鎌倉のワインシーンを盛り上げる「日本ワイン店 じゃん」に学ぶ、常連客づくりの極意。角打ち、イベント、LINE活用

鎌倉で日本ワインを中心に販売し、“角打ち”スタイルでお酒を楽しめる店「日本ワイン店 じゃん」。同店に、LINE公式アカウントの活用方法を伺いました。


一度ならず、何度も足を運んでくれる「おなじみ」のお客さんは、飲食店にとって心強い存在です。多くの常連客の心をつかむお店は、どのような工夫をしているのでしょうか。

2024年4月、鎌倉にオープンした「日本ワイン店 じゃん」。日本ワインを中心に販売しながら、“角打ち以上、居酒屋未満”のコンセプトで営業する同店は、日本のお酒の魅力を伝え、地域の人々が集う場となっています。

そして、この「集いの場」を育むため、イベント告知などを通じたお客さんとの関係構築にLINE公式アカウントをフル活用しているといいます。お店の運営にLINE公式アカウントがどう貢献しているのか、オーナーの加藤曜子さんに伺いました。


「日本ワイン店 じゃん」加藤曜子さんのプロフィール写真

加藤曜子(かとうようこ)さん

「日本ワイン店 じゃん」オーナー。2児の母。 富士フイルム株式会社で記録メディアの営業、マーケティング職に10年従事した後、自宅の玄関先で日本ワイン販売を開始。間借り営業を経て、2024年4月に実店舗をオープン。

地域とワインをつなぐ。“角打ち以上、居酒屋未満”の場所 

――「日本ワイン店 じゃん」のコンセプトや特徴を教えてください。

加藤さん:日本のお酒に特化したお店です。日本ワインは常時100種類以上、そのうち10種類以上はグラスで楽しんでいただけます。日本酒も、常時3種類ほどお飲みいただけるようにご用意しています。

コンセプトは「角打ち以上、居酒屋・レストラン未満」。食事もしっかり楽しめるようにしています。料理は、なめろうやチャーシューをはじめ、季節のおつまみから、鎌倉のスパイス専門店「アナン邸」とコラボしたカレーまで、お酒に合うものを意識しています。日本の調味料を使った、家庭料理のようなメニューが多いですね。

――ワインのお店で日本の家庭料理、というのは珍しいですね。

加藤さん:日本ワインは、和食にとても合うんです。ワインだからといって、ステーキなどの洋食を合わせる必要はないと考えています。

――日本のワインと和食(家庭料理)が合うんですね!そもそも、加藤さんは飲食業界のご出身ではないとのことですが、なぜ「日本ワイン」に特化したお店を始めようと思われたのですか?

加藤さん:祖父母が和歌山でミカン農家を営んでおり、その里山の風景に憧れがありました。しかし、後継者不足などで里山文化が失われつつある状況を寂しく思い、地域のものづくりを応援したいと考えたのが最初のモチベーションです。

なので、初めからお酒のプロを目指していたわけではありません。「里山文化を守りたい」と考えていた時に、たまたま出合ったのがワインでした。

お酒の仕事を始めようと思ったきっかけは、コロナ禍に山梨で飲んだ日本ワイン。そのおいしさに衝撃を受けて。当時、鎌倉では買える場所がなかったので、自宅の玄関先でのボトル販売から始め、間借り営業を経て今の形になりました。

ワインのほか、日本酒、日本の蒸留酒やリキュール、調味料、チーズやハムなどの食材も取り扱う

――なぜ鎌倉でお店をオープンしようと?

加藤さん:自宅も鎌倉にありましたし、「この街が好き」という思いも強かったのですが、同時にビジネス的な視点も持っていました。

鎌倉にはもともとワインを日常的に飲む文化が根付いており、ワイン好きのコミュニティーも存在しています。この場所に「日本ワイン特化」というコンセプトで飛び込めば、必ず支持されると考えていました。

――お店には常時100種類以上の日本ワインが並んでいるとのことですが、そのラインアップはどのように選定されているのですか?

加藤さん:基本的にすべて現地を訪れ、生産者の思いや、その土地の文化、暮らしぶりをしっかり見て、お話を聞いた上で取り扱うようにしています。

ワインに添えられたPOPには日常の食卓に登場するような料理とのペアリングのアドバイスも書かれている

日本ワインの一番の面白さは、醸造家との距離が近いこと。産地を訪ねることも、醸造家本人と会うこともできますから。 ただ「品種はこれで製法はこうです」と言われて飲むよりも、「この年は台風があって、こんな苦労があった」といった話を直接聞くと、作り手の人柄や雰囲気が伝わって、ワインの印象も変わります。そして、なによりもおいしく感じられるんですよね。

料理に合わせるワイン選びから、ワインに合わせた料理の相談まで、加藤さんが丁寧に対応してくれる

――それほど作り手の個性が表れるとなると、生産者の方々との関係性も非常に重要ですね。どのように関係を築いているのですか?

加藤さん:基本的にすべて直接取引をしているので、LINEやメッセンジャーで「これはどうなっていますか?」と聞けば、すぐに教えてくれます。そうした一次情報をお客さまにお伝えできるのも強みですね。月に1〜2回は産地を訪れ、収穫を手伝うこともあります。自分が収穫を手伝ったブドウが、1年半後にワインになってお店に並ぶのは、とても感慨深いです。

常連客との絆を強める「イベント戦略」。再訪するきっかけのつくり方

――お客さんはどのような方が多いのでしょうか?

加藤さん:平日は9割くらいが地元の方です。16時からオープンしているので、ボトルを買われる方、夕食前に軽く飲んでおしゃべりする方、ママ友同士でお子さんの習い事の間に立ち寄られる方、完全に夕食目的でしっかり食べる方など、使い方はさまざまですね。

――日本ワインを目的に来られる方が多いのですか?

加藤さん:週末は遠方から「日本ワインが好き」という方も来られますが、多くは日本ワインをほとんど飲んだことがない方です

「居酒屋の一つ」だと思って来店されて、「あ、日本ワインしかないんですね」と言われることも珍しくありません。そこから来店するうちに興味を持ち、常連になってくださる方もいらっしゃいます。 また、お店で定期的に開催するイベントをきっかけに、日本ワインにハマってくださる方も多いです。

――いろいろな種類のイベントを開催されていらっしゃいますよね。詳しく教えてください。

加藤さん:イベントは大きく3パターンがあります。

1. 醸造家と楽しむイベント:全国から醸造家を招き、カウンターを囲んで一緒にワインを楽しむものです。お客さまから醸造家へ自由に質問が飛び交い、初めて会う方同士でも、ワインという共通点で自然と打ち解けられていますね。

2.フード系のイベント:生牡蠣やタコスなど、特定の料理とワインのペアリングを楽しむイベントです。先日は、たこ焼きとシャンパンを合わせる「たこシャン」も開催しました。

3. 講座系のイベント:レジュメを用意して、ワインについてしっかり学んでいただくものです。

このほか、店舗外でのポップアップイベントも人気です。 例えば、事前にシェフとワイナリーを訪れてコースを組み、フレンチレストランに醸造家を招いて本格的なペアリングを提供するといった、より深い体験を求める方向けのイベントですね。

――イベントの種類が豊富ですね! そこまでイベントに力を入れる「目的」はどこにあるのでしょうか?

加藤さん:何もせずとも満席になるお店ならいいですが、うちはそうではありません。ですから、いかに「再訪のきっかけ」を自然につくれるかが重要です。 そして、その「再訪のきっかけ」をお届けする上で、LINE公式アカウントがすごく有効なんです。

常連客が「さらに得をする仕組み」をつくる。人気ワイン店のLINE活用術

――「再訪のきっかけを届けるのにLINEが有効」とのことですが、お店の運営において、LINEの強みはどこに感じますか?

加藤さん:新規客を獲得するより、一度来た方にもう一度来てもらう方がコストはかからないので、お客さまとLINEでつながっているかどうかは大きいです。

お客さまが「また来たい」と思ったその時に、こちらから「再訪のきっかけ」を届けられるのがLINEの強みだと思います。

――具体的には、どのように活用されているのでしょうか?

加藤さん:LINE公式アカウントは、席の予約やイベントの案内がメインです。 友だち追加は、基本的にお会計の時に必ずご案内するようにしていまして。追加と引き換えにステッカーをプレゼントしていることもあり、ほとんどのお客さまがその場で対応してくださるんです。

――配信内容で特に工夫されている点はありますか?

加藤さん:何を配信するかはずっと試行錯誤していますね。フードイベントの時はビジュアルのシズル感を重視したり、配信形式をカードタイプのメッセージにしてみたり。

また、配信数の上限もあるので「セグメント配信」は意識しています。生産者のイベントに反応する人、フード系のイベントに反応する人と明確にかれているので、興味のある方にしっかり届くよう工夫しています。

――そもそもLINE公式アカウントを導入するきっかけは何だったのでしょうか?

加藤さん:実店舗を構える前、家の玄関先でワインを販売していた時から、「今から買いに行っていいですか?」という連絡を受けるなど、お客さまとのやりとりに使っていたんです。管理画面も分かりやすく、導入もスムーズだったので、今の店舗でも引き続き使っています。

提供予定のワインに関する情報の他、イベント情報をまとめたWebページへの導線として活用

――Instagramも運営されていますが、LINEとはどのように使い分けているのですか?

加藤さん:Instagramは広報的な位置づけで、私たちがどういうスタンスで活動しているかという「価値観」の発信に使っています。 一方、LINEはコンバージョン(行動喚起)を促すツールとして、「これ買いますか?」「このイベントに来ますか?」といった直接的な呼びかけに使っています

――今後、さらにこのように活用していきたい、といった計画はありますか?

加藤さん:ポイントカード(ショップカード)の機能を導入して、リピートしてくださる方がさらに得をするような仕組みをつくりたいです。 また、11月下旬に藤沢に2店舗目をオープンするので、そちらでもLINE公式アカウントを活用したいと考えています。

――2店舗目も増え、ますます「お客さんとのつながり」が広がっていきますね。今後、「日本ワイン店 じゃん」として、どのような未来を描いていらっしゃいますか?

加藤さん:うちのお店はマニュアルがなく、スタッフもお客さまも、ワインの作り手も、一人の人間として対等につながっていくことを大切にしています。 ここで生まれたつながりによって、心が温かくなったり、動かされたりするような体験を今後も提供し続けて、できるだけ多くの人に波及させていきたいですね。最終的には地方の産地にも波及効果が届き、相互作用で「楽しい」「うれしい」という気持ちがたくさん生まれることを目指しています。

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【取材先】
日本ワイン店 じゃん
住所:神奈川県鎌倉市大町2-1-10 宮内ビル1階
TEL:045-654-9385
営業時間:月曜定休
[酒屋]14:00〜21:00 、[角打ち]平日16:00〜21:00、土日祝14:00〜21:00)
HP:https://jan-wine.com/
Instagram:https://www.instagram.com/japanese.wine.jan/

取材・文/花沢亜衣
東京生まれ。食や暮らしにまつわるジャンルを中心にWEBメディア・雑誌で編集や執筆を行う。三度の飯より食べることが好き。一番好きなお酒は青空の下で飲むお酒。2023年J.S.A.ワインエキスパート呼称資格取得。2025年5月に酔談録『二軒目は路面店』を発売。
Instagram:@aipon79

写真:佐坂和也
編集:はてな編集部