パフェに、スタッフに、沼る。歌舞伎町・夜パフェ専門店に集う人々

東京・新宿区歌舞伎町。区立大久保公園のはす向かいにある雑居ビルの3階に、和志さん・玄太さんが営む、夜パフェ専門店「ROY TO SILO(以下、ロイトシロ)」があります。パティシエである和志さんが作る芸術的なパフェは、「見た目も味も絶品」とSNSでも話題に。店内は連日満席で、毎日のように通う常連客もたくさんいます。“眠らない街”で食べられるパフェを目当てに、どんな人が通っているのか。店主の2人と、この店に“沼った”人に話を聞きました。

“夜やっているから行く”ではなく、”おいしいから行く“店をつくる

「ロイトシロ」がオープンしたのは2019年。和志さんが当時勤めていたパティスリーを退職したことをきっかけに、パートナーの玄太さんと共に始めました。

「歌舞伎町の性別や年齢にとらわれず、沢山の人が交流するところに魅力を感じていました。また、終電後も営業すると決めていたため、せっかくなら日本一の繁華街であるこの街でお店を出そうと決めました。当時は歌舞伎町で夜に甘い物が食べられるお店はあまりなく、ちょうど夜パフェ文化がはやり始めてきた頃だったので、単なる夜カフェではなく、自分の腕を生かして作るパフェを食べてもらいたいと思いました」(和志さん)

「以前から『いつか二人でお店をやりたいね』と話していたんです。ちょうどタイミングが合って、和志がパフェを作り、僕が接客をする形で店を始めました」(玄太さん)

パティシエとしてフランスでの修業経験もある和志さん(左)と、美容師を経て、アパレルショップや飲食店での接客経験も豊富な玄太さん(右)

提供されるのは、旬のフルーツをメインに作られる2週間限定パフェの他、「とろ生パフェ」というシーズナルで展開されるもの、ホワイトチョコとミントを使った定番パフェ「Silo」があります。どのパフェも、クッキーやクリーム、スポンジなど、手間暇かけて作られた“パーツ”を丁寧に組み立て、見た目も味も計算されています。

左から、取材時の2週間限定パフェは柿を使った「Shimotsuki Meringue Chantilly」(税込1,800円)、ホワイトチョコにミントの爽やかさが加わった「Silo」(税込1,700円)、たっぷりの生クリームが魅力的なシーズナルパフェ「“とろ生”バニラパフェ〜焼き芋ショコラ〜 自家製プリントッピング」(税込1,900円、トッピング料500円)

「歌舞伎町は東京でも忙しい人たちが集う街の一つなので、せめて移りゆく季節を感じてもらいたくて、フルーツで表現しようと考えています。特に一人暮らしの人はフルーツをあまり買わないと思うので、うちで季節を味わってほしいです」(和志さん)

パフェに使うフルーツは「和を大切にしたい」という気持ちから国産にこだわり、値の張るフルーツも積極的に取り入れています。そのため懇意にしている青果店におすすめの旬のフルーツを尋ねたり、作りたいパフェに必要なフルーツの入荷時期を確認するなど、日頃のコミュニケーションは欠かせません。

歌舞伎町ならではの絶妙な気遣いと接客

パフェ専門店ということもあり、現在、お客の7割が女性で占められています。メインの客層は20代後半〜30代の女性で、初回は友だちと訪れ、その後は1人で来店することが多いといいます。

ロイトシロの店内はカウンター7席と壁際に2人掛けのテーブル席が2つと、とてもコンパクト。店内の各所にパフェを楽しむための工夫が施されています。例えば、テーブルの上には一番強いライトを当て、パフェの写真がキレイに撮れるようにしています。また、メニュー表にはパフェの層ごとに使用しているフルーツなどが書かれていて、より楽しみながら味わえるようにしています。

画像加工アプリなどを使わずとも、明るい照明で、できたてのパフェのシズル感をそのまま写真に収められる。「歌舞伎町のお店の中で一番明るい店じゃないかな」(和志さん)

カウンターには、スタッフドリンクの注文ベルも置かれています。これは、お客から和志さん・玄太さんの2人にドリンクを振る舞いたい時に使うベルです。2人に話しかけるきっかけをつかめない時は、スタッフドリンクをきっかけに話しかけてほしい、という思いがあるそうです。

「スタッフドリンク」の注文ベル。和志さん・玄太さんと話したいと思ったときに活用するのも手

「うちは水商売ではなく、あくまでもパフェを食べてもらうための店なので、誰彼構わずこちらから話しかけたりはしません。でも、いつも通ってくれるお客さんとは自然と会話を交わすようになり、仲良くなる人もいます」(和志さん)

「席はお客さん同士の性格などを鑑みてご案内します。それと、ここは歌舞伎町という街なので、お客さんが言わない限りは、この間いつ来た、誰と来たといった話はしません。“秘密”といっては言い過ぎですが、話しても問題ない内容と、そうでない内容はその時々で変わるため、配慮は怠らないようにしています」(玄太さん)

泥酔客の入店も断り、通常は1時間制の時間制限を設けています。そのため、会話に夢中になってしまう人には「アイス溶けちゃいますよ」などと話しかけ、それとなく時間を意識させているそうです。

パフェのおいしさと2人の人柄に“沼る人”が続出!

実際にこの店に“沼った”人たちに、ロイトシロに通う理由やその魅力を聞いてみました。

とわさん

「友だちと訪れて以来、多い時は週5で来ています。やっぱり2週間ごとに変わる限定パフェは食べないとダメなので。特に好きなフルーツが入った推しパフェの時は、1日に何度も食べに来ることもあります。すぐにメニューは変わってしまうので、食べられるだけ食べたいんですよね。あと、半年に一度、『パフェ総選挙』があり、パフェを1杯食べると自分の推しパフェに1票投票できるんです。総選挙で人気のパフェは翌年の同じ時期にまた食べられるので、推しパフェを勝たせるためには何杯も食べないと!限定パフェは本当に絶品だし、和志さんと玄太さんは私の歌舞伎町の“推し”です!」

取材日も、「この後、推し(アーティスト)のライブがあるから」とささっとパフェを食べてさっそうと立ち去ったとわさん。「後でもう一回寄るかも!」という言葉を残していった
まゆおさん

「初めて友だちと来てからもう2年ほど通っています。2週間に一度変わるパフェはすべてコンプリートしたいという気持ちが強くて、限定パフェとフードメニューのキーマカレーをよく食べています。ある時、和さん(和志さん)も玄ちゃん(玄太さん)と同じ趣味を持っていると知り、それから一緒に遊ぶようになりました」

コロナ禍の時期に和志さんが通っていたジムのトレーナーと結婚したというまゆおさん。婚姻届の承認欄は和志さん・玄太さんがサインしている

「うさじさんのキーマカレー」(税込1,200円)は、「いずれカレー店を開きたい」との夢を持つアルバイトが仕込んでいる。まゆおさんのようにカレーとパフェをセットにして頼む人も多い
ごらさん

「元々まゆおさんと友だちで、私も趣味を通じて和さん・玄ちゃんと仲良くなりました。実は3カ月前に関西に引っ越したのですが、これからはロイトシロに行くために帰ってこようと思っています。なんと言ってもこのお店の魅力は2人の人柄です。パフェのおいしさも魅力だけど、2人に癒やされる人も多いと思いますよ」

この日はたまたま上京していたごらさん。久しぶりの和志さんのパフェを堪能していた
ぶんさん

「私はライブハウスで働いていて土日は外出できないことが多いのですが、2週間に一度は必ず限定パフェを食べに来ています。次はいつパフェが食べられるだろう、といつもスケジュールを考えていて、あまり来られない時は一度に2,3種類のパフェを食べることもあります。ここのパフェを食べないと、仕事のモチベーションが上がらないんですよ。自分のメンタルを維持するためにも食べに来ていますね。通ううちに、和志さんも玄太さんも仲良くしてくれて、いろいろな話ができるようになりました。いつも『おいしい』っていう癒やしをもらっています」

「ストレスがたまっても、1日の最後にここのパフェを食べればリセットできる」と話すぶんさん

パフェだけでなく人柄に引かれてお客が集まる

「ロイトシロ」に沼った常連客に話を聞くと、誰もがパフェの魅力と共に和志さん・玄太さんの人柄に引かれていることが分かります。

「ほとんどのお客さんがパフェを食べてすぐに帰られるか、お連れの方とお話して帰る、という感じです。その中で僕らと仲良くなる人は、まず接客を担当している僕と話すようになってから、という方がほとんどですね。和志は細かい調整を加えながらパフェを作っているので、営業中も基本はあまり話さないんですよ」(玄太さん)

取材時は常連客ばかりで、玄太さんの一言で店内は大爆笑に包まれた

大声を出したり、時間を守らなかったり、場を乱すような発言をするなど、目に余る迷惑行為はもちろんNG。マナーを守りながら、ワクワクした気持ちでパフェを楽しみに通っていると、いつの間にか二人と仲良くなっている。そうして沼った人がこの店にはたくさんいるようです。

取材先紹介

ROY TO SILO


 

取材・文別役 ちひろ

コピーライター、ライター、編集者。東京生まれ。まち歩きフリーペーパー制作に長年携わる。旅や食、建築にまつわる執筆が多く、銭湯のフリーペーパーで10年以上執筆している。特にキリスト教会の建築・美術の愛好家で、26都道府県・約900軒の教会を訪ね歩いている。

写真新谷敏司
企画編集株式会社 都恋堂