酒類を提供する飲食店従業員100人に聞いたお客の「NGマナー」とは?

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飲食店において、酒はコミュニケーションをスムーズにしてくれる名脇役です。しかし、「酒は飲むとも飲まるるな」ということわざが示すように、暗黙のルールやマナーがあるにもかかわらず、酔いに任せて困った行為を見かけることもあります。

そこで、今回は酒類を提供する飲食店に携わる方たち約100人へ、お客が意外と気付いていない「NGマナー」に関するアンケートを実施しました。

※「Freeasy」調べn=102
(調査地域:全国 内訳:居酒屋 42、パブ/バル 4、バー 11、カジュアルレストラン 24、その他 23)

自分本位な振る舞いはイエローカード

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「マナー」とは、当然知っているべき行儀や作法のこと、相手を思いやる心ともいえます。ただ残念なことに、飲食店では酒が入るとマナーへの意識が薄れるようで、アンケートの「NGマナーと思うものがありますか」という質問に、約70%が「ある」という結果になりました。

「ある」と回答した人に具体的なNGマナーについて聞いたところ、最も多かった回答は「他のお客さまに迷惑を掛けるような行為」でした。大声を出したり、隣のお客に絡んだり(ナンパ含む)、従業員に横暴な態度を取る、などなど……。確かに、本来であれば静かに過ごせるバーで、「これは飲み過ぎているな」と分かるほど大声で話している人を見かけることがあります。

次に多かった回答は「マスク着用」についてで、新型コロナウイルス感染防止に関連する内容です。また、「入店時や手洗い後の手指消毒」について触れているものもありました。

各自治体により飲食店での感染防止策は異なりますが、「マスク着用」は国が感染防止策として推奨しているもの。このマスク着用に関して詳しく見てみると、入店時はマスクを着用していても、飲食時にマスクを外し、その後、マスクを着用せず会話を続けているケースがあるようです。

飲食時以外は基本、マスク着用を啓発している自治体が多いので、入店時だけではないことを改めて認識する(してもらう)必要があるようです。世情を鑑みれば、このようなマナーは暗黙のルールかと思いますが、そこが“酒の魔力”なのでしょうか——。

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また、注文に関するNGマナーの回答が「マスク着用」と同数ほど見られ、「たくさん注文して残す」「残った料理を持ち帰る」など、満腹中枢も節度も分からなくなってしまうケースがあるようです。「残った料理を持ち帰る」に関しては、衛生的にNGな場合や持ち帰りが可能かどうかは従業員に相談してほしいとのこと。でも “もったいない”と思うのであればどうすべきか——分かりますよね。

その他、「注文後すぐに変更」「まったく手を付けていない料理の支払いを拒否」という声も寄せられました。中でも一番驚いたのは、「持ち込み飲食をする」で、バーやパブ、バル、カジュアルレストランといった業態から回答がありました。

少数・単数回答のNGマナーをいつくか紹介します。

・禁煙なのに喫煙する、皿を灰皿代わりにする

 (煙の出ない電子タバコももちろんNG)

・接客中や料理を運んでいる最中に話し掛けられる

 (会話が止まってしまう、料理が冷めてしまうため)

・予約の無断キャンセル、予約時間や予約人数を守らない

・食器の上などにティッシュなどを置く、灰皿に食べ残しを入れる

 (不衛生なものはお客さま自身でゴミ箱へ)

・値切る、価格について意見する

・従業員への暴言や喧嘩を売る

・見ず知らずのお客に酒を奢ろうとする

自発的なルールやマナーの遵守に期待⁉︎

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かなり多くのNGマナーがあることは前述で分かりましたが、そのNGマナーに対してお店独自の対応策やルールがあるのか調査をしたところ「ある」が44%、「ない」が56%という結果になりました。

「ある」の回答の中で一番多かった対応策は、「お客さまへ直接声掛けをする」。ただ、この対応については、持ち込み飲食や料理の持ち帰り、予約に関することなど、明らかなNGマナーの対応策のようです。

特に持ち込み飲食や無断の持ち帰りなどの行為は売上にも関係するため、すぐに対応しなければ、他のお客が「このお店はこういうことがOKなんだ」と誤認し、もしかすると真似をしてしまう可能性もあります。また、お客同士のコミュニケーションが行き過ぎてしまうような場面では、お店側が直接声掛けをしなければ大きなトラブルに発展してしまう……なんてことがあるかもしれません。

酔いの程度は人により大小あるとはいえ、少なくとも“いつもとは違う”状態の中、毅然とした対応をとる飲食店の従業員の皆さんには敬服です。

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次に多かった回答は「お客さまへのお願いや注意書きを記した貼り紙を壁に貼る」という間接的な対応です。特にマスク着用に関するNGマナーでは、このような対応策をとっているお店が多いようです。また、飲み放題で注文した飲み物を残すお客への対応策として、「飲みきれる範囲内で次の飲み物を頼むよう促すポスターを設置」しているという声も寄せられました。

少数・単数回答の対応策やルールをいつくか紹介します。

・他のお客さまへの行為が悪質な場合は退店を促す

・会員制にする(一見客はお断りする)

・クレーム対応はバイトリーダーか社員の複数名で対応する(一人では対応をしない)

・警察に連絡する

対応策やルールが「ない」という回答に加え、貼り紙での対応も含めると、NGマナーに対し直接お客へ伝えることをしているお店は意外に少ないことが分かりました。

※直接お客へ伝えているお店は「NGマナーがある」と回答した全体の14%程度

注意することで激昂されたり、その場の空気を壊したくないという背景もあるかもしれません。お客は常識を逸脱しない程度に酒を楽しむことが必要なようです。

酒の席は「時間と場所を共有する」ところ

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今回、さまざまなNGマナーについて回答が集まりましたが、ほとんどの内容が「周囲への配慮を」というものでした。この周囲というのは、来店しているお客に限らず、そこで働くお店の従業員に対しても当てはまるものだと思います。

・自分がされて嫌なことはしないでほしいです

・他のお客さまに迷惑が掛からないように楽しんでいただきたいです

・この機会にマナーを知ってほしいです

これらは、アンケートの最後に「NGマナーをする方へのメッセージを一言」という項目で寄せられた声の一部です。NGマナーの内容によっては、「入店禁止」という厳しい対応をせざるを得ないこともあるようです。

お酒が入っているのでしょうがないです。来てくれることに感謝」という寛大なメッセージを寄せてくれた方がいて、驚きもありましたがなんだか嬉しくもありました。酒の席は人と人が接する場所のため、お店もお客も楽しいひと時となるような過ごし方を心掛けたいものです。

 

取材・文/おなじみ編集部

イラスト/松沢ゆきこ