
中国各地の料理を紹介する「ガチ中華」の先駆けとして、本格的な四川料理を日本に伝えてきた『陳家私菜』に、LINE公式アカウントの活用方法を伺いました。
1995年に東京・赤坂で開業して以来、日本では珍しい本場の香辛料と調理法にこだわり、四川料理ブームの先駆けとなった『陳家私菜(ちんかしさい)』。
石鍋で提供する麻婆豆腐、刀削麺、よだれ鶏など今ではお馴染みの激辛メニューを他店に先駆け日本で提供した店としても知られる同店で、中華好き、激辛好きなお客さんとの関係構築に欠かせないツールとなっているのが「LINE公式アカウント」です。
今回はオーナーの陳龐湧(ちん・ばんゆう)さんに、ファンをつないで離さないための味づくりと、LINE公式アカウントを使ったコミュニケーション術について伺いました。

- 陳龐湧さん
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『陳家私菜』オーナー。1988年、25歳で来日し、「グランドプリンスホテル新高輪『古稀殿』」や「ヒルトン東京」にて7年間修行。95年、赤坂に第1号店『中国家庭菜 湧の台所』をオープンし、現在では、中国料理『陳家私菜』を都内に8店舗運営している。
「なんで中国よりおいしいの?」 寅さんを愛するオーナーが生み出す、日本と四川のマリアージュ料理
――お店の歴史について教えてください。
陳さん:1995年、赤坂に1号店をオープンしました。当時は現地の香辛料を日本で手に入れるのが難しかったのですが、それでも本場の味をそのまま再現したいと考えていました。現地の花椒(ホアジャオ)や唐辛子を使った料理は辛さと香りが違いますから、それを食べていただきたいと。
だからオープンした頃は、お客さんに「辛くて食べられない」と言われることもありましたね。
――であれば、『陳家私菜』の料理の特徴はやはり「辛さ」なのでしょうか?
陳さん:辛さだけではありません。唐辛子は香りを出すもの、辛さを出すもの、色を出すもので使い分けていますからね。
それに、日本の素晴らしい食材を生かすことも重視しています。大山鶏や黒毛和牛といった肉をふんだんに使うので、四川や中国のお客さまから「なんで中国よりおいしいの?」と言われることもありますよ(笑)。
うちのメニューは、中国の香辛料と日本の食材をコラボレーションさせた「奥深い料理」なんです。

――四川料理というと「辛い」というイメージが先行してしまいますが、素材も調理法もすごくこだわっているんですね。そういえば、石鍋の器で提供する麻婆豆腐は『陳家私菜』が発祥なんですよね?
陳さん:そうですね。麻婆豆腐を石鍋で提供するスタイルは中国でも見当たらないので、世界初だと思いますよ。
麻婆豆腐をどうしたら最後まで冷めずに食べられるかを考えて、たどり着いたのが石鍋でした。
――辛いけれど奥深い「ガチ四川」の魅力をお客さんに伝えるために、どんなことを工夫されていますか?
陳さん:現地の味を守りながらも、日本人の味覚に寄り添うことも意識しています。四川料理ならではの辛さや、食材の旨味、香りなどは正しく伝えたいので、今も試行錯誤していますね。
あと、料理の値段は、できるだけ高くなりすぎないようにしています。実は私、『男はつらいよ』の主人公・寅さんが大好きで、日本に来るきっかけも寅さんでした。寅さんは、人情を大切にして、町で暮らす人たちに寄り添うような人物ですよね。私もそういう姿に惹かれて日本に来たので、料理も同じように、できるだけ多くの方に寄り添うものでありたいと思っています。だからこそ、本物の素材を使った本格四川料理を、特別な人だけのものにするのではなく、多くのお客さまに楽しんでいただきたいんです。良い食材を使えば原価もかかりますが、その中でも値段をできるだけ抑え、お客さまに納得していただける料理を提供できるよう、これからも企業努力を続けていきたいと考えています。
女性客が過半数。お客さんを飽きさせないためのイベント、LINEの活用術
――どういうお客さんが多いんでしょうか?
陳さん:やはり常連さんでしょうか。その常連さんがお客さまを呼んでくださり、また常連となってくれるということが多いです。
あと、女性客の割合が多くて、全体の70〜80%が女性です。たいてい4〜5人のグループで来られるのですが、みなさんいろいろな料理を食べてくださり、おいしいと感じていただけると宣伝してくれるのでありがたいですね。
――女性客7〜8割はすごいですね。女性客に来てもらうために何か工夫はされているのでしょうか?
陳さん:女性客ならではの工夫は特にないのですが、常にメニューを変えたり、新しい料理を出したりして、飽きさせないことは意識しています。
あとは、四川フェスや激辛グランプリなどのイベントに積極的に出店することでしょうか。そういうイベントに出店すると新しいお客さまに知っていただけますから。
――LINE公式アカウントを始めた理由も、新しいお客さんにお店を知ってもらいたいからなのでしょうか?
陳さん:LINE公式アカウントはどちらかというと、一度ご来店いただいたお客さまに再来店を促すツールとして導入しました。やはり飲食店の経営にとって、再来店してくださるお客さまの存在は重要です。そうしたお客さまに届くよう、新メニューやイベント情報をLINEで伝えています。
ありがたいことに、配信後に「LINEを見て来ました」と声をかけていただくことも多く、しっかり再来店の動機をつくれていると手応えを感じています。

――LINE公式アカウントの配信内容はどのように考えられていますか? 画像、文面、頻度、デザイン、内容についてそれぞれ教えてください
陳さん:単に情報をお届けするだけではなく、ご来店やイベント参加への導線にすることを意識しています。
当店では、「ファンの集い」という通常営業では出会えない料理や、その日だけの特別な一皿を囲みながら、陳家私菜を愛する皆さまと一緒に過ごす特別なイベントも大切にしているので、LINEでスタッフの熱量やイベントの魅力をしっかり伝えたい。そこから、詳細を確認できるWebサイトへ自然につなげるようにしています。
――InstagramやYouTubeなどはどのような目的で運用されていますか?
陳さん:その2つは、まだうちを知らない方に「こんなおいしそうな料理があるんだ!」と知っていただく、いわばお店の世界観を広める場です。
――YouTubeチャンネルは精力的に更新されていますね。おいしそうな料理の動画がたくさん上がっています。反響などはいかがでしょうか?
陳さん:YouTubeは、写真や短い文章だけでは伝えきれない料理の魅力や技術、こだわり、店やシェフの人柄まで深く伝えられる点に大きな価値を感じています。実際に、動画をきっかけに興味を持ってくださる方や、お店や料理への理解が深まったという反応もいただいています。
特に陳家私菜では、四川料理の奥深さや本格性、調理の臨場感を伝えることが大事だと考えており、YouTubeはそのために非常に相性がよい媒体です。単なる宣伝ではなく、ブランドや料理への理解と信頼を積み上げるための発信として注力しています。
――今は動画経由でお店の情報をキャッチするお客さんも多いので、陳家私菜さんの動画を見て、本場の四川料理に興味を持つ方も今後増えてくるでしょうね。
陳さん:そうであれば非常にうれしく思います。これからも私たちは、日本で流行る中華料理を提供するのではなく、常に四川の最先端を伝える店でありたいと思っています。またすぐ四川に行く予定がありますが、そこで新しいものを見つけてくるので、ぜひ楽しみにしていてください。

気になるあのお店のLINE公式アカウント活用事例
【取材先】
陳家私菜 新宿店
住所:東京都渋谷区代々木2-15-9 加瀬ビル 1F
営業時間:[平日]ランチ 11:30-15:00、ディナー 17:30-23:00/[土日]ランチ 11:30-15:00、ディナー 17:30-21:30
HP:https://chin-z.com/
Instagram:@chinkashisai2021
取材・文/花沢亜衣
東京生まれ。食や暮らしにまつわるジャンルを中心にWEBメディア・雑誌で編集や執筆を行う。三度の飯より食べることが好き。一番好きなお酒は青空の下で飲むお酒。2023年J.S.A.ワインエキスパート呼称資格取得。2025年5月に酔談録『二軒目は路面店』を発売。
Instagram:@aipon79
写真:是枝右恭
編集:はてな編集部


