
創業から70年近くを迎える老舗カレー店「デリー」に、LINE公式アカウントの活用方法を伺いました。
一度ならず、何度も足を運んでくれる「おなじみ」のお客さんは、飲食店にとって心強い存在です。多くの常連客の心をつかむお店は、どのような工夫をしているのでしょうか。
日本における本格的なインドカレーの先駆けとして、「シャバシャバのカレー」を定着させたカレー店「デリー」。創業地でもある上野店のほか、銀座店、テイクアウト専門のアトリエ・デリー、オンラインショップなど店舗数をじわじわと増やしています。
そんなデリーは、70年近く受け継がれた伝統の味をより多くのお客さんに届けるため、LINE公式アカウントを巧みに活用しています。
今回は「デリー上野店」店長の菅野さんと、広報担当の中西さんに、老舗らしい「変わらない味」の守り方と、それを次世代につなぐLINEの活用術について伺いました。

- 菅野光一さん(写真左)/「デリー上野店」店長
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2014年入社。上野店店長。人事、シフト管理、発注管理、店舗運営・調理等を主に担当。
- 中西朋子さん(写真右)/「デリー」広報
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2020年入社。本社勤務で、ネットショップやSNSを担当。
昭和31年創業。日本に「本場の味」を根付かせるまで

――2026年の2月で創業70周年を迎えられます。改めて、デリーの歴史を教えてください。
菅野さん:創業者の田中敏夫は、戦前に駐在していたインドやパキスタン、スリランカで食べた現地のカレーに感銘を受け、「あのおいしいカレーを日本に紹介したい」と一念発起して開業しました。
当時はスパイスをインドから取り寄せ、現地そのままの味を再現することにこだわっていました。しかし、当時の日本にはまだ「国民食としてのカレー」という概念がなく、食べられていたカレーの多くは小麦粉でとろみをつけるタイプのものでした。小麦粉を使わないシャバシャバとしたカレーを受け入れてもらうまでには、かなりの苦労があったと聞いています。

――今や多くのファンを持つデリーのカレーですが、味の特徴やこだわりは?
菅野さん:現地のエッセンスを取り入れつつ「日本人の口に合い、お米に合うカレーであること」。これは70年前から変わらないデリーのカレーのコンセプトです。
ただ、レシピは微調整を重ねています。昔は今よりも野菜を多く使い、とろみや甘みがあったそうです。時代の変化とともに、シャバシャバしたカレーが受け入れられ、お客さまから「もっとシャバシャバがいい」という声さえいただくようになりました。そうして徐々に現在のレシピになっていったようです。
僕が入社して以降は変わっていないので、ここ10年から20年ほどは同じレシピですね。「この味」を目当てに来てくださるお客さまのために、いつ来ても同じ味を提供することを徹底しています。

50年来のファンも。世代を超える「デリー」の魅力
――同じ味を提供しつつ、メニューのバリエーションは多いですね。具体的に、どのようなカレーが人気なのでしょう?
菅野さん:デリーカレー、インドカレー、カシミールカレー、コルマカレーの4種類が人気です。常連さんは、この4つの中から選ばれることが多い印象ですね。
まず、店名を冠した「デリーカレー」。これは本場のスパイス使いを日本人向けにアレンジした、創業以来のスタンダードな一皿です。
そしてデリーの代名詞と言えるのが「カシミールカレー」です。刺激的な辛さの中に野菜やスパイスの甘みを感じられるのが特徴で、できるだけシャバシャバに仕上げています。
初めての方には「おすすめは何ですか?」と聞かれたら「カシミールカレー」を推しますが、辛さが苦手な方には、炒めた玉ねぎをたっぷり使った濃厚な甘みが特徴の「コルマカレー」や、爽快な辛さが魅力のインドカレーなどを提案しています。
セットメニューでは、カレーにタンドーリチキンティッカ (スパイスやヨーグルトに漬け込んだ鶏肉をじっくり焼き上げた料理)、サラダ、ドリンクが付いた「タンドリーチキンセット」のコストパフォーマンスが良いと好評です。


――「デリー」のお客さんはどんな方が多いのでしょうか?
菅野さん:男性のお客さまが多いです。週に2、3回通ってくださる方もいれば、上野という土地柄、観光客の方や「年に一度アメ横に来たら必ず寄る」という方もいらっしゃいます。中には「50年前から通っている」というお客さまも。親子3代で愛してくださるファンがいる一方で、新規の方は雑誌やWeb、そして行列を見て来店されるパターンが多いですね。
――上野店は常に行列ができている印象ですが、回転率を高めるための工夫はありますか?
菅野さん: 特別な裏技があるわけではありませんが、「メニューを見るだけでカレーの味が想像できるように書く」ことは意識していますね。お客さまが着席してから迷う時間を減らす(注文までの時間を減らす)ことが、結果的にスムーズな提供につながっていると思います。あとはシンプルですが、厨房スタッフがとにかく早く作ることに集中している、というくらいですね。
メルマガより「瞬発力」。あえてクーポンは配らないLINE戦略
――伝統を守りながら、2024年7月からLINE公式アカウントも活用されています。導入のきっかけは?
中西さん:もともとは、テイクアウト専門の「アトリエ・デリー」で出す週替わりカレーを告知するために始めました。 社内メンバーで小さく始めたのですが、やっていくうちに「これだけではもったいない」となり、現在は外部のパートナー企業と一緒に、上野店、銀座店、オンラインショップの情報もまとめてお届けしています。
店舗とオンラインの情報をまとめて訴求でき、発信業務の効率も良くなったので、LINE公式アカウントには満足しています。
――メルマガやSNSも運用されていますが、使い分けはどうされていますか?
中西さん:それぞれの特性に合わせて使い分けています。 例えば「オンラインショップへの送客」に関しては、会員限定のメルマガが一番反応が良いですね。Instagramは世界観を伝えるのには適していますが、リンクへの導線が弱く、外部ページに飛んでもらうハードルが少し高い。
LINE公式アカウントの魅力はなんといっても「瞬発力」です。 お客さまの手元にダイレクトに情報が届き、すぐに気づいてもらえる。店舗の「今週のメニュー」のような即時性が求められる情報には、LINEなら確実に届いている安心感もあり最適だと感じています。

――LINE公式アカウントはかなりの頻度で配信されていますね。
中西さん:そうですね。週2回配信しています。お伝えしたいことがたくさんある場合でも配信日をずらすなどの工夫をし、配信頻度が高すぎることでお客さまに不快感を与えないように意識しております。
毎週月曜日には必ずアトリエ・デリーのメニューを配信し、もう1回は各店舗のイベントや日替わりメニュー、オンライン関連の情報をお届けしています。


実は以前、本社の休業日に合わせて、配信が火曜日にずれてしまった週があったんです。すると、火曜日の売上が明らかに落ちてしまいました。
――たった1日のズレで、そこまで差が出たのですか。
中西さん: はい。「お客さまは月曜のLINEを見て、その週の来店計画を立てているんだ」と痛感した出来事でしたね。それ以来、本社が休みであっても必ず月曜日に配信するようにしています。
――LINE公式アカウントには料理の写真もたくさん載せていらっしゃいますね。工夫されていることはありますか?
中西さん:アトリエ・デリーの投稿は自社で撮影、デザインしており各店舗に関する配信のデザインは一部パートナー企業にお願いしています。料理写真は全体的に明るく、温かみのあるトーンで統一しています。
特にアトリエのメニュー写真は毎週配信するため、社内で撮影し、画角やフォーマットを固定しています。「今週のアトリエメニューが届いたな」とひと目で分かるようにするためです。
まずはLINE公式アカウントの写真で興味を持っていただき、細かい部分については、ホームページを見ていただくよう促しています。

――LINE公式アカウントの友だち追加時に「クーポン」を配布するお店も多いですが、デリーでは配っていないそうですね。
中西さん:一時的な割引で登録者数を増やすよりも、「本当にデリーの情報が欲しいファン」とつながりたいからです。そのおかげか、友だち数の伸びは緩やかですが、ブロック率は非常に低く、熱量の高いお客さまに情報を届けられている手応えがあります。
70周年も変わらず、いつもの味を

――最後に、70周年を迎えるにあたっての展望をお聞かせください。
菅野さん:これからも変わらず、デリーのカレーを作り続けることです。お客さまの「いつも変わらずおいしい味が食べたい」というご要望に応え続けていきたいですね。今年は記念イヤーとして、イベントの実施や記念グッズの店頭販売も予定しているので、注目していただけたらうれしいです。
気になるあのお店の集客成功事例
【取材先】
デリー上野店
住所:東京都文京区湯島3-42-2
TEL:03-3831-7311
営業時間:11:50~21:30(L.O)※年末年始休業あり
HP:https://www.delhi.co.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/delhi_jp/
取材・文/花沢亜衣
東京生まれ。食や暮らしにまつわるジャンルを中心にWEBメディア・雑誌で編集や執筆を行う。三度の飯より食べることが好き。一番好きなお酒は青空の下で飲むお酒。2023年J.S.A.ワインエキスパート呼称資格取得。2025年5月に酔談録『二軒目は路面店』を発売。
Instagram:@aipon79
写真:佐坂和也
編集:はてな編集部

