お客さんが飲食店に好印象を持つきっかけは、料理の味だけではありません。「接客」も重要な要素で、好印象を抱いたお客さんがリピーターになってくれる可能性があります。
この記事では、飲食店における接客の重要性と、最低限知っておくべき接客のマナーや用語、あいさつ例などを紹介します。新しく入る従業員やオーナー向けの簡単なマニュアルとしても活用できます。
こんな人におすすめ
- 接客で気をつけることが知りたい
- 具体的な接客のケース別のあいさつ・表現が知りたい
- 店内教育のために接客のマニュアルをつくりたい
お店の評価を左右する、接客の重要性
飲食店における接客は、料理の味と同じくらいお店の評価にかかわる可能性があります。おなじみ編集部のアンケートによれば、お客さんがお店の行きつけになった理由として「店主の人柄や関係性」「従業員の接客」を挙げた人は、合計で80%以上(複数回答可)です。
接客で好印象を持ってもらえれば、お客さんは「また来たい」と感じてくれるかもしれません。そうしてリピーターが増えれば、お店の売上の安定にもつながるはずです。
接客の3つの心得
では、どんな接客が理想なのでしょうか。参考として、3つの心得を紹介します。
1. お客さんの目線で考える
まず考えたいのが、お客さんの目線に立って接客すること。お客さんが何を求めてお店に来ているのかを考えて動くことが大切です。
早く食事を済ませたい方もいれば、店員との会話を楽しみたい方もいるでしょう。マニュアルを表面的に守るのではなく、お客さんが居心地よく過ごせるように考えたサービスが提供できれば、結果としてお店に良い印象を持ってもらえるのではないでしょうか。
池袋の人気スナック『SORA』のまどかママが語る、常連さんに愛される接客術も参考にしてみてください。
2. 誠実で公平な接客を心がける
全てのお客さんに対して、誠実な接客を心掛けましょう。丁寧に受け答えをするのはもちろんのこと、オーダーやおつりの金額を間違えないようにすることも大事です。
公平であることも大切で、例えば、料理を提供するのは先に来店・注文をとったお客さんから順番にというのが基本です。調理に時間を要して提供する順番が前後するなどの理由がある場合、率直にお客さんに伝えておきましょう。
また、お客さんを身なりで判断したり、常連客との距離感にも注意を払う必要があります。ここでも「自分がお客さんだったら、どう思うか」というお客さん目線がヒントになりそうです。
3. 接客のマニュアル化と従業員のプロ意識
お客さんは、他の飲食店で受けた接客の体験から、「この店でも一定の質の接客が受けられるだろう」と期待して来店される可能性があります。従業員の一人一人がプロ意識を持って接客することも大切ですが、一方で基準となるものをそれぞれがしっかりと認識しておくことも重要です。
飲食店として心がけたい店舗の清潔感、従業員の身だしなみや言葉遣いなどをマニュアルとしてお店全体で共有すると、サービスの品質を保ちやすくなります。
接客の基本マナー
好印象を抱いてもらえる接客として、まずは基本を身に付けることが必要です。接客の基本マナーを紹介します。
1. おじぎ
言葉だけでなく行動でも気持ちが伝えられると、お客さんは好印象を持ちます。挨拶したり謝ったりする際は、おじぎを添えるとより丁寧に感じてもらえるでしょう。
おじぎのポイントは、頭を下げるだけではなく、背筋を伸ばして腰を15度程度軽く曲げること。心からの気持ちを表すときはより深く、30度くらいを意識すると良いでしょう。
2. 身だしなみ
飲食店での接客では、身だしなみが重要です。これから食事を楽しむお客さんが不快に感じないように整えましょう。
髪型
髪が長い場合は、派手になり過ぎないようすっきりとまとめましょう。髪がボサボサとしていたり、長い髪をまとめずに下ろしたりするのは不衛生な印象を与えるので避けましょう。
顔・お化粧
ヒゲや鼻毛が不衛生に伸びていないか確認しましょう。メイクは濃くし過ぎないように注意します。
ファッション
支給された制服が汚れていたり、ほつれていたりしないか確認しましょう。ピアス・指輪・ネックレスなどのアクセサリーは、お皿に当たるなど業務に支障が出るおそれがあるので、勤務中は外しておきます。爪は不衛生にならないよう整えておき、ネイルカラーも派手になり過ぎないよう注意します。
姿勢
どれだけ身だしなみに気を付けていても、姿勢が悪いとだらしない印象を与えてしまいます。肩の力を抜いて自然に背筋を伸ばしましょう。緊張しているときは、大きく深呼吸するのがおすすめです。
3. メニュー
お客さんが席についたら、メニューを出します。見やすいように開いた状態で、1人1冊渡すのが基本。家族連れの場合は大人の人数分出すとよいでしょう。油を使うお店では、メニューを触るとベトベトになることもあります。お客さんに差し出す前に、表面を拭いておきましょう。
4. 配膳
料理ができ上がったら、素早く提供しましょう。お客さんの手と料理が接触することを回避するために、利き手の反対側から(右利きの場合は左から、左利きの場合は右から)配膳します。簡単な料理の説明を添えると、料理に対する期待を膨らませることができます。
最低限覚えるべき接客6大用語
飲食店以外の業種でもよく使われる、接客サービスの基本「接客6大用語」があります。経営者の方はマニュアル化して、定着させるとよいでしょう。
1. いらっしゃいませ
お客さんが来店したときに伝える大事な言葉です。明るく元気よく、最初の「い」をはっきり言うようにすると伝わりやすくなります。他の従業員にお客さんの来店を伝える役割もあります。
2. かしこまりました
お客さんに「メニュー表をください」とお願いされたときなどに対応するときの言葉です。「はい、かしこまりました」とすると、お客さんも確かに内容が伝わったということが分かります。
3. 少々お待ちください
お客さんにメニューを伺って席を離れる際、予約の電話で保留にするとき、オーダーをとるまでに時間をもらうときなどに使います。
4. お待たせいたしました
料理を提供する際、電話口で保留を解除するとき、入口でお客さんを待たせていたときなどに使います。
5. 申し訳ございません
料理を提供するまでに時間がかかってしまった場合、注文されたメニューが品切れになった場合などに使います。
6. ありがとうございました
「お気をつけて」「またお待ちしております」などと合わせて、主にお客さんが退店するときに伝えます。
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笑顔ではきはきと「いらっしゃいませ」とあいさつをするだけでも印象が良くなります。第一印象が重要な理由について詳しく知りたい方は、関連記事もあわせてご覧ください。
ケース別の接客用語集・言葉遣い
接客によく使われる言葉遣い・注意点を、お客さんが来店してから退店するまでの流れに沿って紹介します。
1. お出迎え
まずは笑顔ではっきりとした気持ちの良い声でお客さんを出迎えましょう。笑顔はお客さんへの歓迎の気持ちを伝えるために必要不可欠です。口角をきゅっと上げ、前歯を出すように意識すると自然な笑顔をつくることができます。
- 「いらっしゃいませ。本日はご来店ありがとうございます」
- 「恐れ入りますが、ご予約はいただいていますでしょうか」
- 「何名様でしょうか」
- 「お煙草はお吸いになりますか?」
- 「ご案内いたします。こちらへどうぞ」
2. 満席のとき
満席の場合は、心を込めて説明することが大切です。忙しいからといって丁寧でない対応をしてしまうと、お店の印象を悪化させてしまいます。
- 満席を理由に入店をお断りするとき「あいにく満席でございます」
- 満席で席が空くまで待ってもらうとき「申し訳ございません。こちらでお待ちいただけますでしょうか」
- 席が空くまで待っていたお客さんを店内に案内するとき「お待たせいたしました。お席へご案内いたします」
3. 満席で入店されないとき
満席のため、残念ながらお客さんが食事を諦めてお店を出てしまう場合があります。せっかく来店していただいたのに申し訳ない、という気持ちをしっかりと伝えましょう。
- 「申し訳ございません。またのご来店をお待ちしております」
4. 注文を伺うとき
お客さんを席に案内したらメニューを渡し、注文が決まった頃にテーブルへ向かいましょう。声を上げてスタッフを呼ぶ手間を省くため、お客さんをよく観察し、メニューから顔を上げたら声をかけるのがよいでしょう。
- 「ご注文をお伺いします」
- 「ご注文はお決まりでしょうか?」
もしオーダーが決まっていない場合は「ご注文がお決まりになりましたら、お呼びくださいませ」と伝え、一旦離れます。
オーダーを取る場合は、正確さが重要です。品目と品数を間違えないように復唱しながら伝票に記載しましょう。
- 「ご注文を繰り返します」
- 「●●がおひとつ、■■がおふたつ……」
- 「以上でよろしいでしょうか」
- 「かしこまりました。少々お待ちくださいませ」
5. 配膳するとき
料理ができ上がったら温かいものは冷めないうちに、冷たいものはぬるくならないうちに素早くお客さんへ提供します。料理名を読み上げて確認しながら配膳し、料理の間違いがないようにしましょう。人数が多くない場合は、なるべく注文を覚えておき「●●はどちらさまでしょうか」と言わないように心がけると好印象です。
- 「お待たせいたしました。●●をお持ちいたしました」
- 「以上でご注文の品はおそろいでしょうか」
- 「ごゆっくりどうぞ」
すぐにお皿を下げてしまうと急かされているように感じてしまうため、お客さんが食べ終わってしばらくしてから、お皿を片付けます。
下げる前に必ず一言「お下げしてよろしいでしょうか」と声をかけ、下げていいかを確認しましょう。
- 「恐れ入ります。空いたお皿をお下げしてよろしいでしょうか」
- 「お下げします」
6. 食事を終えて退店されるとき
お客さんが退店する際は、入口のドアを開け、さらに外に出て感謝の気持ちを込めながら深くおじぎをして見送りしましょう。
- 「ありがとうございます。またのご来店をお待ちしております」
7. 予約を受けるとき/電話で対応するとき
電話対応も大事な接客の1つ。電話を受ける際は相手が聞き取りやすい話し方を意識し、いつもより明るくはきはきとした声で話します。飲食店で特に多いのが予約の電話です。受けた予約内容はメモをして、必ず復唱しましょう。
- 「お電話ありがとうございます。●●店、〇〇(名前)が承ります」
- 「ご来店のお日にちはお決まりでしょうか」
- 「何名様のご予定でしょうか」
- 「ご予約のお名前とお電話番号をお願いいたします」
- 「ご予約内容を繰り返させていただきます」
まとめ:お店の外にいるお客さんへの接客には、LINE公式アカウントがおすすめ!
最近ではLINEやWebサイト・SNSを活用し、お店以外の場面でもお客さんとコミュニケーションを取る機会が増えてきています。
中でも「LINE公式アカウント」は開設が無料な上、接客に役立つ多くの機能が利用できます。
代表的な機能の1つが「LINEチャット」で、個人で使っているLINEのように、お店のアカウントでお客さんとスタンプやテキストで1対1のコミュニケーションを取ることができます。予約受付として活用すればテキストでログが残るため、予約日時や人数、リマインドなどもチャット経由で確認・送信が可能になります。
また、お客さんと音声通話・ビデオ通話が可能な「LINEコール」は、着信を店舗の固定電話などに転送する機能も備わっています。
さらに、クーポンの配布・新メニュー情報・営業時間などの便利な情報を配信するなど、リピーターを獲得するために活用できる機能もあります。
LINEは今や9,500万人(2023年3月末現在)という圧倒的な月間利用者数を誇ります。日常的に使う機会が多いLINEはお店側にとってもなじみ深く、お客さんとのコミュニケーションを深めるために活用できるはずです。
この記事で紹介した接客用語を活用しながら、常連獲得につなげましょう。
イラスト/つのがい
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