西荻窪で23年続くインド食堂「ガネーシャガル」に学ぶ、LINEを活用した地元ファンのつくり方

西荻窪で地域住民から愛されているインド料理店「ガネーシャガル」に、LINE公式アカウントの活用方法を伺いました。


一度ならず、何度も足を運んでくれる「おなじみ」のお客さんは、飲食店にとって心強い存在です。多くの常連客の心をつかむお店は、どのような工夫をしているのでしょうか。

カレー激戦区として知られる東京・西荻窪で、23年にわたり地域住民の胃袋を満たしてきたインド料理店「ガネーシャガル」。親子三世代で通うファンもいるという同店が、ご近所さんや商店街との温かい関係性を保ちつつ、再来店を促すために取り入れているのが「LINE公式アカウント」です。

今回は「ガネーシャガル 西荻窪店」オーナーの松岡美由起さんに、地域密着の店づくりの秘訣と、LINE公式アカウントの活用方法を伺いました。

「ガネーシャガル」松岡美由起さんのプロフィール写真

松岡美由起さん

ガネーシャガル オーナー。都内のレストラン勤務を経て、2003年に西荻窪に「ガネーシャガル」をオープン。西荻窪駅南口にあるシェアスペース「西荻のことカフェ」の運営にも携わる。

今やカレー激戦区の西荻窪。23年前は「タンドールのある店はうちだけだった」

――まず、お店の特徴について教えていただけますか?

松岡さん:オープンして23年が経ち、地元や近所の方々に「食堂」みたいな感じで可愛がっていただいています。お店にはインドの伝統的な粘土製の窯「タンドール」があるので、そこで焼いたナンやタンドリーチキンなど、カレー以外のインド料理もいろいろとご用意しております。

緑豆やレンズ豆、ひよこ豆が入った、優しい味の「ダルカレー」もおすすめ

チーズナンや、中にジャガイモを入れた「アールナン」、あんこを入れた「あんこナン」など種類も豊富

――食堂のような温かさがありつつ、本格的なタンドール(窯)を使った料理が食べられるのは魅力的ですね。タンドールは開店当初からあったのですか?

松岡さん:そうですね。今は西荻窪にもたくさんのカレー屋さんがありますが、開店した23年前はインドカレーを出していたのが二軒ぐらいで、タンドールがあるのはうちだけでした。

店内の目を引く壁画は、西荻窪在住のイラストレーターさんに描いてもらったもの

当店人気の「バターチキンカレー」は、そのタンドールで焼いたチキンを入れているので、すごく香ばしくておいしいですよ。

――そもそも、ご自身のお店を開こうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

松岡さん:実は以前、三笠会館(創業100年を超える銀座の老舗レストラン)でマネージャーとして働いていたことがありまして。三笠会館には洋食、和食、中華はあるのですが、インド料理はないんですよね。

インドの方々のスパイス使いは独特で、そこに常々魅力を感じていました。だから、独立する際、当時まだ珍しかったインド料理やスパイス料理で何かできないかなと考えたんです。その後、別のインド料理店で働いてからこのお店を開きました。

インド産のワインも提供。辛口白ワイン「ソーマ辛口」や、手摘みで厳選収穫したブドウをフレンチオーク樽で半年熟成させた重口赤ワイン「ラ・レゼルブ」など

赤ちゃんから100歳まで。三世代に愛され続ける「地域の食堂」

――接客の工夫についても伺いたいのですが、外国人のスタッフさんも多い中、接客の大切さや心得をどのように伝えているのでしょうか?

松岡さん:こちらから厳しく教育をしているわけではないのですが、海外出身のスタッフばかりなので、日本での接客の基本的なマナーは教えています。

ただ、一番大切なのはやっぱり「親切心」です。もともとホスピタリティーを持ったスタッフが多いので、その長所を生かしてもらっています。インドに暮らす家族と離れて日本に来ているスタッフは、お子さま連れのお客さまがいらっしゃるとすごくうれしいようで、自ら優しくコミュニケーションをとっています。

日本語が完璧ではないスタッフもいますが、その「親切心」があれば大丈夫だと信頼して、細かい接客は彼らに任せています。

――お店の居心地の良さは、スタッフの方々のそうした親切心によって生み出されているんですね。そもそもどのようなお客さんがいらっしゃいますか?

松岡さん:ファミリーで来られる方が多いですね。そのため年齢層はバラバラで、小さなお子さまからご年配の方までいらっしゃいます。 以前、100歳を超えるおばあさまのお誕生日に、ご家族でお祝いに利用してくださったこともありました。おばあさま自ら「ここのカレーが食べたい」と言ってくださったみたいで。すごくうれしかったですね。

小さい頃に来てくれていた子が、海外でピアニストとして活躍して、帰国するたびに食べに来てくれたりすることもあって。20年以上やっていると、そうしたお客さまの人生の変化も感じられるので面白いですよね。

――三世代にわたって愛されているなんて、まさに地域の食堂ですね! やはり、長く通い続けてくれる常連さんが多いのでしょうか?

松岡さん:そうですね。ただ、近所の方もお引越しで離れてしまったりと変化はあるので、新規のお客さまにももっと来ていただきたいと思っているところです。

――新規のお客さんへアピールするために、何か新しく始めた取り組みはありますか?

松岡さん:InstagramやX(旧Twitter)などのSNSをやっています。ただ、うちのスタッフたちはあまりInstagramやXをやらないので、私が試行錯誤しながら更新しています。商店街全体でも「Instagramをがんばっていこう」という話が出ているので、そこと連携しながらもっと力を入れていかなきゃなと思っているところです。

――新しい取り組みといえば、コロナ禍にはキッチンカーでの販売や、カレーパンの開発もされていたと伺いました。

松岡さん:そうなんです。あの時期は本当にお客さまが減って集客が大変でした。それで駅前にキッチンカーを出してカレーを売ったり、他のお店とのコラボレーションでカレーパンを作ってみたりしました

コロナ禍に作ったカレーパンは2021年の「カレーパングランプリ」で金賞を受賞

今はお店が通常営業できているので駅前のキッチンカーはお休みしていますが、近くの東京女子大学の学園祭やOB会などに呼んでいただいたときは出店しています。コロナ禍は大変なことも多かったですが、そうやって立ち止まらずにいろいろなことにトライできたのは、お店を成長させる上でよかったのかもしれないですね。

「お友達の皆さま、こんばんは」 文章にもにじむ“親切心”

――三世代に愛されるガネーシャガルですが、そうした常連さまに何度も足を運んでいただくために、LINE公式アカウントをどのように活用されているのでしょうか?

松岡さん:主にショップカード機能を活用しています。ポイントを集めると、4個で自家製ヨーグルト、8個でドリンク1杯、12個でお好きな料理1品と交換できるようにしているんです。

ショップカードの画面

現在はポイントの有効期限を1年にしているのですが、せっかく貯めてくださるお客さまのために、もう少し期限を伸ばしたほうがいいかなと調整を検討しているところです。

――メッセージは、どのような内容を配信されているのでしょうか?

松岡さん:「雨の日サービス(雨天の日限定の割引サービス)」や「イベントのお知らせ」がメインです。お客さまの目に留まるよう、必ず料理などの写真を載せるようにしています。

言葉遣いに関しては、失礼のない範囲で、親しみやすいトーンを心がけています。いつも出だしは「お友達の皆さん」という感じで文章を始めていて。他店の配信内容も参考にしながら、「こうしたら伝わりやすいんだな」といろいろ試行錯誤してやっています。

2026年2月に行われた衆議院選挙にあわせてチャイを100円で提供するイベントを実施

過去の投稿にはスタッフの紹介や、地域のイベント告知も

――LINE公式アカウントを使うようになって、お店に変化はありましたか?

松岡さん:売り上げなどに直接ドカンと大きな影響があったわけではないですが、お正月の休暇など「お店からのお知らせ」を伝えるときにすごく便利だなと実感しています。

ホームページなどに載せても、お客さまがわざわざ自分から見にこない限り気づけないですよね。でも、LINEならお客さまのスマホに直接メッセージが届くので、パッと気づいていただきやすいんです。

――確かに、わざわざお店まで足を運んでお休みだったらがっかりしてしまいますからね。確実にお知らせを届けてお客さまの無駄足を防ぐというのも、松岡さんが大切にされている「親切心」の接客ですね。

松岡さん:そうですね。お客さまの日常にお邪魔するツールだからこそ、少しでも便利に、そして親しみを感じていただけるように、これからも上手に活用していきたいです。

リッチメニューの内容は試行錯誤中とのこと。ポイントカード(ショップカード)はお客さんが会計時に提示しやすいよう上段に配置

これまでも、これからも、西荻窪と一緒に

――LINE公式アカウントを通じてお客さんの日常に寄り添う一方で、リアルな地域との関わりで大切にしていることはありますか?

松岡さん:商店街を盛り上げることにも力を入れていて、ハロウィンやイルミネーションのイベントは積極的に参加しています。ハロウィンのときは、地域の方々にお菓子を配ったり、お化けをモチーフにしたナンを提供したりしました。

あと、お店とは別に、西荻窪駅南側にあるシェアスペースも地域の方々と何人かで運営していて、そこで西荻窪在住の芸人さんを呼んでイベントをしたりもしています。キッチンカーを出店している場所も駅前と近隣の大学なので、本当に西荻窪の地域との関わりがあってこそですね。

「近所の子どもたちからもらった手紙は宝物です」と松岡さん

――店舗運営だけでなく、シェアスペースの運営やイベント企画まで! 本当にさまざまな形で地域に関わられているのですね。そうした西荻窪と強いつながりを持つガネーシャガルですが、今後お店をどんな風に成長させていきたいですか?

松岡さん:途中で西荻窪以外の場所にお店を出したこともあるんですが、やっぱり西荻窪という土地には特別なものを感じていて。なので、この場所は大切にしていきたいですね。地域や商店街、ご近所のお客さまとのつながりを大切に、これからも西荻窪を盛り上げていきたいです。

あとは23年もお店をやっているとコックさんたちも年を重ねてきていて、彼らの子どもも成長し、日本で仕事をするまでになっています。下北沢に姉妹店があるんですが、そこはコックの子どもがやってくれていて。そういう形で、彼らの活動の後押しもしていきたいですね。

気になるあのお店のLINE公式アカウント活用事例

新宿で行列をつくるスープカレー店「東京ドミニカ」のLINE戦略。常連客を生むアイデア力、寄り添い力

▶記事を読む

 

新宿で60年続く老舗バー「イーグル」がLINE活用に力を入れるワケ。「時代は我々を待ってくれない」

▶記事を読む

 

【取材先】
ガネーシャガル 西荻窪店
住所:東京都杉並区上荻4-4-1
TEL:03-5382-9441
営業時間:11:30〜14:30、17:00〜23:00
定休日:無休
HP:https://ganesha0.com/
Instagram:@ganesha__ghar

取材・文/花沢亜衣
東京生まれ。食や暮らしにまつわるジャンルを中心にWEBメディア・雑誌で編集や執筆を行う。三度の飯より食べることが好き。一番好きなお酒は青空の下で飲むお酒。2023年J.S.A.ワインエキスパート呼称資格取得。2025年5月に酔談録『二軒目は路面店』を発売。
Instagram:@aipon79

写真:佐坂和也
編集:はてな編集部