ひとりでも居心地よく飲めて、ワクワクできる。せんべろnet・ひろみんさんの「通いたくなる店」

ひとりでも居心地よく飲めて、ワクワクできる。せんべろnet・ひろみんさんの「通いたくなる店」

Webサイト「せんべろnet」管理人・ひろみんさんは、ひとり飲みが大好き。これまで数千軒の酒場を巡り、その魅力を発信し続けてきたひろみんさんが考える「通いたくなるお店」の条件とは?


こんにちは。「せんべろnet」管理人のひろみんと申します。

立ち飲みや大衆酒場が大好きな酒飲み女でして、趣味は食べることと飲むこと、そして酒場探索! いつからか飲み歩きがライフワークとなり、Webサイト「せんべろnet」で、気軽に「ちょっと一杯」を楽しめる酒場情報や簡単おつまみレシピなど、お酒にまつわる投稿をしています。

今回は、私がせんべろにハマった理由と、“ひとり飲み”という観点から見た「いい飲み屋の条件」を、実際に通っているお店から考えていきたいと思います。

なぜ「せんべろ」なのか? きっかけは立ち飲みにハマったこと

せんべろにハマった理由_01

なぜ「飲み歩きがライフワーク」になったのか?

そもそも、なぜ「せんべろ」なのか?

その理由は、十数年前にさかのぼります。

その頃、私は東京・新橋のIT企業で働いていました。昇進したくて仕事に没頭する毎日。唯一の楽しみと言えば、仕事帰りにひとり飲みをすること。

ある日、仕事で落ち込み、気分を変えてひとり飲みでもして帰ろうと、いつもと違う道を歩いたんです。すると、焼き鳥の煙がもくもくの立ち飲み屋が目に留まりました。

正直、当時は座ってゆっくり飲めるお店が好きだったので、立ち飲み屋にはあまりピンときていませんでした。

せんべろにハマった理由_02

でも、この日はなんとなく焼き鳥の香りに誘われて立ち寄ってみたら、100円~300円のおつまみやお酒のオンパレード。安いし、名物の焼き鳥がとにかくおいしいし、おつまみの量もひとり飲みに最適だったんです。店員さんは明るく笑顔で気持ちがいいし、おまけに立ち飲みだから一杯だけで帰る人もいて、本当に気軽でした。

そして、会計はサワー2杯・つまみ1品・焼き鳥3本で千円ちょっと。「千円でこんな楽しみ方があったの?」と、仕事で落ち込んでいたのも忘れるほど(笑)、ただただ感激していました。

そこから立ち飲み屋に夢中になり、毎日仕事帰りに未訪の立ち飲み屋を巡っては、グルメサイトに投稿する日々が始まります。さらには、大衆酒場や角打ちなど、さまざまな飲み屋を巡るようになっていました。そんなこんなで3年ほど投稿を続けるうち、「もっと自由に表現したい」という欲がでて、2015年に「せんべろnet」を開設したのです。

「せんべろ」とは、“千円でベロベロに酔える”という意味です。

正直、酒飲みにとって千円でベロベロは難しいですし、千円以上使ってしまうことが日常茶飯事です。でも、立ち飲みや大衆酒場でのひと息を分かりやすく伝えられるのはどんな言葉だろう?と考えた時にしっくりきたのが、仲間内で使っていたこの言葉でした。

最初に出合った立ち飲み屋のように、千円ぐらいで楽しい息抜きができたら「せんべろ」。うん、それがいい!

そんな経緯で「せんべろ」の魅力に取りつかれ、現在に至ります。

ひとり飲みで行くなら? 私にとっての「いい飲み屋」の基準

「いい飲み屋」の基準01

これまで数千軒の酒場を巡ってきましたが、よく考えると「いい飲み屋」って難しいですね。その人の趣味や性格はもちろん、気分によっても基準がガラッと変わるように思います。

仲間と飲むこともありますが、基本はひとりなので「ひとり飲みで行くお店」を大前提として、重視するポイントを考えてみました。

1. お店が自分と合うかどうか

一番重視しているのは、お店の雰囲気やそこにいる人(お店の方やお客さん)が自分と合うかどうか。これさえ合えば居心地よく飲めるし、合わなければ疲れてしまいます。

私は仕事の疲れを浄化しに飲み屋へ行っているので、疲れることは本末転倒だし避けたい。どんなに安かったりおいしかったりしても、雰囲気が合わなければ、自分にとって「いい飲み屋」とはなりません。

ただ、最初は「合わないかも」と感じても、価格と味が合っていたら最低3回は足を運ぶようにしています。なぜなら、訪れるタイミングや自分の行動次第で「雰囲気が合う店」に変わることもあるからです。その逆もまた然り。これは人付き合いと同じで、酒場の面白いところだなぁと思います。

では、どんな雰囲気なら「自分に合っている」と思えるのでしょうか? もう少し深掘りしてみると、一概に「この雰囲気が正解」とは言えず、私の中では3パターンがあります。

  • お店の方やお客さんとの距離は近いけど、会話してもしなくてもよいラフさがある
  • 基本会話はなく、自分のペースで飲める。その中でひと言ふた言、お店の方が声を掛けてくれることもある
  • 干渉されず、黙々と飲める

さらに、お店の方がさり気なく気を使ってくださったり、酔って絡んでくるお客さんを取り締まってくれたり、リラックスして飲めたりするお店は大好きなので、たくさん飲みたくなりますし、通いたくなります。

2.ひとり飲みしやすい環境かどうか

雰囲気に加えて、ひとり飲みのしやすさも、重視しているポイントです。

・カウンター席がある
テーブル席しかないお店へ行くこともありますが、座り飲みならば大前提としてカウンター席のあるお店がいいんです。なぜなら、テーブル席だと混んできたら場所を占領している申し訳なさで、楽しく飲めないんです(4名席だと申し訳なさ倍増)。

・一人分のおつまみがある&量が多過ぎない
一人でも数種類のおつまみをあれこれ楽しみたいし、量が多い場合には食べきるのが大変なので、このあたりも重視しています。

また、ハーフサイズに対応してくださったり、ひとり飲み専用メニューがあったり、おひとりさんに優しいお店が大好きです。

・おつまみは手作り&お酒が濃い
他のポイントと比較すると優先順位は下がりますが、そこでしか食べられない手作りのおつまみが楽しめたり、気持ちよく酔えるくらいにお酒が濃かったりすると、喜んで通う傾向にあります。

3.満足できる価格かどうか

価格も重視します。極端な話ですが、例えば立ち飲み屋で冷やしトマトが200円だった場合、注文しよう! となるけど、500円だった場合には注文を見送ってしまう。でも、隣の人が注文した冷やしトマトが実は具だくさんで、それはもう魅力的だったりしたら、500円でも注文しようとなる。そういった、満足度の高い価格設定のお店に惹かれます。

「通い続けているお店」に共通するのは、居心地のよさとワクワク感

では、「私が実際に通っているお店」にはどんな共通点があるのでしょうか。上記のポイントを踏まえて、通い続けている4軒を例に考えてみたいと思います。

※各店舗の価格表記はすべて税込みです。

1. 気軽さの中で心配りに温まる立ち飲み「ドラム缶」(東京・大塚)

一軒目は、全国で店舗展開されている「立ち飲み居酒屋ドラム缶」。セルフ式でお財布に優しく、千円を握りしめて気軽に一杯できる立ち飲み屋です。フランチャイズなので、店舗ごとに雰囲気やメニューが違うのも楽しいポイントです。

ドラム缶01

そんなドラム缶で1番お邪魔しているのが、2019年オープンの「ドラム缶 大塚店」。田村さんご夫婦が切り盛りする人気の店舗です。

店内は明るく気軽な雰囲気。カウンターはひとり飲みのお客さんでほどよくにぎわい、中にはお子さん連れの姿も。

ドラム缶02

システムは、カウンターで注文→支払い→受け取りというキャッシュオン形式。カウンターには奥さまのYUKIさんが立たれていて、会計とドリンクを担当しています。

注文ごとに「〇〇さん元気~?」とか「子どもの運動会があって~」なんて、声を掛けてくれたり、ひと言ふた言お話をしたり。それがまるで、商店街のお店で買い物ついでに世間話をしているかのようで、懐かしさや温かさを感じます。

また、最初の注文時に名前を聞かれて、時間のかかる料理ができ上がると名前を呼んでくれるのですが、次に訪れた際にもお客さんの顔と名前を一人一人記憶しているのが本当にすごい。

ドラム缶03

手書きのおすすめメニューも素敵

料理は、ご主人のたむたむさんが担当。定番メニューのほか、ホワイトボードのおすすめには珍しいメニューも並んでいて、どれにしよう? とワクワクします。

ドラム缶04

キャッシュオン&立ち飲み形式なので自分で予算を決めて飲みやすい

ある日注文した、“幻の海老”と呼ばれる「ガスエビ唐揚げ」は、サクっと香ばしく、甘みと旨みたっぷりでやみつきになる味!「ガツねぎおろしぽん酢」は、じめじめした季節にぴったりなさっぱり味です。そして皆大好き「タコさんウインナー」は、3つで100円というサービス価格!どれもおいしくお酒がすすみます。

酎ハイは220円・つまみは100円からと、せんべろ価格。自分のペースで気軽に楽しめて、お二人の細やかな目配りや心配りが素敵なお店です。

2.まるで銭湯のように温まるやきとん大衆酒場「須賀乃湯」(東京・上板橋)

2軒目は、私の地元・板橋にある、オープン当初からお邪魔しているお店です。

須賀乃湯01

池袋から東武東上線の準急で10分足らずの上板橋駅へ。そんな街にある、2016年3月創業のやきとん大衆酒場が「須賀乃湯」。現在は予約なしでは入れないほどの人気店です。

お店は上村さんご夫婦が切り盛りされていて、ご主人は板橋区・大山(同じく東武東上線沿線)の大衆酒場「鏑屋(かぶらや)」ご出身。ご実家が営んでいた銭湯の屋号を引き継ぎ、「須賀乃湯」と名付けられたそうです。

須賀乃湯02

カウンター席もあるので一人飲みもしやすい

20席ほどの店内は、常にお客さんでいっぱい。まずフロアの女将さんが明るく接してくださって、ホッと癒やされます。そして、名物のやきとん、煮込みから日替りまで、ご主人の作るお料理はリーズナブルで、何を食べてもおいしく魅力的。

須賀乃湯03

特に日替りメニューは、旬の魚料理をはじめ、小鉢や串焼き、にぎりまで並んでいて、訪れる楽しみの一つです。

須賀乃湯04

右上はハーフサイズの料理

やきとんなど串焼きは1本から注文できて、ひとり飲みだと「これ、ハーフサイズもできますよ~」なんて、細やかに声をかけてくれたりします。おまけに、お酒は並々注いでくださって、しっかり濃いのです。それはもう心掴まれちゃいますよ。

中でも、濃厚な「シロ(上記写真・上段中央)」は必ず食べます。人気の「もつ煮込み」や自家製の「ポテトサラダ」、「コーンのかき揚げ」も大好き(どれもハーフサイズにできます)。さらに、ある時はお刺身を注文したら「にぎり寿司」まで盛られていて、こりゃうれしい誤算ですね。

大衆的な価格はもちろん、ご主人の作る料理と女将さんの接客に温まる、銭湯のようなお店です。常連さんも皆さん温かくて、ちょっと一杯じゃもったいない。もっとこの空間に浸かっていたくなります。

3.酒好きの夢が詰まったボートレース前の温かな酒場「立ち飲みひろ」(福岡・天神)

3軒目は、ワープして福岡のお店へ。「このお店へ行きたいから福岡まで遠征する」と言っても、過言ではありません。

立ち飲みひろ01

福岡・天神から徒歩圏内にある、その名も「立ち飲みひろ」。

昭和から続く、二代目のご夫婦が中心に切り盛りしているお店です。「ボートレース福岡」前にあり、レース開催日に合わせて営業しているので、昼飲みもできますし、レースを楽しむ人々の憩いの場となっています。

はじめて訪れたのは、約7~8年前のこと。お店は場所柄もあり、当初ひとりで訪問した際にはかなり緊張しました。ですが、「一人で入りづらくなかったですか?」なんて、女将さんが明るく声を掛けてくださったりして、ホッと楽しく飲めたことを覚えています。そこから、福岡へ行った際にはお邪魔せずにはいられません。

立ち飲みひろ02

店内は100名程が利用できる広々とした空間で、好きな場所で気ままに飲める。システムは都度払いのキャッシュオンです。

立ち飲みひろ03

東京ではあまりお目にかかれないおつまみも

独自に開発された酒販機(本格焼酎・日本酒)が並んでいたり、カウンター上には200円均一の小皿の手作りおつまみがずらり!

まるで大人の駄菓子屋のようで、心躍らずにはいられません。

(左上から反時計回りに)「博多の華」のお湯割り、アジ刺し、鶏たたき、豚汁

(左上から反時計回りに)「博多の華」のお湯割り、アジ刺し、鶏たたき、豚汁

目と鼻の先にあるボートレース福岡で舟券を購入し、再入場スタンプを押してもらったら(もちろん舟券を買いに行かなくてもOKです)、店内のテレビから流れるレース中継を見たり、雰囲気を楽しんだりしながら、真っ昼間からおつまみを食べてちびちびと焼酎をなめる。もう最高です!

女将さんの優しさにホッとでき、ボートレースファンの常連さんたちが皆さんお優しいのも、「立ち飲みひろ」の魅力。一度行くと、すぐにまた行きたくなり、「ああ、福岡の人がうらやましい!」となります。

まさに、酒飲みの夢が詰まったお店です。

4. 緊張感と心地よさが気持ちいい老舗大衆酒場「いづみや 本店」(埼玉・大宮)

最後にご紹介するのは、休日に昼飲みしたい時にお邪魔している埼玉・大宮のお店。

いづみや01

大宮駅前で朝から飲める「いづみや 本店」は、昭和22年創業の歴史ある大衆酒場。酒場ファンの間では言わずと知れた名店です。

何度訪れても、ひとり飲みだと毎回ほどよく緊張するのですが、それがまた良いスパイスになって、立ち寄らずにはいられないのです。

いづみや02

入店ハードルはやや高めですが、店先の看板が背中を押してくれます。

店内は、昭和にタイムスリップしたかのような懐かしくて渋い佇まい。お昼時ということでほどよくにぎわっていて、ベテラン店員さんたち数名で切り盛りされています。

いづみや03

お酒は250円から、つまみも170円から。そのメニュー数は100種以上と種類豊富で、おつまみからご飯ものまで充実しています。どれにしよう? とワクワクが止まりません。

いづみや04

(左上から時計回りに)梅割、もつ煮込み、酎ハイ、ハムエッグ 

毎回、店員さんが忙しくなさそうなタイミングを見計らい、ドキドキしながら「すみません!」と手を挙げる。タイミングによっては気づかれないこともあり、当初は心が折れたりもしたのですが、現在では「やった! 気付いてくれた」なんて、そんなやりとりも楽しんでいます。

名物の「もつ煮込み」を頬張って、ほんのり甘く爽やかな「梅割」を流し込めば、たちまち至福の時間。さらに、いつものベテラン店員さんが提供のタイミングで冗談を飛ばしてくださったりして、最初のドキドキはどこへやら。“緊張”はいつの間にか“安堵”へと変わっています。

お財布に優しいことはもちろん、ほど良い緊張感の中で豊富なメニューにワクワクし、懐かしさを感じる空間でのんびり落ち着いてひとり飲みできる。それが私にとっては心地良いのです。

大切なのは雰囲気、ワクワク感、そして“そこにいる人”

あらためて振り返って見ると、大衆価格でおいしく、居心地良く飲める雰囲気やワクワク感のあるお店が好きなことはもちろんなのですが、結局は「人」なのだなぁとつくづく思いました。切り盛りされているお店の方が魅力的で波長が合うお店は、何度でも通いたくなります。

そういったお店が、私にとっての「いい飲み屋」。

この記事がなにか参考になれば幸いです。自分に合った「通いたくなるお店」を、ぜひ探してみてくださいね。

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【著者】

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ひろみんさん(「せんべろnet」管理人)

飲むこと食べること、一人飲みや酒場探索が好き。運営サイト「せんべろnet」で、立ち飲みや大衆酒場など、ちょっと一杯楽しめる飲み歩き情報や簡単おつまみレシピなど家飲み情報を配信。晩酌研究家でもあり、著書に『せんべろnetの酔っても作れる宅飲みおつまみ』(ワン・パブリッシング)がある。また7月27日には、2作目の著書となる『せんべろnetのひとり酒場 家飲み手帖』(ワン・パブリッシング)が発売予定。

Web:せんべろnet
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編集:はてな編集部

編集協力:株式会社エクスライト