横浜・伊勢佐木町のスープカリー店「アルペンジロー」に学ぶ、 常連客を離さないLINE戦略と行列を華麗にさばく接客術

横浜で40年近く営業を続けるスープカリー専門店「アルペンジロー」に、LINE公式アカウントの活用方法を伺いました。


横浜・伊勢佐木町に本店を置くアルペンジロー。溶岩石と炭火でワイルドに焼かれた肉とさらさらのルーが特徴的な、唯一無二のカリーを提供し続けています。

そんな同店は、リピーターづくりのためにLINE公式アカウントを活用しています。

導入の背景から具体的な活用方法、そして地域密着店ならではの集客戦略について、店長の北川陽一さんに伺いました。

北川陽一さんプロフィール写真

北川陽一さん

アルペンジロー店長。

40年受け継がれる「さらさらルー」の秘密

――まず、アルペンジローさんの特徴やコンセプトについて教えてください。

北川さん:炭火で焼いた大ぶりの肉とスープカリーを、山小屋をモチーフにした店内でお楽しみいただけるお店です。

創業者は尾瀬でロッジを経営していた二郎さんという方で、1985年、横浜に来てお店をつくりました。その後、1年ほど試行錯誤して、北海道のスープカレーとは異なる「スープカリー」のレシピを編み出しました。

現在はウェディングプロデュースを手がける横浜の会社がお店を運営していますが、スープカリーのルーは基本的に当時の味を受け継いでいます。

――カレーではなく、カリーと呼んでいるのもこだわりなのでしょうか?

北川さん:そうですね。インドでは本格的で高級感のある料理を「カリー」と呼ぶようで、それにあやかって、うちも本格的なスープカリーを作ろうという思いが込められています。

――こだわりのルーについて、もう少し特徴を教えてください。

北川さん:1週間かけて作っていますね。仕上げにお客さまがお肉を切って肉汁を入れることで完成するため具材ごとに違った味わいに仕上げる、などいくつかコツがあります。

看板メニューの「アルペンジロー鶏」。静岡・朝霧高原の契約生産者から仕入れた鶏肉を「皮パリ」に焼き上げてトッピングする

――オーダー時に指定できる辛さを「山の高さ」にたとえているのも面白いですよね。

「野毛山」から「天国」まで、6種類の辛さが選べる

北川さん:オーナーがもともと山でロッジを営んでいたので、そのつながりで遊び心とともに命名しています。一番マイルドな甘口は本店近くにある野毛山(編注:野毛町近辺の丘陵に付けられた通称)、スタンダードが富士山、キリマンジャロ、アイガー、エベレストと続き、特級はもはや山ではなく天国となっています。

お客さんに不満を抱かせない「行列のさばき方」

――2026年5月現在、店舗は本店と元住吉店の2店舗ですが、客層に違いはありますか?

北川さん:本店は40年近い歴史があるので、近所にお住まいの常連さまが中心です。

ただ、週末になると一見のお客さまや遠方からのお客さまが増えて、全体の割合も半々ぐらいになります。食べログ 百名店に2022年から選ばれていることもあり、ネット検索で見つけてくださることが多いようです。過去には札幌からのお客さまもいらっしゃいました。

とはいえ、近隣と比べて飲食店が少ないエリアなので、私たちの店を目掛けていらっしゃるお客さまが多い印象です。

横浜・伊勢佐木町の本店

元住吉店は開店してまだ3年目なので、常連さまはそこまで多くありません。近所にお住まいの方がご自宅へ帰る途中に寄り、気に入ったらまた来ていただく、というパターンがほとんどですね。

川崎市にある元住吉店

年齢層は本店のほうがやや高く、40代から60代の方がメイン。ご家族やグループのお客さまも多いです。元住吉店は老若男女という感じでしょうか。

――集客は創業当初から順調だったのでしょうか?

北川さん:必ずしも順調というわけではなかったと聞いています。実際、8年前に私がお店で働くようになった頃は、夜のお客さまがほとんどいませんでした

当時は「パラレルコース」という名の、スキー場をコンセプトにしたコース料理がありまして、これがほとんど出ないし、認知もされていなかったのです。

その後、試作と改良を繰り返す中で、コース料理を廃止してセットメニューを設けるなどメニューの内容を大幅に刷新しました。

クラフトビールの流行に合わせて、カリーと合うビールの提供も始めています。

あとは、本店近くに本拠地を構える横浜DeNAベイスターズの『I☆YOKOHAMA』プロジェクトの一環としてベイスターズのホームページに「近隣の飲食店」として掲載していただいていまして、ファンクラブの方や試合のチケット半券を持ってきた方に何かしらの特典をプレゼントするという取り組みもしています。

そうした施策の効果も出て、集客が徐々に改善していきました。

――地道なアクションが繁盛店への道をつくったのですね。今や本店は週末に行列ができることもあると伺いました。行列を効率よくさばくための工夫はあるのでしょうか?

北川さん:空いている席すべてにお客さまをご案内するのではなく、店内のオペレーションを鑑みてご案内のタイミングを調整しています

例えば、4組分の席が空いたとします。席数分のお客さまを同じタイミングでご案内した場合、厨房は一度に多くの料理を作らなければならず、最後にオーダーを通したお客さまは20〜30分も料理の到着を待たなくてはなりません。

だからまずは2組ご案内し、厨房が料理を作り始め、調理がある程度落ち着いたところでもう2組を案内する。そうすると、注文から15分程度で全員分の料理をお出しできるので、印象が大きく変わりますよね。

外で長時間お待ちいただくのは大変心苦しいのですが、「料理が全然出てこない」という状態にはならないよう、ご案内のタイミングから意識しています。

「ごはん大盛り無料」のクーポンが効果的な理由

――2020年にLINE公式アカウントを始めたきっかけを教えてください。

北川さん:「クーポンをやりたい」と思ったのがきっかけです。紙のスタンプカードは捨てられたり見られなかったりすることも多いのですが、LINEであれば通知も届きやすく、見やすく、紙代もかかりません。「今月こんなのがあるんだ、行ってみよう」と思ってもらいやすいのではないかと。

――現在のLINE活用方法について教えてください。

北川さん:クーポンの配信に力を入れています。

配信のタイミングは、毎月25日と月末の計2回です。前者は毎月26日の「ジローの日」に使える、アラカルトメニューが半額になるクーポン。

後者は翌月いっぱい使える「ライス大盛り無料」のクーポン(翌月のおすすめカリーのお知らせを添付)です。

頻繁にクーポンが届きすぎても飽きられてしまうので、「アルペンジロー、久しぶりだな」と思ってもらえるぐらいの頻度を心がけています。

また、午前中に配信するお店も多いと思うのですが、うちは大体夜7時頃を目処に配信しています。これは、配信を見た翌日にご来店いただくことを想定しているからです。ご自宅へ帰られた時間にふと見て「明日食べようかな」と思っていただける。そんなイメージですね。

――なぜクーポンの内容が「ごはん大盛り無料」なのでしょうか?

北川さん:過去に付け合わせのサラダやラッシーをプレゼントするクーポンも配信したことがあるのですが、利用率が上がらず、売り上げにもつながりませんでした。なぜなら、これらはカリーを食べたくなるものではなく、お客さまが望んで注文するタイプのものでもないからです。

一方の「ごはん大盛り」はカリーを食べたくなるオプションですし、「通常プラス100円のところクーポン利用で何度でも無料になる」といった条件もあるので、ニーズも高いです。今はお米も値上がっていたりしているので。女性のお客さまも大盛りにされる方は多いですね。

――メインメニューのカリーにどう紐づけるかがカギなんですね。「ジローの日」のアラカルトメニュー半額クーポンも利用率は好調でしょうか?

北川さん:そうですね。普段アラカルトを食べない方も4、5種類ご注文してくださいますし、この日を狙って毎月来てくださる方もいらっしゃいます。

アラカルトメニューの認知度を上げることにもつながっていると思います。

――クーポン以外の配信内容はどのように作成しているのでしょうか? メニューの紹介文がとても丁寧ですよね。

北川さん:本部に担当者がいるので、「今月はこのメニューを紹介したい」というのを店舗から連携し、相談しながら決めています。

実は投稿する人物のキャラクター設定も決まっているんですよ。「山が好きな30〜40代が投稿するような文面」を意識しています。絵文字のルールもあって、若い人にウケるから使ってOK、この絵文字は使わない方がいいといった形で細かく決めています。

――運用ルールもユニークですね。こうした細やかな工夫が顧客満足度につながっているのだなと感じました。最後に、今後のお店の展望について教えてください。

北川さん:まずは今のお客さまを大切にしつつ、そのお客さまが新しいお客さまを呼んでいただけるようなお店にしていきたいなと。

商店街のお祭りに出るなど、これからも地域の中で育っていくカリー屋さんでありたいと考えています。

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【取材先】
アルペンジロー元住吉店
住所:神奈川県川崎市中原区木月2-4-6
営業時間:11:30-15:00(LO 14:30)、17:00-21:00(LO 20:00)
月曜定休(月曜祝日の場合、翌火曜休み)
TEL:044-948-4750
HP:https://www.alpinjiro.jp/
Instagram:https://www.instagram.com/alpin_jiro/

 取材・文/花沢亜衣
東京生まれ。食や暮らしにまつわるジャンルを中心にWEBメディア・雑誌で編集や執筆を行う。三度の飯より食べることが好き。一番好きなお酒は青空の下で飲むお酒。2023年J.S.A.ワインエキスパート呼称資格取得。2025年5月に酔談録『二軒目は路面店』を発売。
Instagram:@aipon79

写真:佐坂和也
編集:はてな編集部

※記事の一部について、6月8日(月)18:00ごろ修正しました。