
川崎のキムチ専門店「おつけもの慶」に、LINE公式アカウントの活用方法を伺いました。
一度ならず、何度も足を運んでくれる「おなじみ」のお客さんは、飲食店にとって心強い存在です。多くの常連客の心をつかむお店は、どのような工夫をしているのでしょうか。
川崎のキムチ専門店「おつけもの慶」は、 真イカにキムチを詰め込んだ「元祖!おなかいっぱいイカキムチ」などのヒット商品で知られ、日本各地の催事出店でも人気を博しています。
そんな同店がお客さんへの情報発信とコミュニケーションに活用しているのが「LINE公式アカウント」。今回は、店舗を運営する有限会社グリーンフーズあつみのオーナー・渥美朱美さんと和幸さんに、ファンを巻き込む店づくりと、LINE活用の裏側を伺いました。

- 有限会社グリーンフーズあつみ 代表取締役社長 渥美和幸さん(写真右)/取締役 祭事隊長 渥美朱美さん(写真左)
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川崎市川崎区出身。2003年、川崎区渡田新町にわずか1坪のキムチ専門店「おつけもの慶」をオープン。同店のキムチが、楽天ランキング1位の獲得などを機に「かながわ名産100選」や「かわさき名産品」に選ばれる。2022年には動物園への寄付活動などが自治体からも評価され「第1回かわさきSDGs大賞」を受賞。
- 「野菜の数だけキムチがある」。八百屋の目利きが生んだブランド戦略
- キムチを抱えて「全国ツアー」。出張販売で世界に広がるファンの輪
- 店と客の関係を超えて「仲良くなる」。ファンを離さないLINE活用術
- 「おいしい」は世界共通。川崎から全国、そして世界へ
「野菜の数だけキムチがある」。八百屋の目利きが生んだブランド戦略

――まずは「おつけもの慶」がどんなお店か、その特徴を教えてください。
渥美和幸さん(以下、和幸さん):1987年から続く八百屋が母体で、青果市場で仕入れた新鮮な野菜を使ってキムチをつくっています。
元々「野菜の数だけキムチがある」というコンセプトで商品をつくっていたのですが、今では魚介のキムチも取り揃えているので、「食材の数だけキムチがある」と言ったほうが正しいかもしれませんね(笑)。
――その言葉通り、お店に並んでいるキムチのバリエーションがすごいですね。そもそも八百屋さんがなぜ、キムチ専門店を始めたのでしょうか?
和幸さん:八百屋として、どうしても他店との差別化が難しいという課題があったからです。 川崎のお店なら野菜は大田市場で仕入れることになりますが、どんな目利きでも、同じ市場から仕入れていれば扱う商品は似てしまいます。だから「独自のブランド(商品)を持ちたい」とずっと考えていました。
幸い、以前から大手のキムチ業者や焼肉屋など、専門性の高い飲食店へ野菜を卸していた経験もあり、キムチの知識はそれなりにありました。そこで「自分たちでつくってみよう」と。 キムチはつくる人によって味が異なり、それぞれが自分の味にプライドを持っているため、他店と競合になりにくい。ブランドとしても成立させやすいと考えました。


――「おつけもの慶」のキムチの味にはどんな特徴がありますか?
和幸さん:川崎コリアタウンの人気焼肉店「慶北苑」の職人と一緒につくり上げました。 イメージは「日本のお新香」。毎日の食卓に並ぶような、親しみのある味を目指しました。何カ月も発酵させるのではなく、フレッシュな野菜の味を楽しめる浅漬けタイプに仕上げています。甘辛い味付けはご飯にもよく合い、毎日食べても飽きません。
鮮度にもこだわっており、今日(取材で)来ていただいた大島上町店に併設した工房で、仕入れた野菜をすぐに仕込み、漬けたてを出荷しています。
――イカを丸ごと使った「元祖!おなかいっぱいイカキムチ」など珍しいメニューも多いですよね。

和幸さん:商品開発は僕をはじめ祭事隊長(※おつけもの慶では「催事」をより楽しく捉えるため、「祭事」と表現している)、工場長が担当していますが、工場スタッフからの意見も取り入れて商品化しています。
「元祖!おなかいっぱいイカキムチ」、タコを使った「ひっぱり多幸キムチ」などインパクトのある目玉商品は僕が開発しました。キムチというと白菜キムチが定番ですが、差別化のためにもよりインパクトのある商品をつくることを意識しています。
キムチを抱えて「全国ツアー」。出張販売で世界に広がるファンの輪

――お店に来るお客さんはリピーターの方が多いのでしょうか?
和幸さん:肌感覚ですが、リピーターが6割、新規が4割くらいです。 新規の方も「いただいたキムチがおいしかったから」という紹介が多く、口コミで広がっています。創業から22年になりますが、初期の頃からのお客さまも少なくありません。
朱美さん:ご近所の方も多いですが、私たちは「ジャパンツアー」「ワールドツアー」と称して各地で催事を行っているので、そこで知ってくださる方も多いですね。 催事で購入しておいしかったからオンラインショップで買う、あるいは実店舗に来てみる、別の催事会場へ足を運ぶ……という循環が生まれています。
――ジャパンツアー、ワールドツアーとは……?
朱美さん:日本・世界各地の催事に出店することです。日本では全国各地の百貨店などで、海外ではアメリカニュージャージー州、ロサンゼルス、タイのバンコクで催事を行いました。
――まさに川崎から世界へ羽ばたくお店に成長されたわけですが、2003年のオープン当初から営業は順調だったのですか?
和幸さん:いえいえ、当時は今よりも人通りの少ない住宅地に店があったので、集客にはかなり苦戦しました。 宣伝方法もわからなかったので、手づくりのチラシを配って、地道に存在を知らせるしかありませんでした。その後、口コミでじわじわと地域に広がり、2007年頃からの楽天での販売やメディア紹介を経て、今に至るという感じです。

店と客の関係を超えて「仲良くなる」。ファンを離さないLINE活用術
――SNSでも精力的に情報発信されていますが、それぞれのツールをどのように使い分けていますか?
朱美さん:メインはInstagramとLINE公式アカウントですね。LINE公式アカウントは7〜8年前に開設し、現在は「店舗の情報配信用」と「ジャパンツアー(催事)用」の2つのアカウントを運用しています。

催事用のアカウントでは「ポイントカード機能」を活用しています。 催事に来店いただくと1ポイント、3つ貯まるとキムチのおまけをプレゼントする仕組みです。全国各地で開催しているにもかかわらず、「ポイントを貯めたいから」と何度も足を運んでくださる方が多いんです。紙のカードからLINE公式アカウントに切り替えて、お客さまからも「便利になった」と好評です。
情報は2つのアカウントで同じものを配信しています。基本的には商品の紹介とイベントの告知が中心になりますね。


催事にきてくださって「LINEを見てきました」とおっしゃる方は多いですね。特に催事の情報は皆さんLINE公式アカウントから情報を得ているようです。
――友だち追加への誘導は、どのように行っているのでしょうか?
朱美さん:ここはずっとアナログなやり方です。お会計の際、チラシをお渡ししながら直接お声がけします。 ポイントは「その場で登録してもらうこと」。「あとで登録してください」だと、帰宅後には忘れられてしまいますから。
もちろん強要はしないよう心がけつつ、私が接客する時は、スマホを取り出していただき、完了するまで見守ります(笑)。催事ではポイント特典があるので、皆さん喜んで登録してくださいますね。
――配信コンテンツをつくる上で、こだわっているルールはありますか?
和幸さん:登録者数が増えて配信数に制限があるため、情報は厳選しています。 必ず配信したい情報(セミナー日程など)を月初めに整理し、その合間にキャンペーンやメディア情報を挟みますが、鉄則は「1回の配信で伝えることは1つにする」こと。
情報が多すぎると読まれません。キャッチーな短い言葉で、パッと見て伝わるように担当者に調整してもらっています。

――画像のデザインも、非常に「シズル感」があります。
和幸さん:InstagramとLINE公式アカウントの投稿で共通の画像を使っていますが、いずれもプロのカメラマンとデザイナーに依頼しています。僕が開発したインパクトのあるキムチを、「とにかくおいしそうに、魅力的に」撮ってもらっていますね。

――リッチメニューも非常に充実していますね。どのような意図で設計されたのでしょうか?
和幸さん:LINE公式アカウントの配信担当が試行錯誤しています。時期によって多少変えつつ、届けたい情報が一番届くように工夫してもらっています。
「ここを見れば、お店に関するほとんどの情報がわかる」というふうにしたいので、よくある質問も置いています。特に注文が多い時期は問い合わせも増えるため、お客さまが見やすい場所に必要な情報を置いておくことは大切ですよね。

――その他、LINE公式アカウントで活用している機能はありますか?
和幸さん:登録時にアンケートを配信し、回答いただいた方の中からプレゼントが当たるようにしています。そこで年齢、性別、購入店舗、購入の経緯、利用用途などの情報は集めていますが、今はそこからセグメントを切った配信などはしていませんね。
朱美さん:TikTokを始めたことで若い方にお店を知っていただき、結果としてたくさんのLINE公式アカウント追加にもつながりました。そこで、今後は年齢層に合わせた配信も検討しているところです。店舗ごとに異なるプロモーションを行う際に使えると思っています。
あとはLINE公式アカウントではないですが、店舗で定期的に開催しているキムチセミナーに来たお客さま限定で参加できるLINEのオープンチャットもあるんです。
――オープンチャットでは、どのようなやりとりが?
キムチはおいしければ売れますが、リピーターになってもらうには「関係をつなぎ続けること」が必要です。食べた時の感動は薄れてしまうので、思い出してもらうきっかけをつくる。そのためには、お店と客という関係を超えて「仲良くなる」ことが一番大切だと考えています。

「おいしい」は世界共通。川崎から全国、そして世界へ
――お客さんとのコミュニケーションで意識していることはありますか?
朱美さん:シンプルですが、「元気をあげること」を心がけています。 商品を買うだけでなく、「おつけもの慶のスタッフと話していると元気になる」「あのお店を見ていると前向きになれる」と思ってもらえるようなコミュニケーションですね。

――キムチのおいしさを多くの人に届けたいという思いがいろいろなところから感じられるお話をありがとうございました。今後の展望を教えてください。
朱美さん:やっぱり、できるだけ多くの人にこのキムチのおいしさを届けたいですね。日本全国、そして海外へも。 そのために、引き続き「ジャパンツアー」などの催事には力を入れていきたいと考えています。
和幸さん:そうですね。「おいしい」という感覚に国境はありません。アメリカでもタイでも、良いものは伝わると実感しています。「キムチ」という世界に通じるキーワードを持っているので、もっと広い世界へ広げていきたいですね。
ただ、キムチは「生き物」ですから。賞味期限もありますし、温度管理も重要です。店舗拡大を急ぐあまり、品質を落とすことは絶対にしたくありません。自分たちのこだわりや思いも含めて、ちゃんとした形でお届けできる範囲で展開したい。一歩ずつ着実に、この「おつけもの慶」のおいしさを広げていければと思います。

気になるあのお店のLINE公式アカウント活用事例
【取材先】
おつけもの慶 大島上町店
住所:神奈川県川崎市川崎区大島上町18-1
TEL:044-366-7737
営業時間:10:00-17:00
定休日:日曜・祝祭日
HP:https://kei-kimuchi.jp/pages/corporate
Instagram:https://www.instagram.com/kei_kimchi
取材・文/花沢亜衣
東京生まれ。食や暮らしにまつわるジャンルを中心にWEBメディア・雑誌で編集や執筆を行う。三度の飯より食べることが好き。一番好きなお酒は青空の下で飲むお酒。2023年J.S.A.ワインエキスパート呼称資格取得。2025年5月に酔談録『二軒目は路面店』を発売。
Instagram:@aipon79
写真:加藤岳
編集:はてな編集部

