飲食店の開業に必要な資金・資格とは。成功のポイントも紹介

飲食店の女性店員が、お店の扉に「OPEN」の札をかけるイラスト

いつかは自分がつくる料理をたくさんの人に食べてもらいたいという夢を持ち、「飲食店を開業したい」と考えている人もいるでしょう。

しかし、飲食店を開業するためにはどのような手順が必要で、どのような資格が必要なのか分からず、不安や疑問を抱いている人もいるかもしれません。

初めての飲食店開業でも取り組みやすい小規模な飲食店(10~15坪・席数10席程度)の例を中心に、飲食店を開業するために必要な資格や届出・必要な資金額について解説します。さらに、開業後に実践したい集客方法も紹介します。

こんな人におすすめ

  • 小規模な飲食店を開業したいと考えている人
  • 飲食店を開業するための流れ、必要な資格・資金が知りたい人
  • 飲食店を開業後、成功させるためのコツを知りたい人

飲食店開業の流れ

飲食店の女性店員が、お店の扉に「OPEN」の札をかける写真

飲食店を開業する際の簡単な流れについて説明します。

まずはお店を開業する場所を決め、自治体が定めた施設基準に合致した施設をつくり、保健所で営業許可を取得します。保健所の担当者が施設検査を行い、基準に達していれば営業許可が交付されます。

地域や時期によってかかる日数が変わるため、お店をオープンしたいと思ったら地域の情報を事前に確認し、早めに申請を行うと良いでしょう。

  1. お店を開業する場所を決める
  2. 自治体への事前相談……お店を開業する場所と着工を決めたら、自治体の保健所に事前相談をしましょう。お店が飲食店営業の基準に合致しているか、工事の着手前に図面などの確認を行います。
  3. 営業許可申請……お店の完成日の約10日前までに、保健所へ必要書類を提出します。地域や時期によってかかる日数が変わります。事前に自治体の情報を確認し、早めに申請を行いましょう。
  4. 施設検査……お店が申請の通りか、施設基準に達しているかの確認を保健所の担当者が行います。
  5. 営業許可書交付……お店が基準に達していたら、営業許可書が交付されます。交付には数日かかります。
  6. 営業開始

参考:

新しく営業するときの手続きの流れ 東京都福祉保健局 食品衛生の窓
飲食店等の食品衛生法に基づく営業許可 大阪市
食品取扱施設 営業許可 名古屋市

飲食店の開業に必要な資格

飲食店を開業するにあたって必要な資格は主に2つあります。

飲食店の経営には調理師免許が必要と思われがちですが、そうではありません。必要な資格や免許は変更になる可能性があるので、事前に確認を行いましょう。

1. 食品衛生責任者

飲食店の開業のために、店舗には「食品衛生責任者」が1人必要です。営業者(店舗経営者、お店の責任者)と協力して、お店で提供する食品の安全確保に努める役割を果たします。

食品衛生責任者の資格取得費用は自治体により異なりますが、1万円程度・6時間ほどで取得可能です。オンラインで講習を開いている自治体もあります。

調理師免許や栄養士免許などの特定の資格を持っていれば、講習が免除となる場合も。詳細は自治体の保健所に確認しましょう。

参考:一般社団法人東京都食品衛生協会|食品衛生責任者について

2. 防火管理者

もし開業するお店で30人以上収容する可能性がある場合は、店舗に「防火管理者」の資格を持つ人が1人必要です。飲食店では一般家庭よりも火器を多く取り扱うことがあるため、火事を未然に防ぐための管理を行います。

「甲種」と「乙種」の2種類があり、どちらも日本防火・防災協会が開催している講習を受講することで取得できます。店舗面積が延べ300平方メートル以上であれば甲種、300平方メートル未満の場合は乙種または甲種を取得しましょう。

費用は甲種の新規取得講習が8,000円、乙種・及び甲種の再講習はともに7,000円かかります(テキスト、修了証、その他の諸経費を含む/税込み)。甲種は2日間、乙種は1日で取得することが可能です。

参考:一般財団法人 日本防火・防災協会 防火・防災管理講習

飲食店の開業のために必要な届出

飲食店の開業のためには、さまざまな手続きが必要です。業態によって必要なものが異なり、届出先や期限も違うため、自店舗に必要な書類を早めに整理しておきましょう。
必要な届出が不明な場合は、自治体の保健所に相談しましょう。

届出

届出先

対象の営業形態

届出時期

食品営業許可申請 保健所 全店舗 店舗完成の10日前まで
防火管理者選任届 消防署 収容人数30人以上の店舗 営業開始まで
防火対象設備使用開始届 消防署 建物を店舗で使用する場合 店舗使用開始7日前まで
火を使用する設備等の設置届 消防署 火を使用する店舗 設備設置前まで
個人事業の開業届 税務署 個人で開業する場合 開業日から1カ月以内
労災保険の加入手続き 労働基準監督署 従業員を雇う場合 雇用日の翌日から10日以内
雇用保険の加入手続き 公共職業安定所 従業員を雇う場合
(1週間の所定労働時間が 20 時間以上。31日以上の雇用する場合のみ)
雇った月または被保険者になった月の翌月10日以内
社会保険の加入手続き 社会保険事務所 法人の場合は加入必須
(個人の場合は任意)
可能な限り早く
(雇用開始から5日が目安)

その他必要な届け出

上記の他にも、提供するサービスにより必要となる届出があります。例えば、店舗で作ったクッキーやケーキなどのお菓子をテイクアウト商品として販売する場合は、保健所に「菓子製造業許可」の届出が必要です。

また、深夜12時以降にアルコールを提供する場合は「深夜酒類提供飲食店開業開始届出書」を、スナックのように接待行為を行う場合は「風俗営業許可申請」を所轄の警察署に提出します。

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飲食店の開業に必要な資金はどれくらい?

飲食店の開業には、どれくらいの資金が必要なのでしょうか。まずは、どのくらいの大きさの飲食店を開きたいか考えてみましょう。

お店の大きさに比例して物件取得費・改装費などの初期費用は膨らんでいくため、初めての飲食店であれば小規模な飲食店を目指すと良いでしょう。大きさのイメージはそれぞれ異なりますが、10〜15坪のお店だと小規模と感じる方が多いようです。1坪=約3.3㎡ですので、10坪=約33㎡です。

席数については、どのような雰囲気の飲食店にしたいか、カウンター・テーブルのどちらを設置するかによって変わります。

テーブルの場合の席数は1坪あたり2〜2.5席が一般的。1坪あたり約3.3㎡に対し、2人席で多く用いられる75cm×60cmのテーブルを設置し、幅44cmのイスを2脚設置するイメージです。

カウンターは1人あたりに必要な机の幅は60cmといわれてるため、テーブルと比較して席数は多くなります。

お店の大きさがイメージできたら、そこから資金を算出していきます。ちなみに、事業融資を行う日本政策金融公庫の新規開業実態調査(※PDFが開きます)によると、2020年度開業費用の平均額は989万円でした。

具体的な開業資金としては以下の4種類が挙げられます。

  1. 物件取得費用
  2. 店舗投資費用
  3. 運転資金
  4. 生活費

1. 物件取得費用

物件を取得する際に必要な資金を「物件取得費」といいます。物件には、それ以前も飲食店として使われ、設備等がある程度揃っている「居抜き物件」と、コンクリートや配管がむき出しで店舗として整っていない状態の「スケルトン物件」があります。費用を抑えたいのであれば居抜き物件を選ぶのも1つの方法です。

ただし、物件によっては、前の事業者に対して残された設備や什器などを買い取る「造作譲渡費」を支払う必要があります。造作譲渡費はその物件の立地や集客、業種によって変わってきます。

物件取得費として用意しておきたい金額と、その内訳は下記です。物件によって状況が異なるため、下記はあくまで一例です。

【家賃10万円の物件の場合】

保証金 家賃10カ月分 100万円
礼金 家賃1カ月分 10万円
仲介手数料 家賃1カ月分 10万円
前家賃 家賃1カ月分+日割り 10万円+日割り分
合計   約130万円

2. 店舗投資費用

店舗投資費用とは、お店を営業可能に整えるための費用のことです。スケルトン物件の場合、店舗内装設備がないため内装については一から設計しなければなりません。

日本政策金融公庫が2012年に発行した『創業の手引き+』(※PDFが開きます)によると、内外装工事費は368万円、機械・什器・備品等は186万円が平均値とされています。

どのようなお店にするか、どの業者に依頼するかによって金額が異なるため、複数の業者に見積もりを取って比較・検討しましょう。

店舗投資費用の内訳

どのような費用か

 

内外装工事費 看板等の外装や、壁・床・電気・水回り・インテリアなどの内装の設計や工事
厨房機器費 調理台・シンク・ガス台・冷蔵庫・オーブン等
備品 食器・調理器具・ユニフォーム等

3. 運転資金

飲食店を開業しても、すぐに売上が安定するとは限りません。前述した日本政策金融公庫の『創業の手引き+』によると、飲食店が開業後、軌道に乗るまでは6カ月かかるといわれています。

上記を参考にすると、運転資金は最低でも6カ月分は用意しておくと良いでしょう。仮に家賃10万円、仕入れや水道光熱費といった諸経費10万円、給与30万円(経営者自身・一人分)だとすると、1カ月にかかる費用は50万円です。従って、運転資金は約300万円用意しておくのが理想的です。

4. 生活費

飲食店を開業しても、しばらくは売上が安定しないかもしれません。経営が安定するまでの間、自分の生活費は余裕を持って準備しておくと安心できます。運転資金と同様、6カ月分あると良いでしょう。

事業計画と資金調達、補助金

「ビジネスプラン」と書かれたメモ帳に何かを書き込む男性の写真

飲食店の開業には比較的大きな初期費用がかかるため、必要な資金を全て自分で用意できない場合は、さまざまな方法でお金を調達する必要があります。

ここでは、飲食店開業にあたって利用できる、いくつかの資金調達手段を紹介します。

  1. 事業計画書
  2. 資金調達
  3. 補助金

1. 事業計画書

まずは資金調達の準備として、事業計画書を作成しましょう。事業計画書は自分の経営を客観視できるだけでなく、融資を依頼する側にも具体的な事業のイメージを伝えるために必要です。

開業予定にあたっての必要資金を算出します。家賃・水道光熱費・人件費・仕入れ・その他費用など、具体的に1カ月あたりどれだけの費用がかかるか考えてみましょう。

さらに、費用を引いても利益が出る売上を立て、そこから目標の客数を割り出します。目標の客数を実現するためにはどの立地にお店を開業するのが理想的か、後述のコンセプトも併せて検討しましょう。

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2. 資金調達

開業しておらず実績がないお店は、銀行などから融資を受けることが難しくなります。そのため、事業に取り組む人々を支援する政策金融機関の「日本政策金融公庫」を利用することになります。

日本政策金融公庫に融資を申請するためには、事業計画書の提出が必要です。事業計画書では、経営者としての能力が備わっているか、実現可能で的確なビジネスプランかどうかが判断されます。自己資金の有無も確認されるので、用意しておきましょう。
日本政策金融公庫によれば、創業資金に占める自己資金の目安は3割程度となっています。

3. 補助金

飲食店を開業する場合、国や自治体、関連団体が支援する補助金を利用できる場合があります。補助金は開業前でも申し込むことができること、返済不要の場合が多いなどのメリットがあります。

下記に紹介する以外にもさまざまなものがあるため、自店舗に該当する補助金があるかを調べてみましょう。

地域創造的起業補助金(通称:創業補助金)

該当する地域で新たに創業する企業に対して、50~200万円を上限として創業を応援する補助金です。公募期間は1年に1度、公募期間が1カ月弱と期間が短い場合があるので、検討している場合は早めに準備を行いましょう。

参考:地域創造的起業補助金

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者が事業継続のために必要な取り組みを支援する補助金です。受給が認められると、50~200万円を上限として経費の一部が支給されます。この補助金の申請日よりも開業日が後になる場合は対象外です。

参考:日本商工会議所

事業再構築補助金

新型コロナウイルス感染症拡大の影響により厳しくなった業況を転換したい事業者、感染防止に取り組む事業者に対する補助金です。事業を拡大させることに重きを置いており、飲食店の事業者も利用しやすい制度となっています。オンラインショップやテイクアウトを導入するなど、感染症対策に有効だと考えられるサービスに取り組む場合などが対象です。

申請のためには2020年4月以降6カ月以上のうち、任意の3カ月間の合計売上高がコロナ禍以前より10%以上減少している実績を提出する必要があります。

参考:中小企業庁

飲食店を成功させるためにしておきたい3つのポイント

おしゃれなレストランのテーブルに、水の入ったグラスやお皿、カトラリーが並んでいる写真

飲食店の運営を成功させるために、開業前にしっかりと計画を立てましょう。開業後の成功につなげるために取り組みたいポイントを3つ紹介します。

  1. 飲食店のコンセプトをはっきりさせる
  2. 資金を調達するより前に物件を探しておく
  3. 開業後、どのような集客を行うか具体的に考えておく

1. 飲食店のコンセプトをはっきりさせる

開業予定の飲食店をどのようなお店にするか、コンセプトを明確にしておくことが大切です。コンセプトを決めるとイメージがぶれにくく、お店の魅力や強みを意識しながらお店づくりができます。

お客さんに対してもアピールしやすくなり、お客さん側もお店の雰囲気がイメージしやすく安心できるので、口コミで広がりやすくなります。コンセプトを気に入ってくれれば、再来店にもつながるでしょう。

コンセプトを考えるときは、お店の名前・内装・立地・価値・営業時間・スタッフの人数なども含めて検討しましょう。

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2. 資金を調達するより前に物件を探しておく

飲食店を開業する場合、物件は開業予定の8〜10カ月前には契約を済ませておくのが良いでしょう。資金調達で融資を受ける際に提出する事業計画書に必要だからです。事業計画書の中には家賃や出店エリア、業種を書く項目があり、その内容によって融資を受けられるかどうかが決まります。

3. 開業後、どのような集客を行うか具体的に考えておく

飲食店を成功させるには集客が重要で、多くの経営者が頭を悩ませる問題でもあります。どのような集客方法が効果的か、開業前から考えておくことが大切です。コンセプトや立地、客層によって効果的な集客方法も変わります。

集客にはチラシの配布やDM送信、ショップカード作成、クーポン配布といったさまざまな方法があります。LINE公式アカウントでは、これらの集客に効果的な機能がたくさん備わっています。LINE公式アカウントは無料で開設することができるので、まずは試してみるのがおすすめです。

LINEは月間で9,500万人が利用しており(2023年6月末現在)、お客さんとお店どちらにもなじみがあるアプリです。LINE公式アカウントを利用すると、開業後の集客にも役立つでしょう。

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まとめ:小規模な飲食店を成功させるにはLINE公式アカウントの導入がおすすめ

飲食店を開業する際は、小規模であっても多くの手続きがあり、たくさんの費用がかかります。苦労して開業した飲食店を成功させるためには、オープン後のことも具体的にイメージしておくことが大切です。あらかじめ集客方法も考えておきましょう。

集客の1つの方法としてLINE公式アカウントの活用がおすすめです。無料で開設できるので初期費用を抑えることができます。LINE公式アカウントを使って効果的な集客を行いましょう。

イラスト/つのがい