
横浜・戸部にあるイタリア料理店「BRICO」に、LINE公式アカウントの活用方法について伺いました。
一度ならず、何度も足を運んでくれる「おなじみ」のお客さんは、飲食店にとって心強い存在です。多くの常連客の心をつかむお店は、どのような工夫をしているのでしょうか。
今回お話を伺ったのは、横浜駅から京急で一駅、都心部からのアクセスも良好な街、戸部にお店を構えるイタリア料理食堂「BRICO」。モツ料理やふわふわの生ハムなど、素材や調理法にこだわった一品で、地元民から支持されています。
また、リピーターを増やすために、LINE公式アカウントも活用しています。お客さんとの関係を紡ぐLINEの活用術とお店づくりの哲学を店主・山下真さんに伺いました。

- 山下真さん
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横浜・戸部のイタリア料理食堂「BRICO」店主。フランス語の「ブリコラージュ」をコンセプトに、日本の食材を活かしたイタリア料理を提供している。特に北海道十勝平野の牧場から直接仕入れる牛モツ料理は看板メニュー。
- コンセプトは「ブリコラージュ」。日本の食材で生み出す“特別な日常”
- リピーターが求める「居心地の良さ」。時間制限を設けない狙いとは
- 認知拡大はInstagram、既存客との関係強化はLINE公式アカウントで使い分け
- 「ブリコラージュの精神」で築く、“お任せ”の信頼関係
コンセプトは「ブリコラージュ」。日本の食材で生み出す“特別な日常”
――「BRICO」のお店の特徴とコンセプトを教えてください。
山下さん:横浜のイタリア料理店で10年ほど修行し、2022年にこの「BRICO」をオープンしました。
「BRICO」はフランス語の「Bricolage(ブリコラージュ)」から来ています。これは、「その場にあるものをうまく組み合わせて、いいものを作る」というDIYの精神を表す言葉です。
このお店も、人、食材、空間など、あるものをうまく組み合わせて良い空間をつくれたら、という思いをコンセプトにしています。
――どんな料理を提供しているのでしょうか?
山下さん:日本の食材で、日本人の口に合うイタリア料理を提供しています。 私自身が和食好きなので、和食のようにシンプルな調理で素材の味を楽しんでもらいつつ、家庭では再現が難しい“外食ならでは”の一皿をお出ししています。
――人気のメニューは?
山下さん:「ランプレドット」など、北海道・十勝(帯広)エリアの牧場から直接仕入れる牛モツ料理が特に人気です。

ランプレドットは、個人的にも思い入れのあるメニューです。料理人になる前、あるお店で食べたランプレドットが絶品で、そのお店を修行先に選んだという経緯もあります。


――お酒はどんなものを提供しているんですか?
山下さん:ワインはイタリア産のみを扱っています。南北に長いイタリアは郷土料理も多く、各地に郷土料理と相性のよいワインがあります。BRICOでも、その時期の食材に合わせて各地の料理を楽しんでいただけるようにしています。
リピーターが求める「居心地の良さ」。時間制限を設けない狙いとは

――お客さんはどんな方が多いのでしょうか?
山下さん:ご近所に住んでいる方です。年齢層は30代から60代くらいの方が中心で、特に女性のお客さまが多いですね。お店としても女性をターゲットにしていて、インテリアも女性が落ち着きそうな雰囲気を意識しています。 あとはお子さま連れのご家族もいらっしゃいますね(お子さまの滞在は20時まで)。
――ご近所の方が中心ということは、リピーターのお客さんが多いのですか?
山下さん:はい。「ずっと気になっていた」と言って来てくださる方も多く、そこからリピーターになっていただくこともあります。
――リピーターになってもらうための工夫として、どんなことをされているのでしょうか?
山下さん:大切にしているのは、お店の味や雰囲気を知っていただき、それをふとした時に「思い出してもらう」ことかなと考えています。前回食べられなかったものを次回食べたいと思ってもらえるように、いろいろなメニューをご用意しているのも、その工夫の一つですね。

――なるほど。「メニューの豊富さ」を、思い出してもらうきっかけにするという発想は面白いですね。
山下さん:そうですね。あとは居心地の良さを理由に来てくださっている方も多いようです。
ちょっとコンパクトな空間の方が落ち着くことってあると思うので、お店もきゅっとコンパクトな作りにしていて。ただ、食事とお酒をゆっくりと楽しんでほしいので、滞在時間の制限などは設けていません。2時間制というふうに決められてしまうと、慌ただしくなってしまうので。

――「2時間制だと慌ただしい」というのは、まさにお客さん視点ですね。
山下さん:うちは「ゆっくり飲める場所だから来たい」というお客さまをターゲットにしています。例えば、3時間あれば、いろいろなお料理を食べて、おしゃべりしながらゆっくりとお酒を飲むことができる。そうすれば、お客さまの満足度も上がります。
逆に、回転率を求めると私たちスタッフが疲弊してしまい、結果としてお客さまの満足度も下がってしまいます。 私が調理を担当し、サービスは2名とアルバイトで回している今の体制では、時間制限を設けないこの方法が、お互いにとって一番いい方法だと思っています。
そういった理由で、うちの店では、回転数を上げてたくさんのお客さまを呼び込むのではなく、少ないお客さまにリピーターになってもらうことを選びました。
認知拡大はInstagram、既存客との関係強化はLINE公式アカウントで使い分け
――2022年にオープンして現在4年目ですが、どうやって地元の方に認知を広げていったんですか?
山下さん:私自身が25年くらいこの近くに住んでいるので、近場のお店の店主などに紹介していただいたり、地元の方に情報を届けやすいInstagramを活用したりしました。
あと、来ていただいた方にはLINE公式アカウントを友だち追加していただき、そこから会員限定の情報などを発信することでコミュニケーションをとっています。

――Instagramでの認知拡大に加えて、LINE公式アカウントでのコミュニケーションにも力を入れているんですね。LINE公式アカウントは、いつ頃から導入されたんですか?
山下さん:オープンして半年後くらいに始めました。InstagramなどのSNSはこちらから一方的に発信できますが、見てもらえるかどうかは見る側のタイミングによります。
一方、LINEは通知が届くので、来ていただいた人に「思い出してもらう」ツールとしてはLINEの方が向いていると考えました。知らない方に知っていただくためには、Instagramのほうが向いていると思うので用途を分けて運用しています。
――LINE公式アカウントを配信する上で気をつけていることはありますか?
山下さん:LINE公式アカウントを友だち追加していただいた方に特別感を持ってもらいたいので、配信のタイミングには気をつけています。これは、本日のおすすめ料理情報などをSNSに先駆けてLINE公式アカウントでいち早く配信するようにしているからです。(配信時間は)週末なら早めのランチとディナーの間くらい、夕方17時前までにと決めています。
それから、文章は私が書くようにしていますね。シェフが直接発信しているということから、ここでも特別感を出せればなと。伝えたいことを書くと長くなりがちですが、全体を読まなくてもポイントが伝わるよう意識しています。

山下さん:また、LINE公式アカウントの会員限定でオーダーできる1日1食限定の「Tボーンステーキ」など、特別メニューを提供することもあります。それを目当てに再訪してくださる方もいますね。
――限定感を出すためにいろいろな工夫をされているんですね! LINE公式アカウントへの友だち追加はどのように案内していますか?

山下さん:友だち追加をすると、現金でお支払いの方は3%オフになるという特典があるので、お会計時にこちらから直接ご案内するようにしています。あとはメニューにも記載しているので、それを見て登録いただくことも多いですね。
――LINEでつながったお客さんとは、具体的にどのようなコミュニケーションが生まれていますか?
山下さん:みなさんお会計の際にLINE公式アカウントの画面を見せてくださるのですが、何度か利用されている方は僕たちもお顔を覚えているので、画面をお見せいただく前に、「3%オフにしておきますね」といったコミュニケーションが生まれたりします。
LINE公式アカウントで事前に情報を受け取ってくれているので、「(投稿していた)あのお料理おいしそうでしたね」といった声をいただくこともありますね。
――リッチメニューやショップカードも工夫されていますね。
山下さん:リッチメニューには予約や電話など、すぐに使える機能をまとめています。LINEの画面を見れば、何ができるかが一目で分かるので、「次はこちらから予約できますよ」と説明がしやすくなりました。
5個スタンプを貯めるとお通しの生ハムが増量できるショップカードも好評で、特に女性のお客さまが楽しみながら貯めてくださっています。2周目になっている方も多くいらっしゃいますね。

「ブリコラージュの精神」で築く、“お任せ”の信頼関係

――思い出してもらい、再訪いただくための工夫をいろいろされているんですね。
山下さん:おいしいものを作っていても、知ってもらい、思い出してもらわなければ来てもらえません。中でも「思い出してもらう」ことが一番大事なことだと思って、いろいろと試行錯誤しています。
――その「思い出してもらう」ことも踏まえた上で、お客さんに「BRICO」を選び続けてもらうために、一番大切にされていることは何ですか?
山下さん:お客さまを飽きさせないようにしながらも、いい意味で変わらない味を提供できるように意識しています。「飽きさせないけど変わらない」というサジ加減が大事だと思います。

――今後、お店として実現していきたい「構想」があれば教えてください。
山下さん:思いついた面白いことは全部実現したいと思っています。料理でも「これはおいしいし、絶対人気が出るだろう」と思ったものをどんどんかたちにしていきたいです。
――そうした新しい構想を実現していく上で、お客さんとはどのような関係を築いていきたいですか?
山下さん:「お任せでお願いします」と言っていただけるような、信頼関係を築いていきたいですね。そのためには、お客さま一人ひとりにあわせた接客が欠かせません。 例えば、新規の方にはまず定番の生ハムやモツ料理でうちの味を知っていただく。
リピーターの方であれば、「この間はあれを召し上がったから、今回はこういうのはどうですか?」と提案することもあります。
毎回同じものが食べたい方、違うものが食べたい方、お客さまによって好みはさまざまですから。時にはお客さまから「こんなのが食べたい」とリクエストをいただくことも。材料がある範囲であれば、何でもお応えします。 まさに、そうした積み重ねこそが「ブリコラージュ」の精神であり、私たちが目指すお客さまとの信頼関係だと考えています。
気になるあのお店のLINE集客成功事例
【取材先】
イタリア料理食堂 BRICO
住所:神奈川県横浜市西区戸部本町43-7
TEL:045-654-9385
営業時間:日曜日定休(不定休あり)
[平日]11:30〜14:30(L.O.13:30)/18:00〜23:00(22:00L.O.)
[土祝]11:30〜14:30(L.O.13:30)/17:00〜23:00(22:00L.O.)
WEB:https://brico.ciao.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/brico0416
取材・文/花沢亜衣
東京生まれ。食や暮らしにまつわるジャンルを中心にWEBメディア・雑誌で編集や執筆を行う。三度の飯より食べることが好き。一番好きなお酒は青空の下で飲むお酒。2023年J.S.A.ワインエキスパート呼称資格取得。2025年5月に酔談録『二軒目は路面店』を発売。
Instagram:@aipon79
写真:是枝右恭
編集:はてな編集部

