触してしまいます。それらを避けるためにはシフトを調整して、1人で対応する時間が長くなりすぎないようにする必要があります。

特に、1日6時間以上の勤務が発生する際は、休憩の取得が必須になるので注意しましょう。

4. 繁忙状況に合わせて、シフトをこまめに調整する

普段は余裕を持った営業ができていても、キャンペーンや販促、季節などによって一時的に来店数が大きく増減することもあります。

想定以上の来店数があり、ワンオペで対応しているスタッフがキャパオーバーしないよう、集客の波を意識してシフト調整を行いましょう。適切な人数のスタッフを確保することで顧客満足度を維持でき、結果的に売上を安定させることにもつながります。

5. ホールのみなど、部分的なワンオペから始める

飲食店の店員が料理をしている写真

いきなり全ての業務をワンオペに切り替えるのではなく、まずはスタッフ数に余裕を持たせた上で部分的にワンオペを導入し、自店がワンオペ営業に適応できるか実験してみることも大切です。実際に少人数のスタッフで業務を体験してもらうことで、事前に気が付かなかった問題に対処でき、トラブルを回避することができます。

コストの削減のみを優先するのではなく、1人で対応できるキャパシティーを見極めた上で導入することが大切です。働くスタッフにも配慮しながら、無理のないシフトを組みましょう。

6. 周辺のお店と比べて、納得できる待遇を用意する

ワンオペ営業と複数人での営業とでは、業務量の差から見ても、ワンオペの担当スタッフに不満が溜まりがちです。これを解消するためには、ワンオペ勤務時には手当をつけるなど、業務量に見合った待遇を検討することも大切です。

昨今の飲食業界は、新型コロナウイルス感染症拡大が緩和したことでお客さんの外食も活発になり、人手不足で困っているお店も多いため、アルバイトの募集も豊富です。不満を感じたスタッフが離職しやすい環境になっているという点に、留意しておく必要があります。

7. スタッフと定期的にコミュニケーションをとる

ワンオペ以外でシフトに入ってもらう際や勤務の前後など、ちょっとしたコミュニケーションを大事にしましょう。困っていることがあれば、店長など責任者へ気軽に相談できる雰囲気をつくることで、1人で店頭に立つストレスを緩和できます。

また、事前に緊急連絡先を伝えておき、スタッフが1人で対応できない場合は、責任者がサポートできる体制を整えておくことも大切です。

8. 人手不足が原因のワンオペ営業は、極力やらない

アルバイトの採用が難しく、本来適していない環境で一時的にワンオペ営業になることもあるかもしれません。その場合はなるべく店長がカバーに入るなど、できる限りのケアをすることが望まれます。

無理なワンオペはスタッフの離職につながり、結果的に、より人手不足が深刻になるリスクが非常に高いのです。

まとめ:ワンオペ営業には効率的な店づくりが大切

飲食店の店員が料理の味見をしている写真

ワンオペ営業を導入すると人件費を抑えることができますが、スタッフに負担が大きくなるなど、多くのデメリットが発生します。安易なコストカットや人手不足をカバーするために実施するのではなく、抑えたコストの分を食材費に有効活用するなど、お店の個性や強みをつくるために、戦略的に行うのが理想です。

特に、アルバイトスタッフにお店を任せる際は、心身の負担にならないよう工夫が必要です。料理の簡易化や支払いの自動化など、充分にお店の体制を整えた上で任せてみましょう。

ワンオペ営業を成功させるために重要なのは、店舗業務を効率化すること。会計や注文のためのシステムを導入すると効果的です。

例えば、LINE公式アカウントモバイルオーダー機能を使うことで、注文から支払いまでをスマホ上で完結できます。ポイントカードやクーポンを作る機能もあるため、お客さんにとっても注文しやすく、効率的でありながら、顧客満足度を高めることもできます。

LINE公式アカウントを導入することで、ホール業務を効率化して、スタッフの接客業務の負担を軽減しましょう。

トップイラスト/岡田丈