希少な蒸留酒がさくっと楽しめる!有名バーテンダーが手掛けるネオ角打ちの魅力

バーよりもっと手軽にお酒が楽しめたら。今注目のお酒の味見ができたら。それも、1人でふらっと——。そんな要望をかなえるスポットが、角打ちゾーンを併設する酒販店「NOMURA SHOTEN」です。国内外で活躍するバーテンダーが開いた店のコンセプトは、「人とお酒の新たな接点」。どんな空間が広がり、どんなもてなしがなされているのか。そこで味わえる1人飲みの楽しみ方を、ガイド役が案内します。

今回の案内人を紹介

沼 由美子さん

ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)。執筆に『EST! カクテルブック』、編集・執筆に『読本 本格焼酎。』、編集に『神林先生の浅草案内(未完)』(ともにプレジデント社)などがある。

バーテンダーが開いたネオ角打ち&酒販店は、蒸留酒の楽しみを「0から1」にする

都営地下鉄蔵前駅と、都営地下鉄・つくばエキスプレス新御徒町駅の中ほど、下町の風情と自家焙煎の喫茶店や良質な国産茶葉を扱うティーハウス、ワインのセレクトショップなど、感度の高い店が混在するエリアに2022年5月、「NOMURA SHOTEN」が誕生した。 

オーナーは、国内外で活躍するバーテンダーの野村空人(そらん)さん。酒販店を開いたのは、長いコロナ禍でこれからのお酒の売り方や楽しみ方を模索した結果、「バーよりももっとカジュアルに新しいお酒と出合えて、しかも買って帰れる“次世代の酒屋”をつくろう」と思い至ったことによる。

蒸留酒づくりの監修やさまざまな業態のカクテル開発なども手掛ける野村さんがセレクトしたお酒が販売され、角打ちゾーンではそれを味わうことができる。

「NOMURA SHOTEN」オーナーの野村空人さん。21歳で単身渡英、約7年間ロンドンのバーでバーテンダーとして活躍したのち帰国。「Fuglen Tokyo」にてバーテンダーとして勤め、2017年に独立。2022年に「NOMURA SHOTEN」を、2023年にバー「Quarter Room」をオープン。バーやドリンクのコンサルティングやプロデュースも手掛ける

店を切り盛りする店長の奥川慶之さんは言う。

「ここは蒸留酒の世界を広げるための一歩を踏み出せる場所です。飲んだことのない蒸留酒を気軽に味わってもらい、蒸留酒を飲む楽しみを『0から1』にすることを目指しています」

1人飲みポイント①
大きな窓がある明るい空間。酒販店との併設だからふらっと訪れる1人客が多い

路地を歩くと突如現れるおしゃれな空間。窓も大きくて、思わず足を踏み入れたくなる店構えですね。週末は、開店時間が15時からと早いのもいいですね。

奥川さん

ご近所の方は、本当に通りすがりに寄ってくださいますし、週末などは「建築や空間を実際に見てみたくて」と東京都外の遠方から来店してくださるお客さまもいらっしゃいます。

角打ちゾーンを利用されるお客さまはどんな方が多いですか?

奥川さん

女性が6割、男性が4割程度で、若い方からご年配の方まで幅広くいらっしゃいます。1人客の方は全体の3割くらいでしょうか。お酒を買いに来たついでに軽く飲んで行かれる方もいらっしゃいますし、その逆もあります。目の前に「三筋湯」という昔ながらの銭湯があるので、毎日のように風呂上がりに生ビールを飲みに寄る常連さんもいらっしゃいます。

大人数でわいわいというよりは、少人数でさくっと飲むのに向いていますね。こんなステキな空間で飲めるのは気分が上がりますね。

 

店内の雰囲気が伝わる外観。外から店内の様子が分かることから一見客も多く、銭湯帰りのお客もいる
酒販ゾーンの棚には野村さんが選んだ和洋の蒸留酒が並ぶ。希少なワインやクラフトビール、日本酒なども販売

1人飲みポイント②
知識がなくても楽しめる、好きならもっと楽しい!ユニークなお酒がたくさん

棚には見たことのないお酒の瓶がたくさん。気になっていた焼酎やジンもあります!どのようなラインナップをされているのですか?

奥川さん

ジン、ラム、焼酎、ウイスキー、メスカル、泡盛、ジャンルを問わないスピリッツ……など、国内外の蒸留酒を多く仕入れています。生産量が少ないワインやコラボもののクラフトビール、日本酒なども提供しています。

風呂上がり用に開発したユズやヒノキが香るジンもありますよ。スポーツドリンクのような爽やかさで、ひのき風呂の後のようなウッディーな余韻もあり、1杯目に最高なドリンクです。スモーキーなウイスキーがお好きという方にはメスカル(メキシコ特産蒸留酒)など、ユニークなお酒を取りそろえています。

珍しいお酒がそろっていて、訪れる価値がありますね。これだけの種類があると迷ってしまいそう。

奥川さん

大丈夫ですよ。ほとんどの場合、こちらからお声がけして、どんなタイプのお酒を飲んでみたいかをお聞きし、ドリンクを提案させていただいています。お酒の知識がなくても全く問題ありません。

また、バーで扱っているお酒を立ち飲み感覚で飲んでいただくことを考えていますので、提供の方法はストレート、ロック、ソーダ割り、トニックウォーター割りとシンプルに分かりやすく提供しています。当店オリジナルのレモンサワー専用シロップと合わせてみてもおもしろいですよ。

 

レモンピール、レモン果汁、砂糖を合わせたオリジナルレモンシロップとプレミアムテキーラを合わせて炭酸水割りにしたレモンサワー。ベースはジン、ラム、テキーラから選べる(税込900円)
どのお酒にしようと迷っても問題なし。奥川さんが蒸留酒選びから飲み方までナビゲートしてくれる。奥川さんのおすすめは虎ノ門蒸留所とのコラボレーションジン「AROMATA GIN」、料理担当の濱名竜之介さんは麦焼酎「青鹿毛」が一推し

フードメニューも凝っていて、食べてみたいものがいろいろあります。どんな点に気を配っているのでしょう?

奥川さん

料理は、兜町ホテルk5内のレストラン「caveman」のヘッドシェフ、熊取谷准さんに監修してもらっています。無国籍でクリエイティブな世界観をイメージしてラインナップしています。お酒に合うことはもちろん、立ち飲みしやすいようにお箸で気軽に食べられることを考慮しています。季節ごとにメニューが異なるので、訪れる度に新しい体験ができますよ

 

パッタイ 万願寺唐辛子とハーブピューレ(税込1,300円)と、風呂上がりにぴったりな「AROMATA GIN」トニック(税込1,650円)。舞茸のコンフィとフムス(税込800円)とアルザスのオレンジワイン(税込1,400円/グラス)

1人飲みポイント③
足を運ぶきっかけにもなる、イベントやミニセミナーを不定期で開催

イベントも積極的に開催されているようですね。

奥川さん

近隣のピザ店やコーヒー店、焼き菓子専門店などが集って、「NOMURA SHOTEN」内でポップアップイベントを行っているんです。他にも、テキーラのインポーターによるミニテキーラセミナー、ラムの造り手による原料の沖縄県産黒糖の試食付きセミナーなど、イベントは月に2,3回不定期で開催しています。ふらっと入ってくる方には新しい出合いを提供でき、店側としてもお客さまとの新しい接点がつくれます。全体で見て、とても良い循環が生まれているように思います。

店づくりの段階からイベントを開催する店舗にしたかったので、キッチンはゆったりと広めに設置しています。イベント用に特別に考案した料理やカクテルを提供することもあります

自分の興味関心に合ったイベントなら、入りやすさは増しますよね。「なんだか楽しそう」という雰囲気は興味をそそります。お酒の造り手やインポーターの話を直接聞けるのも貴重ですし、また次のイベントも行ってみようと思ってもらえそうですね。

奥川さん

「人とお酒の新たな接点」をつくることが僕たちの目指すことです。イベントをきっかけにこの場所を知ってもらうこともできますし、ジャンルの違うお店が集まることでお酒以外の世界とクロスオーバーできます。

例えば、オーナーが手掛けるバー「Quarter Room」が東京の西側(世田谷区代田)にあるのですが、東側にある「NOMURA SHOTEN」で西側エリアのレストランやバーとコラボイベントをすることで、東京の東西のつながりを生むこともできます。

倉庫をリノベーションした空間づくりのおもしろさが映える店内

人とお酒の接点となるからこそ、「普段からお客さまと積極的にコミュニケーションを交わすように心掛けています」と奥川さん

物販×カジュアルな味覚体験の両立で、蒸留酒の魅力を届ける

酒販店にしても、角打ちで一杯楽しむにしても、「NOMURA SHOTEN」に並ぶのは、どれも個性が際立つお酒ばかりで、希少なお酒に出合えることも多々。購入目的でやってきたプロやお酒好きが軽く飲んで行ったり、角打ちゾーンで味わった蒸留酒に目覚めて購入したりするケースも少なくない。

「肩肘張らずに、おひとりでもふらっとお立ち寄りください。お酒の知識はなくても、蒸留酒への一歩をここで体験してください」と奥川さんは話す。

通い続けるたびに新しい蒸留酒の扉がどんどん開きそうだ。

取材先紹介

NOMURA SHOTEN


 

取材・文沼 由美子
写真野口岳彦
企画編集株式会社 都恋堂