来店のフックになるメニュー考案ときっかけをLINEで生み出す「立ち飲み食堂 ウルトラスズキ」の店づくり

ウルトラスズキ

高クオリティーな料理に豊富なドリンク、さらに「苗字が『鈴木さん』の人はお好きなレモンサワー1杯無料」などのユニークな取り組みで人気を博す「立ち飲み食堂 ウルトラスズキ」。不満を生み出さない接客や、来店機会を増やすLINE公式アカウントの活用法など、ファンを増やすお店づくりについて伺いました。


一度ならず、何度も足を運んでくれる「おなじみ」のお客さんは、飲食店にとって心強い存在です。多くの常連客の心をつかむお店は、どのような工夫をしているのでしょうか。

「立ち飲み食堂 ウルトラスズキ」は神奈川県の関内・馬車道に店舗を構える人気のお店です。高クオリティーな料理に30種類以上のレモンサワーとウイスキーなどをそろえ、さらに「苗字が『鈴木さん』の人はお好きなレモンサワー1杯無料」というユニークな取り組みも行っています。

LINE公式アカウントでは当日限定メニューを配信して来店機会を増やすほか、お客さんからの不満を発生させないための接客にも注力。取締役を務める鈴木賢さんに、ファンを増やすお店づくりについて伺いました。

本格的な料理と豊富なドリンクで人気。「立ち飲み食堂 ウルトラスズキ」はどんなお店なのか

――「立ち飲み食堂 ウルトラスズキ」はどのようなお店ですか?特徴を教えてください。

鈴木さん:立ち飲みの気軽さで、本格的な料理や豊富なドリンクを楽しんでいただけるお店として2020年6月にオープンしました。飲食やウエディング事業などを手掛ける企業で同僚だったメンバーで経営・運営しており、現在は料理担当、ドリンク担当、接客や経営管理を担当する私の計3人で営業しています。

ウルトラスズキ

料理は洋食を軸に約20種類をそろえていますが、季節食材や仕入れ状況によって柔軟に変えています。その日限りの数量限定メニューも出していて、それをLINE公式アカウントのメッセージ配信でお知らせしています。洋食はもちろん、韓国料理やメキシコ料理などを用意する日もあり、ジャンルを問わず提供していることが多いですね。

ドリンクはビールがイチオシです。完璧に洗浄したビールサーバーを、キンキンに冷えた銅製のマグで提供しており、樽生ビール本来のおいしさを実感できます。その他にもレモンサワーはさっぱり系や甘口、インパクトのあるものなど30種類以上をそろえており、ウイスキーはスコッチを中心にスタンダード、エスペシャル、ジャパニーズの3カテゴリ30種類以上を用意しています。

ウルトラスズキのフードメニュー

メニュー表は季節や仕入れによって大幅に更新している

――お客さんはどのような方が多いですか? 客層や年齢層などを教えてください。

鈴木さん:メインのお客さまは40~50代で、男性55%、女性45%の割合です。近隣にお勤めされている方が中心ですが、近くに横浜スタジアムがあるので野球観戦で寄ってくださったり、普段は野毛エリアで飲んでいるという方が来てくださったりすることも多いです。

――人気メニューについて教えてください。

鈴木さん:季節によって大幅に変わることが多いので「これが人気」と言えるメニューはあまりないのですが、しいて言えば「ふわふわオムレツ 黒トリュフソース」は開業当時からある売れ筋の品ですね。その他、7種類のスパイスとハーブを合わせて香ばしく仕上げた「ローストカシューナッツ」の出数も多いです。意外とファンが多いので、私たちは“隠れ看板メニュー”と呼んでいます。

ふわふわオムレツ 黒トリュフソース 880円

ふわふわオムレツ 黒トリュフソース 880円

スーパードライ(銅マグ500ml) 750円

スーパードライ(銅マグ500ml) 750円

当店は小ポーションで多品目を楽しんでいただくというよりは、「佐賀牛リブロースのグリル」や「鴨もも肉のコンフィ」など、一皿にボリュームを持たせたものが多いんです。そのため、2~3人のグループで来店されるお客さまが5割ほどを占めます。新規の方とリピーターの方の割合はおよそ半々です。

――ドリンクの品ぞろえも豊富ですね。特にレモンサワーは組み合わせやネーミングにも工夫されている印象を受けました。

まるごとスイカレモンサワー

まるごとスイカレモンサワー

鈴木さん:お客さまに「おいしそう」「おもしろそう」と思ってもらえるような、フックになる要素をたくさん作りたいという想いがあります。また、毎日同じ3人で営業しているので、「これをやってみよう」「評判が良いから続けてみよう」など、意思決定のスピードが早いからこそ実現できている部分があるかもしれません。

ウルトラスズキのドリンクメニュー

「立ち飲み食堂 ウルトラスズキ」の立ち上げ当時について

――お店を立ち上げる際、コンセプトやテーマはどのように考えましたか?

鈴木さん:最初にお話しした通り、本格的な料理やおいしいお酒を、気軽な立ち飲みスタイルでご提供できるお店をつくろうと考えたのが大枠ではあります。ですが、お客さまが「ウルトラスズキ」に何を求めているか、どこに重きを置いているかで受け取るコンセプトが違うのではと思っています。

――先ほどの「フックになる要素」にもつながる部分ですね。

鈴木さん:はい。「立ち飲みなのに料理がしっかり手が込んでいておいしい」と受け取る方もいれば、「レモンサワーの種類が豊富で面白い店」と評価してくださる方、ウイスキーやビールを楽しみたくて来てくださる方もいます。お客さまがご友人に当店をおすすめしてくださるときに「レモンサワーがたくさんあるお店なんだよ」「ウイスキーもいろいろそろっているよ」「苗字が『鈴木さん』の人はレモンサワーが一杯無料になるから今度行こうよ」など、説明しやすいようなお店にしたいなと思っています。

――実際に「鈴木さん」は多く来店されますか?

鈴木さん:(取材時の)2024年6月は39人来店されました。日本の人口比率から見ると、「鈴木さん」は約1.5%なんだそうです(参照:2018年実施の明治安田生命全国同姓調査。実際に来店される鈴木さんは総来店客数の約3%なので、多い数字なのではないかと思います。

ウルトラスズキ

――店内に毎月のレモンサワー人気ランキングも貼り出されているんですね。

鈴木さん:お客さまに楽しんでいただけるよう、エンタメコンテンツのひとつとして提示しています。他の方がどんなものを注文しているのかが分かるし、自分の推しレモンサワーが何位かどうかチェックされるお客さまも多いです。人気1位のレモンサワーに注目が集まり、注文率が上がるので、2位以下との差がどんどん開きますね(笑)。

ウルトラスズキ

「立ち飲み食堂 ウルトラスズキ」の集客方法

――効率よく店舗運営をするために工夫していることはありますか?

鈴木さん:LINE公式アカウントを活用しています。リッチメニューにはWeb予約ページのほか、ホームページやInstagramへの導線を設置し、分かりやすく設定しました。さらに、チャット機能を活用して予約や問い合わせに対応しており、営業中でも即時返信できるようスマホに通知が来るようにしています。急な予約人数の変更で席数の調整を行うなどレスポンスよくやり取りができるので、臨機応変に対応できていると感じています。

――お店を立ち上げた当時、集客に苦労はされましたか?どのような工夫をされたのか教えてください。

鈴木さん:開業当初はコロナ禍でしたので、夜の営業やお酒の提供ができませんでした。国からの要請に従いながらも営業できる方法として、朝7時~10時の3時間営業で朝カレーの提供を始めました。スパイスカレーを食べると代謝が上がって免疫力も高まるし、朝イチでカレーを食べて元気を付けましょうと。1皿1,200円で出していましたが、少しでも社会的意義を持たせたいと、医療関係者には100円で提供していました。

――朝カレーの営業をしたことでどのような影響がありましたか? 

鈴木さん:「なんかちょっと面白いことをやっているお店だよね」と近隣の方を中心に、多くの方に認知していただけたと思います。当時を知るお客さまからは「あの朝カレー良かったよね」と言われますし、その時に来てくださった医療関係者の方が今、常連さんになってくださっていることも多いです。

――通常営業ができるようになってから、変えたところはありますか?

鈴木さん:ゆったり過ごしたいお客さまに向けて椅子(有料:300円)をお出しするようにしました。当店は立ち飲みですが、高品質な料理を楽しんでいただきたいこともあり、回転率よりも滞在時間を重視しています。

料理やドリンクのクオリティーや気持ち良い接客を重視して営業を続けてきた結果、そうした部分に価値を感じて来店してくださるお客さまが増えました。現在の平均客単価は4,000円程度と、立ち飲みスタイルの居酒屋としては高めになっています。

「立ち飲み食堂 ウルトラスズキ」のリピーターづくり

――リピーターさんは約5割と伺いました。常連になっていただくために工夫されていることはありますか?

鈴木さん:お客さまの満足度を高めるための努力をしていますが、「感動」を意識するのではなく「不満」を生み出さないような接客に注力しています。

――具体的にはどのようにされているんでしょうか。

鈴木さん:お客さまは潜在的に「安心・安全」な店で「公平」かつ「大切」に扱われたいという3つの欲求を抱えていると考えています。例えば、「店内が汚い」「別のお客さんの方が優遇されている」「気にかけてもらえていない」というマイナス要素を感じると不満につながり、次回の来店の可能性が消えてしまうこともあります。接客時は店内全体を把握して、これらの不満の種を早い段階で摘むよう常に意識しています。

また、LINE公式アカウントでの発信によって来店動機が生まれ、常連さんの獲得につながっているとも感じています。

ウルトラスズキLINE画面

――先ほどもLINE公式アカウントで予約や問い合わせに対応されていると伺いましたが、それ以外はどのように活用されていますか?

鈴木さん:コロナ禍が落ち着いてきた2022年頃から活用を開始し、現在(2024年8月現在)の友だち数は約1,900人です。メッセージ配信では当日限定メニューを画像付きでお知らせし、「食べてみたい」と思ってもらえるように意識しています。メッセージの開封率は80%前後で、メッセージをきっかけに来店され、実際に注文される方も多いです。

チャットでの予約受付や問い合わせ時はもちろん、全体に配信するメッセージでもその人だけに向けたメッセージだと感じていただけるよう、フレンドリーな文面を心がけています。例えば、「(試食してみて)おいしすぎて天を見上げました」とフランクに伝えたり、あえて料理とは関係のないプライベートなことも加えたりすることで、お店に対して親近感を持ってもらえればいいなと。そうしたアクションに返信してくださるお客さまもいらっしゃるので、来店につながるコミュニケーションも生まれています。

――LINE公式アカウント以外のSNSも使われているんでしょうか。

鈴木さん:開業当時からInstagramを使っていましたが、LINE公式アカウントを使うようになってからはストーリーズのみ更新し、フィードへの投稿はしていません。

というのも、以前は2週間ごとにスペシャルメニューを設けており、情報をストックできるInstagramとの相性が良かったんです。でも、現在のように毎日の限定メニューの場合は、LINEのプッシュ通知でお客さまに届く方が効果的だと考えています。

ウルトラスズキのLINE公式アカウント活用方法をさらに知りたいなら

LINEヤフー for Businessでは、ウルトラスズキのLINE公式アカウント活用方法をさらに詳しく紹介しています。活用シーンや友だちの集め方といった店づくりをする上でも大事なポイントをはじめ、運用人数や利用機能など、これから運用したい人に向けて参考になる情報がまとまっています。

詳しくは以下のページをどうぞ!

ウルトラスズキのLINE公式アカウント活用方法

ウルトラスズキのLINE公式アカウント活用方法を見る

――その他に、お客さんと良い関係性を構築するために工夫していることや意識していることはありますか?

鈴木さん:できるだけ多くの人が楽しめるお店づくりをしたいと思っています。その一環として、レモンサワーはアルコールの濃さや酸味を調整できるようにしました。「濃いめ」から「薄め」「無し」「酸っぱめ」など細かく選んでいただけるようにし、それぞれで10円~100円まで割引も行っています。

――どのようなきっかけから始められたサービスなのでしょうか。

鈴木さん:もともと居酒屋ではノンアルドリンクの選択肢が少なかったですよね。でも「あまり飲めないけれどお酒の席は好き」という方も一定数いらっしゃいます。2年程前からモクテル(ノンアルコールカクテル)の流れや、飲まないライフスタイルを支持する方が増えてきたこともあり、「居酒屋で飲まなくても楽しめる」はお店選びの価値につながるのではないかと。メニューに打ち出すことで「飲まない方、飲めない方も歓迎しています」という私たちの姿勢をアピールする機会にしています。

例えば、お店では、ソフトドリンクとしてパインジュースを注文されたお客さまに「ゴロゴロパインレモンサワーをノンアルにもできますよ」とおすすめしています。選べるドリンクが増えるので、お客さまからの満足度は高いですね。

気になるあのお店の集客成功事例

店主の個性を生かした特別感が若者にヒット。「大衆酒場ネオトーキョー」に学ぶ飲食店人気エリアでの戦い方

▶記事を読む

 

大事なのはコミュニケーションの余白を残すこと。常連が新規客を連れてきてくれる都立大学「ぶらんこ」の店づくり

▶記事を読む

 

【取材先】

ウルトラスズキ

立ち飲み食堂 ウルトラスズキ

住所:神奈川県横浜市中区太田町4−45 第一国際ビル1階
Web:ウルトラスズキ公式サイト
Instagram:立ち飲み食堂ウルトラスズキ@関内・馬車道

取材・文/田窪 綾
調理師免許を持つフリーライター。惣菜店やレストランで8年ほど勤務経験あり。食分野を中心に、Webや雑誌で取材やインタビュー記事作成、レシピ提案などを行っている。

編集:はてな編集部