LINE告知でイベントが満員御礼。創業92年「Deguchiya」が町の酒屋から“わざわざ行きたい”専門店になるまで

中目黒で90年以上にわたって地元に根付き美味しいお酒を届けてきた「Deguchiya」にLINE公式アカウントの活用方法について伺いました。


一度ならず、何度も足を運んでくれる「おなじみ」のお客さんは、飲食店にとって心強い存在です。多くの常連客の心をつかむお店は、どのような工夫をしているのでしょうか。

東京・中目黒で1933年から続く老舗酒店「Deguchiya」。三代目の鳥海武俊さんが受け継いでからは、こだわりのワインや日本酒がそろう“わざわざ行きたい専門店”として、多くのお酒好きに愛されています。

その秘訣は、店内に設けたバースペースで開催される試飲イベント。そして、そのイベント集客の鍵を握るのが、LINE公式アカウントです。鳥海さんに、お店づくりの哲学とLINE活用術について伺いました。

のプロフィール写真

鳥海武俊(とりうみ たけとし)さん

日本ソムリエ協会認定シニアソムリエ。SSI認定利酒師&焼酎アドバイザー。3代目店主。「Deguchiya」のひとり息子として生まれ、いつしか酒の魅力にとりつかれる。

一時は「コンビニ」への業態転換も検討。それでも酒屋を続けられた理由

――「Deguchiya」は90年以上の歴史があると伺いましたが、どのようなお店なのでしょうか?

鳥海さん:今から92年前の1933年に祖父がこの店を開きました。当時はビールや日本酒のほか、味噌、醤油なども扱う、いわゆる町の酒屋といった佇まいでしたね。

30年ほど前に私がこの店を受け継いでからは、ワインに力を入れるようになりました。今は直輸入のフランスワインを中心に、日本酒、焼酎、クラフトビールを4つの柱として扱っています。

―― さまざまな種類のお酒がある中で、主力商品をワインにしたのはなぜですか?

鳥海さん:いろいろなお酒を飲むなかで、私自身が特に好きだったのがワインでした。家族との食事でもワインを飲む機会が多く、店を継いだ後は自然と主力商品になっていきましたね。

私たちはお店で扱う全てのお酒について、「自分が本当に好きなものをお客さまにおすすめしたい」と考えています。だから酒蔵や醸造所を直接訪ねて、そこで出合った商品を扱うこともあります。今はスタッフみんなで力を合わせながら、ラインアップを拡充しているところです。

お酒一つひとつに、丁寧に説明が書かれた手作りのPOPが貼られており、好みのお酒と出合いやすくなるような工夫も

――特に力を入れているワインについて、おすすめを教えていただけますか?

鳥海さん:フランスでワイン造りを学んだワインの専門家、金井麻紀子さんが選んだ「マキコレワイン」ですね。果実味が豊かで優しい味わいのピュアなワインなのですが、いずれもフランスの小規模な自然派生産者が造っていて、生産量は多くありません。仲間内で直輸入しており、東京で扱っているのは当店を含め2軒だけです。

――とても希少なのですね。

鳥海さん:ええ。ネットで何でも買える時代ですが、私たちはお客さまに実際にお店へ来ていただくことを大切にしています。ワインの本当のおいしさを知っていただくため、店内のバースペースで試飲できるようにしたり、定期的に試飲会を開いたりしています。

――スタッフの皆さんの情熱こそが、専門店の核になっているのですね。そもそも「お酒の専門店」であることにこだわるようになった、きっかけや転機があったのでしょうか?

鳥海さん:30年以上前に、近所に大型の酒の安売り店ができた時は、専門店としてどうすべきか、少なからず悩みました。コンビニに業態を変えることも一瞬考えましたが、そこから「自分たちにしかできないことは何か」を突き詰め、勉強を重ねて今の専門店の形になったんです。

最寄りの駅から10分ほど歩く立地の当店に来ていただくには、「わざわざ行きたい」と思える目的がなくてはなりません。珍しいお酒があるだけでなく、本当においしいお酒をそろえ、その魅力を伝えていくことが私たちの使命だと考えています。

お客さんとの出会いを育む、バースペースとイベント

―― どのようなお客さんが多くいらっしゃいますか? 

鳥海さん:「なんでもいいからお酒を買いたい人」というよりは、ある程度のお金を出して、「本当においしいお酒を飲みたい」と考える30代、40代の方が多いですね。

若い方のお酒離れが進んでいると言われますが、私たちは幅広い方々にお酒の魅力を知ってもらうきっかけをつくりたいと常に考えています。たくさん飲む人を増やすというよりは、たとえ週に1杯でも、その1杯のおいしさを心から楽しんでほしい。そのために何ができるかを試行錯誤しています

2006年に店内を改装し、気軽に1杯から飲めるバースペースを設けたのもその一環です。「飲んだことのないお酒をボトルで買うのは不安」という方でも、まず試飲して美味しさを知ってから購入いただけたら理想的だなと。

店内のバースペース。イベント開催のほか、スタンディングバーとしてグラス1杯から楽しめる

――角打ちのようなバースペースがあることで、初めての方もお店に入りやすそうですね。実際、新規で来店されるお客さんも多いのでしょうか?

鳥海さん:そうですね。お酒に合う食品もこだわってそろえているので、それによってお客さまの幅も広がっているように感じます。「面白い食材がありそう」と、お酒を飲まない方が来てくださることもありますよ。

お酒のお供になるような瓶詰めや缶詰、厳選されたチーズなども多数取り扱う

一方で定期的に開催するイベントに関しては、常連のお客さまが中心ですね。

――普段のお買い物では新しいお客さんとの出会いを大切にされつつ、イベントで常連の方との関係を深めているのですね。その常連さんが集まるイベントについて、具体的に教えていただけますか?

鳥海さん:酒のおいしさや魅力を知ってもらうには、やはり実際に飲んでいただくのが一番なので、昔から色々な形で試飲会をやっていました。2006年にバースペースができたことで、より柔軟にイベントを開催できるようになり、毎月2回ほど店内で試飲会を開催しています。他にも、お付き合いのあるレストランでお料理と合わせたペアリングイベントも行っています

広く浅くではなく深く狭く。「熱量の高いファン」に絞った情報発信術

――店内での試飲会からレストランでのペアリングまで、とても魅力的なイベントのラインアップですね。そうしたイベントの情報は、どのようにしてお客さんにお届けしているのでしょうか? 

鳥海さん:広く浅く無差別に情報を届けるのではなく、一度お店に来てファンになってくださった方に、確実にお届けしたい。そう考え、店頭で興味を持ってくださったお客さまにLINE公式アカウントへの登録をご案内しています。

以前はメーリングリストで告知していましたが、LINEの方が配信もしやすく、お客さまにも届きやすいと感じています。

――LINE公式アカウントは、具体的にどのように案内していますか? 

鳥海さん:レジで「LINEは使っていますか? お得なイベント情報を配信していますよ」とお声がけしています。LINE公式アカウントのショップカード機能も使っていて、3,000円以上のお買い上げでポイントを付与しています。ポイントが貯まるとグラスワインをプレゼントする特典があり、紙のポイントカードと併用してご好評いただいています。

――そうして熱量の高いお客さんと直接つながることで、お店としてどのような手応えを感じていますか?

鳥海さん:導入して2年ほどですが、今では友だち数が600人ほどになりました。店頭で直接ご案内しているので、私たちの店に本当に興味を持ってくださっている「熱量の高い」お客さまが集まっている実感があります。そのためか、ブロック率も低いですね。友だち数が増えるにつれて、その便利さを改めて感じるようになりました。

――LINEのメッセージ配信で工夫していることや、特に役立っている機能はありますか? 

鳥海さん:プッシュ通知は、冒頭の10数文字で「おっ」と思ってもらえるかが勝負なので、件名には特に気を使っていますね。

お客さまにとって必要な情報をコンパクトにまとめる、数字は半角にする、絵文字を使って視覚的に何のお知らせなのかを的確に伝える、など意識していて。あとは、配信内容の文字量や写真の配置も日々試行錯誤しています。

【件名の例】

🍷9/20㈯プレミアムワイン試飲会のご予約は8/27㈬の21:00から🍷

🍷7/29㈫ワインチーズディナー会の締め切りは明日7/26㈯20:00です🧀

――Instagramなども運用されている中で、LINEを利用されている理由は何でしょうか?

鳥海さん:やはり、日々多くの方が使っているツールなので、SNSのように情報がタイムラインで流れてしまうことなく、届けたいお客さまに直接メッセージが届く点ですね。

それに加えて、配信の際にはプッシュ通知の件名を工夫したり、来店後のアンケート機能を活用してお客さまの声を直接聞いたりもできる。こうした機能の幅広さも、LINE公式アカウントを利用している大きな理由です。

100周年に向けて。スタッフの「お酒愛」を伝えて、お酒のファンを増やしたい

――ありがとうございます。最後に、お店の「原点」とも言える、一番大切にされていることを教えていただけますか。

鳥海さん:スタッフの「お酒が好き」という気持ちです。その気持ちは必ずお客さまにも伝わると信じているので、スタッフ間での試飲や情報交換は欠かしません。

――「お酒が好き」というお気持ち、とても素敵ですね。100周年に向けて、その想いを大切にしながら、お店をどのように成長させていきたいとお考えですか?

鳥海さん:おいしいお酒はまだまだたくさんあります。新進気鋭の蔵元さんや生産者の方々のお酒を紹介することで、若い世代にもっとお酒に興味を持ってもらえるようなお店にしていきたいです。

そして、スタッフ個人の熱量がお客さまに伝わり、お酒を愛する人が一人でも増えれば、こんなにうれしいことはありません。

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【取材先】
Deguchiya(株式会社出口屋)
住所:東京都目黒区東山2-3-3
TEL:03-3713-0268
平日12:00~21:00 / 祭日 15:00~21:00 休業日毎週日曜日(夏季および年始休業あり)・祝日の月曜日
WEB:https://deguchiya.com/

取材・文:花沢亜衣
東京生まれ。食や暮らしにまつわるジャンルを中心にWEBメディア・雑誌で編集や執筆を行う。三度の飯より食べることが好き。一番好きなお酒は青空の下で飲むお酒。2023年J.S.A.ワインエキスパート呼称資格取得。2025年5月に酔談録『二軒目は路面店』を発売。
Instagram:@aipon79

編集:はてな編集部