東京・青山通り沿いの徒歩圏内に3店舗を構えるとり料理専門店「ひごの屋」。LINE公式アカウントのクーポンやくじ引き、メッセージ配信を巧みに活用し、お客さまの来店機会を増やしています。代表取締役社長の長谷場大亮さんに、お店づくりについて伺いました。
一度ならず、何度も足を運んでくれる「おなじみ」のお客さんは、飲食店にとって心強い存在です。多くの常連客の心をつかむお店は、どのような工夫をしているのでしょうか。「ひごの屋」は青山通り沿いの徒歩圏内に3店舗を構える、とり料理専門店です。岩手県から毎日直送される地鶏を使った焼き鳥をメインに、工夫を凝らした一品を用意。ホッと落ち着く空間になるよう、接客にも心を配ります。LINE公式アカウントでは半額クーポンやくじ引きを配信して来店機会を増やしつつ、クーポンの集中利用で品切れにならないよう、余裕を持った予約をメッセージ配信で促す工夫も。運営元の長谷場商事・代表取締役社長の長谷場大亮さんに、お店づくりについて伺いました。
- 長谷場大亮さん
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東京都生まれ。青山学院大学卒業後、大手ビールメーカーに入社し営業として4年間勤務。その後飲食店で修業を積み、2001年に家業である(株)長谷場商事に入社。取締役副社長を経て2018年に事業承継し、代表取締役社長に就任。「ひごの屋」3店舗を運営する。
- 新鮮な岩手県産地鶏を使った焼き鳥が人気。「ひごの屋」はどんなお店なのか
- 「ひごの屋」の立ち上げ当時について
- 「ひごの屋」の集客方法
- 「ひごの屋」のリピーターづくり
- これから「ひごの屋」をどんなお店にしていきたいか
新鮮な岩手県産地鶏を使った焼き鳥が人気。「ひごの屋」はどんなお店なのか
――「ひごの屋」はどのようなお店ですか?特徴を教えてください。
長谷場さん:「ひごの屋」は、1971年に創業したとり料理専門店です。青山本店ほか、表参道と外苑前に3店舗を構えており、いずれも岩手県二戸市の養鶏場から毎日届く新鮮な地鶏を使い、焼き鳥や唐揚げ、野菜串などを中心にお酒に合う一品を提供しています。もともとは私の両親が立ち上げたお店で、2代目として引き継ぎました。
――特に人気のメニューや売れ筋の料理、ドリンクはありますか?
長谷場さん:やはり、メインにしている焼き鳥がよく出ます。それ以外のメニューでは鶏ささみ肉を低温調理でじっくり加熱した「ささみのトロポン酢」が売れ筋です。10年以上前に提供を始めましたが不動の人気ですね。また、1日5食限定の「レバとろ」もすぐ完売する人気商品です。基本的にメニュー内容は固定ですが、野菜串は季節ごとに旬の食材も加えています。
ドリンクはビール、ホッピー、ハイボール、焼酎、カクテルなど定番のものを一通りそろえています。大きなジョッキで提供するメガサイズも好評です。
――お客さんはどのような方が多いですか? 客層や年齢層などを教えてください。
長谷場さん:メインのお客さまは30~40代で、男女比は6:4でどちらかというと男性が多いですね。それだけでなく、20代や60代以上の方も多くいらっしゃいます。
青山や表参道、外苑前というエリアは洗練されたおしゃれなお店が多いですが、当店は昔ながらの居酒屋の雰囲気を大切にしていることもあり、気取らずにホッとくつろぎたい方が来てくださいます。また、ご高齢の方の中には創業当時からごひいきにしてくださるお客さまもおられます。
「ひごの屋」の立ち上げ当時について
――「ひごの屋」は、どのような経緯で立ち上げられたのでしょうか?
長谷場さん:もともとは両親が青山で『ポニーカード』というスナックを開業したことから始まります。小さいお店だったのですが、予想以上に繁盛し、手狭になったので今の青山本店がある物件に移転したと聞いています。
規模が広くなったことで、スナックではなくしっかりとした料理を出そうと、『串焼き 肥後ばっ天』に業態変更しました。父の故郷である熊本の料理など、当時は九州の郷土色の強い一品や、地元の焼酎や地酒なども多くそろえていたそうです。今ほど物流が発達していない時期に「東京で熊本の酒が飲めるお店」として認知を広げ、最大で5店舗を運営していました。
――九州の郷土料理も提供する『串焼き 肥後ばっ天』から、岩手の地鶏を使った「ひごの屋」に変更されたのはなぜでしょうか?
長谷場さん:当時、『串焼き 肥後ばっ天』はフランチャイズ展開をしていましたが、ある時期に屋号ごと売却することになり、私たち直営店側は店名と業態を変えて再スタートを切りました。
また、熊本の酒蔵が閉鎖するなど、九州から取り寄せていたお酒や食材が手に入りにくくなってきたことも理由のひとつです。父も熊本を離れて年月がたち、僕自身は東京生まれですからツテがなくなってきたんですね。父が岩手で養鶏場を営む方と知り合ったことを機に、とり料理専門店に業態を変更しました。
――長谷場さんは2001年に家業に入られたと伺いましたが、それまでのご経歴を教えてください。
長谷場さん:大学卒業後にアサヒビールに入社し、営業職を4年程経験しました。仙台で飲食店まわりを担当していたのでいろいろなご縁ができ、「ひごの屋」でも仙台から地酒を仕入れていた時期もあります。その後、家業に入る前に飲食店での経験を積もうと、父の紹介で千葉県野田市にあるイタリア料理店『コメ・スタ』で半年ほど、接客をメインに携わりました。
――イタリアンなんですね。「ひごの屋」とはジャンルが異なりますが、どんな学びがありましたか?
長谷場さん:『コメ・スタ』は120席ほどある大きな店ですが、とても家庭的な雰囲気で、オーナーや社員だけでなくアルバイトまで、とにかくスタッフみんなが「あらゆるシーンでお客さんを喜ばせること」にベクトルを向けているんです。
例えば、誕生日の方には店内のグランドピアノで生演奏があり、全員でハッピーバースデーを歌ったり、週に1度プロのマジシャンを呼んで各テーブルでマジックを披露したり。テーブルクロスは模造紙でできていて、イタリア語で「ようこそ」と書いてあります。料理を待つ間、好きなように絵や文字を書いて遊べるので特にお子さんに人気でした。
僕は料理人出身ではないので、お客さまの立場に寄り添う接客に重点を置こうと思っていました。『コメ・スタ』では喜ばせようとする姿勢や空気感がすごく勉強になり、自分の店でも生かしたいと思いましたね。
その後「ひごの屋」で接客から調理までひととおりの仕事を経験し、外苑前店では長らく店長職に就いていました。副社長になってからは現場から一歩引いて経営面を学び、2018年に代表に就任しました。
「ひごの屋」の集客方法
――2代目社長として「ひごの屋」を継いだ後、新たに変えたところはありますか?
長谷場さん:売上データやレシピ、シフト表など、紙での管理をほぼ廃止し、全てスキャナで取り込んでデジタル化するようにしました。これらはクラウド上で管理しているので、外出先でも確認でき、各店スタッフ間でも共有しやすくなりました。
――効率よく店舗運営をするために工夫していることはありますか?
長谷場さん:1年程前から本格的にLINE公式アカウントの活用を始めました。プロフィールには営業時間や公式サイトへのリンクを付け、駅からお店までの徒歩ルートを掲載。リッチメニューにはWeb予約ページのほか、オンラインショップやInstagramへの導線を設置しました。
クーポンも多数活用しています。テーブルにはLINE公式アカウントのQRコードを置き、その場で友だち追加をすると利用できるワンドリンク無料のクーポンを配布。その他、お店を友だちに紹介すると特典として1,000円クーポンもお送りしています。
さらに、毎月1日には焼き鳥半額クーポンを、10日と20日は半額クーポンが当たる抽選付きクーポンを配布しています。グループのお客さまでも、おひとりがクーポンを持参してくださればそのテーブルは皆さん半額です。開封率は平均で80%と高く、来店数も増加しました。集客に一定の効果を上げていると思います。
ただ、予約が集中すると品切れになる場合があります。そのため「早めの時間の予約が確実です」とメッセージ配信でお知らせもしています。
――「ひごの屋」は3店舗ありますが、各店でLINE公式アカウントの使い分けはしていますか?
長谷場さん:最初に「ひごの屋」ブランドとして各店3店舗分、お弁当やテイクアウト専用のものと計4アカウントを作成しましたが、現在は主に「ひごの屋」ブランドとお弁当用の2アカウントを運用しています。
というのも、当店は3店舗とも徒歩圏内にあるので、お客さまによっては混雑具合や利用シーンで使い分けをしている方もいらっしゃるからです。その都度、アカウントを分けて利用していただくのは負担になると考え、ブランドアカウントに統一することにしました。
――半額クーポンはお客さまにとってはうれしいですが、お店にとっては売上への影響が大きいのではないでしょうか。
長谷場さん:以前は、毎週月曜日に終日焼き鳥半額セールを実施していたんですよ。これは来店されたお客さま全てが対象です。そちらはコロナ禍をきっかけに止めて、代わりにLINE公式アカウントでクーポン配布を始めました。
売上への影響は決して小さいわけではありませんが、お客さまには焼き鳥と一緒にドリンクや他の商品もご注文していただいています。また、金曜日は対象外とさせていただいていますので、トータルではプラスではないかと考えています。
ひごの屋のLINE公式アカウント活用方法をさらに知りたいなら
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詳しくは以下のページをどうぞ!
「ひごの屋」のリピーターづくり
――グルメサイトなどのクチコミを見ると「すごく居心地が良かった」「店長さんがとても良く気が付く人だった」など、接客に関する好意的な内容が多く見受けられます。お客さんと良い関係性を築くために、工夫していることはありますか?
長谷場さん:常に「お客さまに喜んでいただけるお店でありたい」と考えてきたので、そういったお声は本当にうれしいですね。今のところ、常連さんは3~4割程度です。お客さまへのお声がけは積極的にしていこうというスタンスを伝えるくらいで、厳密な接客マニュアルを用意しているわけではありません。スタッフ同士のミーティングや雑談レベルで「こういう接客はうれしいよね」などと話す程度で、後はそれぞれのスタッフの裁量に任せています。
しいていえば、社員の勤務年数が長いことが挙げられるでしょうか。当店では10年~20年選手が多く、目指したい接客の形を共有できているのだと思います。
父は僕よりも接客についての想いが強かったですね。お店を立ち上げるスタート地点が「地方から上京し、東京で頑張っている人をひとときでも安心させたい」なので、おもてなしやねぎらいの気持ちがお店全体に根付いているのではないでしょうか。実際に、スタッフはちょっとしたことでもお客さまに話しかけて、会話をつなげていますね。
現在は人手不足もあって、アルバイトはほとんど外国人スタッフです。日本語でのコミュニケーションに支障はありませんが、文化の違いもあり、十分な接客ができているかどうかはいつも気にしています。
――お客さまにお声がけをする時に、気を付けている点はありますか?
長谷場さん:丁寧な接客はもちろん大切ですが、当店は居酒屋業態なので、あえて少し敬語を崩したようなフランクな会話を意識しています。
かしこまり過ぎず、軽口を言い合えるような仲になれると、お客さまとの距離が縮まることが多いんですよ。転勤のご挨拶をわざわざお店にまで言いに来てくださるお客さまもいますし、引っ越したお客さまが東京に来た際に顔を出してくださる場合もあります。今の時代、そうした関係性を築けるお店が減ってきていると思っているので、大切にしていきたいですね。
これから「ひごの屋」をどんなお店にしていきたいか
――今後お店をどんなふうに成長させていきたいか、考えていることがあれば教えてください。
長谷場さん:今ちょうど、お店の体制づくりにメスを入れているところです。これまでは3店舗それぞれに社員2人を置き、あとはアルバイトスタッフで運営していましたが、現在は各店に店長のみ、後はアルバイトスタッフという形にしています。
というのも、店長は日々の業務に手いっぱいで、SNS運用や販促業務に回せる余裕がないからです。これまで店舗に出ていた社員3人はサポート部隊とし、各店のヘルプやSNS運用など半歩下がった位置で裏方業務をメインに行います。
いま、少しずつオペレーションがうまく回るようになってきているところです。店長には現場のことだけに集中できる環境を整えたい。少しでも負担を減らし、より良いお店づくりにつなげていきたいですね。
気になるあのお店の集客成功事例
【取材先】
ひごの屋 青山本店
住所:東京都港区北青山3-12-7カプリース青山2F
Web:ひごの屋 公式サイト
Facebook:ひごの屋青山本店 Facebook
Twitter:ひごの屋 公式X
Instagram:ひごの屋青山本店 Instagram
取材・文/田窪 綾
調理師免許を持つフリーライター。惣菜店やレストランで8年ほど勤務経験あり。食分野を中心に、Webや雑誌で取材やインタビュー記事作成、レシピ提案などを行っている。
撮影:関口佳代
編集:はてな編集部