レビューした日本酒は500本以上。家飲み派ブロガー・神奈川健一さんが「通わずにいられない酒場」とは

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これまで約500本以上の日本酒をレビューしてきた、ブロガーの神奈川健一さん。「普段は家飲み派」という神奈川さんが、わざわざ通わずにいられない酒場の条件とは?


こんにちは。日本酒ブロガーの神奈川健一と申します。普段は「神奈川健一のお酒ブログ」にて、気に入ったお酒のレビューを書いてます。

もともと、ビールからお酒の世界に入った人間です。東京農業大学を舞台にしたマンガ『もやしもん』のビール編に影響されて興味を持ち、これまで世界中のビールを楽しんできました。

日本酒にハマったのは、2010年ごろに人気が高まっていた「獺祭」を飲んだのがきっかけです。米と麹しか使っていないはずの日本酒から「まるでリンゴのようなフルーティーな香りがする!」と大きな衝撃を受けました

その後、近所で日本酒の品揃えが豊富な酒屋さんがあったという幸運にも恵まれ、転げるように“日本酒沼”へ沈んでいきました。お酒のブログを立ち上げたのは、今から約7年前の2016年。当初は制作していたTシャツを宣伝するためのブログでしたが、お酒のレビューを続けていくうちにお酒専門のブログになっていきました。

今回は、そんな自分にとっての「通いたくなる酒場」について考えてみようと思います。

これまでレビューしたお酒やお店から、好きな酒場の条件を考えてみる

「神奈川建一のお酒ブログ」トップページ

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「通いたくなる酒場」を考えるにあたって、まずはブログでレビューしてきたお酒やお店の傾向を、自分なりに振り返ってみようと思います。

まずレビューしたくなる日本酒は、ずばり「おいしくて個性的かどうか」です。他のお酒にはない、唯一無二のおいしさを持っている日本酒に惹かれます。

HANATOMOE 水酛×水酛

例えば、奈良県のお酒に「HANATOMOE 水酛×水酛」というお酒があります。仕込みの工程の一部で水の代わりにお酒を使う贅沢な日本酒なのですが、すごく濃厚な甘味を持つのに適度な苦味と刺激もあり、不思議と飲みやすいのです。酒蔵の技術力とバランス感覚が理解できる傑作です。

今の日本酒はどれも本当においしくなっていて、ハズレに当たる方が難しいぐらいです。そのため、明確な個性を持っているお酒は希少価値があるんですね。個性的でおいしいお酒を造るのは、とても難しいんです。

また、日本酒は誰が造ったかによって、味わいが大きく変わります。素晴らしいお酒に出合うと、「どんな人が造ったのだろう?」と想像してニヤニヤしてしまいます。

一方、レビューしたくなるお店は、そんな個性的なお酒を教えてくれる酒場です。飲んだことがない日本酒を飲ませてもらって「こんなお酒が世の中にあったのか!」と驚く体験は、どれだけ日本酒の知識を深めてもなくなることはありません。

自宅では体験できない、お酒の個性を十二分に引き出してくれるお店も最高です。購入して飲んだことがあるお酒であっても、あっと驚く料理との組み合わせを提案してくれたり、自宅ではなかなか真似できない温度管理が見事な熱燗を飲めたり。まさしくプロの技術で、日本酒が輝く瞬間が楽しめるのです。

お酒の品揃えの多さも大切ですが、飲食店に僕が求める価値は、やはり日本酒の本当の個性を見せてくれる点にあります。

行けば自宅飲みがもっと楽しくなる。「通い続けている酒場」3店

とはいえ、普段はお酒を買ってきて、自宅で飲むのがメインの自分にとっては、いい酒場を探して飲み歩く機会はそれほど多くありません。そのため、気に入ったいくつかのお店に何度も通いがちです。

それに、1人でお酒と向き合ってレビューを書いていると、行き詰まることもあります。そんな時にお気に入りのお店に行くと、新しい知識を得ることができ、また新たな視点でお酒を楽しむことができます。なんなら、自宅飲みをより楽しむために、酒場に通っているとも言えるかもしれません。

ここからは、そんなお気に入りの店を3つ紹介します。

日本酒×チーズのペアリングを楽しむ「SAKE PUB 酒夫 SAKEO 日本酒&ワインバー」(東京・高田馬場)

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SAKE PUB 酒夫 SAKEO 日本酒&ワインバー」は、高田馬場駅前で2020年11月にオープンした、隠れ家のようなバーです。ソムリエの資格を持つ店主が、1人で切り盛りしています。

このお店の魅力は、「日本酒」と「ワイン」に加えて「チーズ」を専門としているところです。チーズといえば、ワインを合わせるのが一般的ですが、実は日本酒もワインに負けないぐらい、もしくはそれ以上に合うのです。一度体験すると、もうやめられなくなります。

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例えば、フランスの「ロックフォール」という青カビチーズは、“世界三大ブルーチーズ”と評される、とてもおいしいチーズです。ただ、ワインとの組み合わせは難しく、ワインの中でも珍しい甘口タイプがベストと言われています。

しかし、これが日本酒になると、「どの日本酒でも間違いない」と言えるぐらいの相性を見せてくれます。日本酒は必ず糖分を含んでいるのですが、その特徴がよく分かるペアリングの例かもしれません。この時は岩手のお酒「赤武(AKABU) 純米 SNOW EXTRA」に合わせましたが、絶品でした!

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また、ワインの品揃えがいいのもありがたいです。お酒は他の種類のものと比較することで、より個性が感じやすくなります。1種類のチーズを食べながらワインと日本酒を飲んでみると、今まで気付けなかったお酒の個性が発見できるんです。これは、なかなか得難い経験です。

そして、お店の雰囲気もまた魅力的。個室のように落ち着きのある店内はいつも手入れが行き届いていて、店主の気遣いを感じさせます。いつ行っても落ち着いて楽しめるので、ついつい高田馬場へ通ってしまいますね。

至高の“生酒”が味わい尽くせる日本酒専門店「赤鬼」(東京・三軒茶屋)

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続いて紹介するのは「赤鬼」。三軒茶屋の駅近くにある日本酒専門店です。昔から大人気で、予約して訪問するのがおすすめのお店です。

こちらの特徴は、なんと言っても生酒です! 日本酒は出来上がった後に加熱殺菌処理をするのですが、この工程を省いたお酒を生酒と呼びます。とてもデリケートで品質管理が難しいものの、生酒特有の風味があり、ファンも多いのです。

赤鬼はこの生酒のスペシャリストがいるお店で、店内で飲める約100種類のお酒の多くが生酒なのです。

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「赤鬼」で飲む生酒の味わいは、同じお酒であっても自宅で飲むものとは別物! 例えば、こちらは高知県のお酒「南 純米吟醸」です。落ち着いた味わいのキレのいい日本酒ですが、不思議なトロみがあり、舌触りも絶品です。「谷中生姜の肉巻き焼き」がとても進みます。

飲みに行くたび思うのですが、あれほどの数の生酒を最適な状態で管理されているのは、本当に素晴らしいことです。どれを飲んでも、一番飲み頃の状態で提供してくれます。

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こちらは同じく高知県のお酒「亀泉 純米吟醸原酒 CEL-24」です。赤鬼限定のにごり酒の生酒ですね。「CEL-24」というのは高知県で開発された清酒用酵母(お酒をつくってくれる微生物)の名前で、このお酒に惚れ込んだ赤鬼が酒蔵に直接依頼して製造してもらった、にごり酒バージョンの限定品です。

“赤鬼名物”とも言える人気商品ですが、シュワシュワした微炭酸で、きめの細かいにごりとクリーミーな味わいがクセになるすごくおいしい日本酒です。同じく名物のおつまみ「とうもろこしの天ぷら」がばっちり合います。

他にも、赤鬼は入手困難で有名な「十四代」という山形のお酒の品揃えでも有名。最適な管理による最高の品質で飲めるのは、都内でも限られたお店だけ。ぜひ飲んでみてほしいです。

“熱燗”に特化、お酒も店主も熱い酒屋 「つきや酒店」(東京・経堂)

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最後は、小田急線の経堂駅にある酒屋さん「つきや酒店」です。お店で扱っているお酒を、店舗の脇でちょっとしたおつまみと一緒に楽しめる、いわゆる“角打ち”ができる酒屋さんです。

つきや酒店は、4代目の息子さんが2022年から本格的に角打ちサービスを始められました。熱燗にとてもこだわりのある方で、お店で扱っている銘柄をさまざまな温度で飲ませてもらえます。その徹底した温度管理に毎回驚かされています。

日本酒は世界的にも珍しい、温めておいしく飲めるお酒です。日本酒を熱燗にするテクニックは奥が深く、「お酒を調理している」と表現しても過言ではありません

つきや酒店ではそんな熱燗の素晴らしい世界を、気軽かつ奥深く楽しむことができます。これはなかなか自宅で味わうことのできない体験です。

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例えば、フルーティーなタイプの日本酒である高知県の「桂月 CEL24®︎純米大吟醸 50」は、熱燗に向かないとされる“吟醸酒”と呼ばれるお酒です。その理由は、熱燗にすると果物のような香りが飛んでしまうから。しかし、つきや酒店では香りを保ったままで楽しめる、“熱燗の吟醸酒”を飲むことができます。

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また、酒屋さんならではの、ディープな酒蔵トークも興味深いです。写真は滋賀県の「初桜」という銘柄ですが、お父さんと息子さんがそれぞれ異なるお酒を造って販売しています。

味が具体的にどう違うのか。異なるお酒を造ることになった背景には、どのようなドラマがあったのか。造り手の人格が味に現れるのも、日本酒ならではの面白さ。こうした話はいくら聞いても飽きないものです。

いつ行っても新しい発見があるから、何度も通いたくなる

あらためて「自分がなぜ日本酒が好きなのか」を考えてみたのですが、「おいしい!」と感じる原因、その背後にある理屈に興味があるのだと思います。そもそも最初に日本酒にハマったのも、「どうしてお米からこんな華やかな味わいが生まれるのか?」という感動からでした。その理由が知りたくて、日本酒を飲み続けているのです。

今回紹介した3店のように、いつ行っても新しい発見があるお店はそれほど多くありません。そのため少数のお店に何度も通うというスタイルで、外飲みを楽しんでいます。お店で知識を得ると、家飲みがさらに楽しくなる。そして家飲みで行き詰まったら、またお店に行く……。このループが完成すると最高の環境になります。

無限とも言えるほど奥の深いお酒の世界に、終わりはないと思います。大切なお店に通いつつ、追求していきたいですね。

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【著者】

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神奈川健一

神奈川県横浜市在住の40代男性です。日本酒を中心としたお酒の面白さにどっぷりハマってブログを開設しました。購入して気に入った日本酒のレビューを中心に、日々更新しています。
Web:神奈川健一のお酒ブログ
Twitter:@kanagawakenichi
Instagram:@kanagawakenichi

編集:はてな編集部

編集協力:株式会社エクスライト