「1個100円の生牡蠣」はなぜ人気? LINEとSNSでリピーターを虜にする「かきのおきて」のお店づくり

「1個100円の生牡蠣」はなぜ人気? LINEとSNSでリピーターを虜にする「かきのおきて」のお店づくり

1個100円(税別)で生牡蠣を提供する牡蠣居酒屋「かきのおきて」に、LINE公式アカウントの活用方法について伺いました。


一度ならず、何度も足を運んでくれる「おなじみ」のお客さんは、飲食店にとって心強い存在です。多くの常連客の心をつかむお店は、どのような工夫をしているのでしょうか。「かきのおきて」は2024年3月にオープンした牡蠣居酒屋。1号店の神田店を皮切りに、2025年には三軒茶屋店、水道橋店、四ツ谷店と東京都内に店舗を拡大しています。メニューは毎日三陸から直送される生牡蠣をメインに、牡蠣の魅力を楽しめる料理が目白押し。

また、LINE公式アカウントでは新店情報やクーポンを配信するなど、来店機会を増やすための工夫も凝らしています。そんな同店のお店づくりについて、神田店のスタッフ、沼倉大輝さんに伺いました。

「かきのおきて」沼倉大輝さんのプロフィール写真

沼倉大輝さん

1997年生まれ。2024年に「かきのおきて」神田店に配属。その後副店長として三軒茶屋店のオープニングに携わり、現在は本店である神田店にて勤務。

三陸産の安心安全な生牡蠣を「1個100円」で提供!

――「かきのおきて」はどのようなお店ですか? 特徴を教えてください。

沼倉さん:コンセプトは「生牡蠣を1個100円で楽しんでもらう」で、モデル店は仙台の「海のおきて」という店です。

(※注:実際の提供価格は「税込110円」)

「うみのおきて」のオーナー・相馬慶一さんの「三陸産の生牡蠣でお腹いっぱいにしてほしい」という思いを都内で実現すべく立ち上げました。

「牡蠣に足を向けて寝られない」というほどの牡蠣好きな相馬さんの、牡蠣に対する真摯な思いを受けて、牡蠣の魅力をお客様に最大限伝えられるよう、日々試行錯誤しています。

――人気のメニューや売れ筋の料理を教えてください。

沼倉さん:看板メニューは、やはり生牡蠣です。

看板メニューの生牡蠣はおろしポン酢やレモン、タバスコとともに

併せて、入口の扉に「扉の向こうは牡蠣パラダイス」と書いてあるように、焼き牡蠣やカキフライ、牡蠣クリームコロッケなどさまざまな牡蠣料理もご提供しています。

――生牡蠣は「1個100円」という価格で提供されています。仕入れ先はどちらでしょうか? 

沼倉さん:宮城県山田湾、気仙沼湾、女川湾などの三陸エリアですが、湾や季節の違いによって味が異なるんです。例えば、産卵前の初夏の牡蠣は冬の牡蠣に比べてミルキーな味わいです。そんな味の変化や違いを楽しんでいただきたいです。

――どうして「1個100円」というリーズナブルな価格で提供できているのでしょうか?

沼倉さん:通常の牡蠣は、漁協や市場などいくつもの中間業者を経て仕入れますが、当店では牡蠣卸業者から直接仕入れ、中間コストを大幅に削減しています。さらに、鮮度や味は申し分ない一方で大きさが不揃いな牡蠣を買い取り、仕入れ値を圧縮しています。2つの工夫により、「1個100円」という価格が実現できています。

牡蠣に合う日本酒も豊富に取りそろえる。なかでも「牡蠣のための日本酒」と銘打たれた「IMA」はさっぱりとした味わいで、牡蠣の旨みを邪魔しない

お客さまを「世界一幸せ」に。マニュアルを超えた接客術がファンを生む

――お客さんはどのような方が多いですか? 

沼倉さん:20代から40代の、近隣にお住まいの方やこのエリアにお勤めの方が中心ですが、皆さん共通して「牡蠣を食べるぞ!」という気持ちでお越しいただいているようです。

神田店ではカウンター席や半個室を用意していることもあって、お子様連れやお一人で来られる女性の方も多いです。お子さま連れのお客さまは、大人が生牡蠣を食べている間、お子様はカキフライや唐揚げを楽しまれています。

――リピーターの割合はどれくらいになるのでしょうか?

沼倉さん:店舗によって割合は異なりますが、2024年3月オープンの神田店では、お客さまの約5割がリピーターさんです。リピーターさんがほとんどという時間も珍しくありません。

――それはすごい。多くのお客さんにリピートしていただけているのは素晴らしいですね。リピーターを増やすために工夫していることはありますか?

沼倉さん:何よりも、接客をはじめとしたお客さまひとり一人との丁寧なコミュニケーションです。新鮮な牡蠣を最高の状態で味わっていただくための心配りを大切にしています。

特に、オープン当初は「生牡蠣1個100円」に対して驚きとともに不安の声もいただいていたので、オープンから今に至るまで、どこで育った牡蠣なのか、仕入れ方法はどうなっているのかを丁寧にお伝えするようにしています。

提供時も「生ものですのでお早めにお召し上がりください」と安心安全に召し上がっていただくための一言を添えるようにしていますね。併せて、牡蠣に対する疑問を解消するような冊子も用意し、安心できる空気づくりに取り組んでいます。

そして、生牡蠣をお楽しみいただきたい気持ちはもちろんありますが、揚げ物や焼き牡蠣など牡蠣を使った逸品料理もぜひ食べていただきたいので、「こちらもおすすめですよ」とお声掛けすることもありますね。

――お声がけする際、特に意識していることはありますか?

沼倉さん:私自身、ご飯を食べているときが“世界一幸せ”だと感じるので、お客さまに「世界一幸せ」になってもらいたいと思って接客をしています

そうした気持ちで接客していると、お客さま一人ひとりの状況が自然と見えてきます。例えば、グラスの空き具合を見て「お水をお持ちしましょうか」、食事の進み具合を見て「締めにデザートはいかがですか」ときめ細やかなご提案ができます。

そして、再訪いただいた際は、カウンター席から「前回はこれ食べられていましたよね」「こちらもおすすめですよ」という感じでお声掛けしています。

「生牡蠣を早く提供できないとお客さまをお待たせしてしまう」という理由で、入店したての従業員は「牡蠣のむき方」の研修を受けるそう

「100円は不安」を払拭したSNSと口コミ。LINE活用でリピーターを育てる集客術

――リピーターを増やすために、接客以外で注力されていることはありますか?

沼倉さん:SNSやLINEを活用したデジタルでのコミュニケーションにも力を入れていますね。お得なクーポンや情報を配信したり、スムーズに予約が取れるようにしたりと、お店の外でもお客さまとの接点を持つことを意識しています。

――そもそも、初めて来店されるお客さまは、何がきっかけでお店のことを知るのでしょうか?

沼倉さん:InstagramやTikTokなどのSNSが中心です。かきのおきてのアカウントから発信している投稿の他、インスタグラマーさんに取り上げていただくこともしばしばあります。

先ほど触れた通り、オープン当初は「1個100円の生牡蠣って安全なのか?」という不安の声もいただいていましたが、インスタグラマーさんに実際に食べる様子をご紹介いただいたり、Webニュースに掲載されたりしてからは、常に予約で埋まるようになりました。そこからリピーターさんの方も増え、おかげさまで平日でも18時以降は予約が取りづらい状況になっています。

――なるほど、現場での努力がお店を支えているのですね。先ほども再来店を促す取り組みとしてLINEを効果的に活用されていると伺いました。具体的には、どのように運用されているのでしょうか?

沼倉さん:料理やお酒のオーダーをLINEで行っているので、そこから登録していただいています。新店オープンなどの情報を中心に、生牡蠣が無料になるクーポンやLINE会員さま向けの先行予約情報なども配信しています。

――2025年8月現在で「かきのおきて」は3店舗ありますが、各店でLINE公式アカウントの使い分けはしていますか?

沼倉さん:新店オープンの際は個別の店舗でキャンペーンを実施する場合もあります。水道橋店オープンの時は、「1人5個まで生牡蠣無料」というキャンペーンを実施し、たくさんの方に水道橋店にお越しいただきました。牡蠣好きのお客さまが多いので「500円引き」というより「5個無料」と表現した方が響くかなと思ったのですが、想像以上の反響でしたね

LINE公式アカウントはオープンと同時に各店で開設し、神田店でもオープン情報を配信するようにしています。他の店舗を登録していて、そこで配信した新店オープンの情報を見ていらっしゃるお客さまも多いですね。

――メッセージ配信での工夫、「これは役立っている」という機能はありますか?

沼倉さん:複数店舗のアカウントを登録してくださっているお客さまもいるので、店舗ごとに配信時間をずらしています

あとは、2回、3回とご来店いただけるとリピーターさんになるケースが多いので、ご来店後15日、30日、45日のタイミングでLINEにてアンケートやクーポン、メッセージなどを配信しています。

機能面では、上記の配信とは別に、来店翌日に送るアンケートが非常に役立っています。外部の有料サービスも検討したんですが、LINEなら無料かつスピーディーに多くのお客さまの声を集められるので、お店作りの参考にさせていただいています。

牡蠣の「新たなスタンダード」を発信したい

――今後お店をどんなふうに成長させていきたいか、考えていることがあれば教えてください。

沼倉さん:9月3日に四ツ谷店がグランドオープンの予定です。その次の出店も決まりましたが、今後も店舗を展開し、牡蠣の美味しさをより多くの人に伝えていきたいですね。

神田店については、立ち上げた店長がつくったお店のカラーを受け継ぎつつ、自分ならではの新しい色を出していきたいです。まだ知られていない牡蠣の食べ方を研究し、新しい味の組み合わせを提案したいですね。牡蠣好きのための新たな定番となるような食べ方を、この店から発信できればと思っています。

気になるあのお店の集客成功事例

来店のフックになるメニュー考案ときっかけをLINEで生み出す「立ち飲み食堂 ウルトラスズキ」の店づくり

▶記事を読む

 

9割が常連さん。なぜ“2年半待ち”でも「食堂とだか」に通いたくなるのか?

▶記事を読む

 

【取材先】
かきのおきて神田店
住所:東京都千代田区内神田2-13-6サトービル 1階
TEL:03-3527-1444
月〜金11:30〜14:00/16:00〜23:30、土日祝12:00〜22:00
Instagram:かきのおきて Instagram

取材・文:花沢亜衣
東京生まれ。食や暮らしにまつわるジャンルを中心にWEBメディア・雑誌で編集や執筆を行う。三度の飯より食べることが好き。一番好きなお酒は青空の下で飲むお酒。2023年J.S.A.ワインエキスパート呼称資格取得。2025年5月に酔談録『二軒目は路面店』を発売。
Instagram:@aipon79

編集:はてな編集部