趣味の料理や器集めの様子をブログで発信しているぶち猫さんには、外食でしか得られない楽しみもあるのだそう。自分で作って食べる喜びを知っているぶち猫さんが「通いたくなる店」とは。
こんにちは。ぶち猫と申します。
普段は、「ぶち猫おかわり」と題するはてなブログやTwitterで、自分の作った料理の写真をアップしたり旅行記を書いたり、外食したときにおいしかったものを紹介したりしています。
今回は、わたしが料理にハマった理由、そして自炊も好きなわたしがあえて外食をする理由についてお話したいと思います。わたしが愛してやまない2軒のお店もご紹介しますね。
- わたしが「料理」のブログを始めたきっかけ
- “作って食べる”を楽しむわたしが「外食」をする理由
- 酒・料理・人との出合いを教えてくれた「酒と肴 ひらの」
- いつ訪れても新しいクラフトビールと出合える「BrewDog Roppongi」
- 「酒と料理との出合い」が、自分の世界を広げてくれる
わたしが「料理」のブログを始めたきっかけ
わたしは食べることが大好きで、普段から自宅で料理することはもちろん、初夏には梅仕事(梅が旬を迎える季節に自家製の梅干しや梅酒などを作ること)、夏には流しそうめん、年末年始には本格的なおせちを作ったりして、季節ごとの食をいろんな形で楽しんでいます。
料理を作るうちに、「せっかくなのでちゃんと記録しておきたい」という気持ちが湧いてきて、写真はデジタル一眼レフで撮影するようになり、自分の言葉でブログに残すようになったんです。
かれこれ8年ほどブログを書き続けていたら、企業や媒体からお声かけいただくことが増え、今回のようなWeb記事を寄稿するようにもなりました。2019年には書籍を出版させていただく機会にも恵まれ、ブログやTwitterから始まった活動がご縁を呼び、日々広がっていくのを実感しています。
“作って食べる”を楽しむわたしが「外食」をする理由
そんなわたしですが、最初から凝った料理を作っていたわけではありませんでした。
社会人になってから初めの数年間はとにかく忙しく、平日はほとんど深夜まで残業、土日にまで終わらない仕事を片づける日々……取引先から頼まれれば出勤して、やっとの思いでもぎ取った休日は夕方までぐったり寝て過ごすという生活をしていました。
自分の心が躍るような物事に出合っても、「趣味は、いつか仕事が落ち着いたらやろう」と先延ばししていたのですが、あるとき気が付いたのです。自分から環境を変えない限りは、仕事が落ち着く日なんてやってこない、ということに……。
そのことに気付いてから、もともと食べることが好きだったわたしは、平日の仕事を少しだけ早く切り上げ、24時間スーパーで買い物をして自炊するようになりました。そして、すぐに普通に自炊するだけでは物足りなくなり、どんどん料理にのめりこんでいったのです。
それまで「外食」と言えば、取引先とのお付き合いか、仕事の合間に駆け込むようなランチだけだったのですが、自分から積極的に気になっていたお店を予約して、おいしいものを食べに行くようにも。
お店で食べたおいしいものを自宅で再現したり、店主に聞いた調理のコツを自炊に生かしてみたり、この頃から、わたしにとって「外食」は自炊での料理のレベルを上げる重要な情報源にもなっています。
そして今では、平日の仕事帰りに友人たちと気軽に飲んだり食べたりできる、「行きつけのお店」もできました。
そんなわたしが通っている、お酒とおつまみがおいしいだけじゃない、居心地が良くてつい行きたくなってしまうお店を紹介します。
酒・料理・人との出合いを教えてくれた「酒と肴 ひらの」
わたしの行きつけのお店と言えば、東京・新橋にある「酒と肴 ひらの」。友だちと飲み会をすることになればテーブル席を予約し、平日に「夕ご飯を作るのが面倒だなぁ」と思えばふらっと立ち寄り……と、何かと理由をつけては通っています。
「酒と肴ひらの」は、日本酒のお店です。フロアには日本酒のお品書きが掲示されているのですが、実際に置いてある数はそれよりもずっと多く、冷蔵庫にぎっしりと日本酒がそろっています(冷蔵庫の上には常温のお酒もあります)。
冷蔵庫を覗いて飲んでみたいお酒を探すのが楽しいですし、迷ったときにはどんなお酒を飲みたいかを伝えると、店主の瀬川さんがピッタリのお酒をセレクトしてくれたりもします。
瀬川さんが運営するTwitterでは、新入荷の日本酒の解説が毎日のように投稿されていて、その解説を読んで、来店したときに気になったものを頼むのも醍醐味(だいごみ)です。
わたしはお酒が好きなのですが、実はそれほど強くはないので、量をたくさん飲むことができません。なので、お店に伺うときはいつも、「今日一番おすすめのお酒」を教えてもらい、お酒との新しい出合いを楽しみにしています。
最近よく耳にする日本酒の新ジャンル「クラフトサケ」とも、このお店で出合いました。特に、伝統的な日本酒にクラフトビールの技術を掛け合わせて造っている「ぷくぷく醸造」、果物・ハーブ・カカオのような副材料を用いた日本酒を造っている「LIBROM」などのお酒がお気に入りで、酒販店で買って自宅でも飲むようになりました。
日本酒の種類が多く、ラインアップが充実していることに加えて、酒の肴がおいしいのも「酒と肴 ひらの」に通い続ける大きな理由です。特に、宮城県気仙沼から取り寄せている「お刺身」は絶品なので、行くたびに必ず頼むことにしています。
常時2種類出てくるお通しも気が利いていて、とてもおいしい。わたしは寒い季節に多く出てくる「塩豚汁」が特に好きです。汁物で日本酒を飲む良さを、このお店で知りました。
肴は他にもたくさんあって、頼むとすぐに出てくる「鶏レバーの山椒漬け」、焼き立て熱々の「だし巻き玉子」も捨てがたい。
食いしん坊のわたしにとって、料理がおいしいのはとても重要なことなのですが、このお店に通ってしまう最大のポイントは、店主の瀬川さんの人柄です。日本酒に精通していて、聞くとなんでも教えてくれる。お店がどんなに忙しくても、いつも穏やかに対応してくれる。一見のお客さんに親切なのはもちろんですが、この瀬川さんの人柄に惹かれて通う常連さんも本当に多く、お店の雰囲気がとても心地よいのです。わたし自身、このお店で知り合って遊びに行くようになった常連の友だちが何人もいます。
いつ訪れても新しいクラフトビールと出合える「BrewDog Roppongi」
もう一軒、ここ数年気に入って通っているお店が、六本木にある「BrewDog Roppongi」です。このお店は、イギリス発のブルワリーである「BREWDOG」のオフィシャルバー。
「BREWDOG」のビールは、いろいろなバーや酒販店で展開されているので、飲んだことがあるという人も多いのではないでしょうか。ここはその本拠地的なバーなので、もちろん「BREWDOG」のビールをフルラインアップで飲むことができます。
面白いのはそれだけではありません。タップは常時20種類以上もあり、国内外のクラフトビールがずらりと並んでいます。次々と多種多様な銘柄のビール樽に切り替えがされているので、週1で通っても毎回新しいビールとの出合いがあります。
わたしは、このお店で、「松本ブルワリー」「UCHU BREWING (うちゅうブルーイング)」「伊勢角屋麦酒」「鬼伝説」といった好みのビールを見つけられました。
日々の開栓情報は、ときどき更新される「BrewDog Roppongi」の公式Facebookにも掲載されていて、そのラインアップを眺めていると飲みに行きたくなっちゃうんですよね。
さらに、店内にある冷蔵庫には、色とりどりの缶ビールと瓶ビールがぎっしり。これは店内で飲むこともできるし、買って持ち帰ることもできます。今日はもう飲めないけど、明日家で飲みたい! という気分のときは、わたしもよく持ち帰って楽しんでいます。
もちろん、フードもおいしい。アメリカンテイストなフードが充実していて、がっつり食べたいときにも少しだけつまみたいときにも、ピッタリな一品があり、こちらのわがままに付き合ってくれるような懐の深さがあります。
わたしのイチオシは、「バッファローチキンウィングス」。鶏の手羽先の素揚げに自家製のホットソースを絡め、胡瓜とブルーチーズのソースが付いてきます。ビールがぐいぐい進むような、絶妙なピリ辛加減が病みつきになる一皿です。
夜ご飯をここで食べちゃいたいときには、さらにパティの分厚いハンバーガーか、チーズのたっぷりのったピザをオーダー。2軒目として行くときには、揚げたての自家製ポテトチップスが、ちょっとつまみたいときのお供に最高です。
間口はこじんまりとしているのですが、奥の方にはテーブル席が並んでいます。週末はやはり混みますが、それでもお店のキャパが大きめなので、急に思い立って訪れてもお店に入れることが多いので助かっています。
入り口のあたりはカウンター席になっていて、一人でふらっとやってきてビールを飲んでいるお客さんも多いです。
六本木という場所柄か、店員さんは多国籍チームで、英語も普通に通じる雰囲気です(もちろん日本語も全く問題ありません)。基本は放っておいてくれる気軽な接客なのですが、ビールの情報などを知りたくてこちらから話しかけると、とてもフレンドリーに教えてもらえます。お店の雰囲気がとてもいいのは、店長の太田さんのお人柄かなと思います。
「酒と料理との出合い」が、自分の世界を広げてくれる
こうしておすすめのお店の話を書いていて思ったことは、わたしは「新しいものと出合いたくて外食をしているんだな」ということでした。
自炊するのももちろん楽しいし自分で作るご飯も大好きなのですが、お店に行くと、普段は自分から手に取らないようなお酒や料理との出合いがある。その出合いが、自分の世界をどんどん広げてくれるんです。そんなところが楽しくて、外食もやめられないんだと思います。
「酒と肴 ひらの」と「BrewDog Roppongi」に共通している点は、お酒の作り手との距離が近いお店であるところ。
「酒と肴 ひらの」は、酒販店との付き合いも深いのですが、瀬川さんが自ら積極的に酒蔵巡りもしていて、日本酒製造や販売の関係者がお店を訪れることも多いです。時々、酒蔵さんを招いてイベントが開かれることもあります。
おいしい肴をつまみながら、東京では入手しにくい日本酒を味わい、生産者の方からしか聞けないお話にも耳を傾ける。なかなかない機会です。
「BrewDog Roppongi」は、経営母体がブルワリーなので生産者そのものなのですが、国内にある他のブルワリーとも密なつながりを持っていて、他のお店ではお目にかかれないレアなビールが置いてあったりします(さりげなくコラボビールがあったりもするので、ますますチェックが欠かせません)。
以前は新しいお店の開拓に夢中になっていた時期もありましたが、最近はおなじみのお店に何度も通って、そのお店のこと、扱っているお酒のこと、お料理のことを深く知る楽しみが分かるようになってきた気がします。何よりもおなじみのお店は、いつ行っても間違いなくおいしいお酒が飲めるので、絶対的な安心感があります。
初めは忙しい日々の癒しとして、一人きりで始めた料理。今では、作り手のこだわりを感じられるお店でしか出会えないお酒や料理、そして人たちのおかげで、自分が作る料理の世界がますます広がりました。わたしが通いたくなる店は、そうした「出合い」に満ちた場所なのかもしれません。
あの人が通う店は?
【著者】
ぶち猫さん
ブログやTwitterで「食」に関することを日々発信するブロガー。ぶち猫と一緒に暮らしており、趣味は料理・お菓子作り・器集め。著書『日々をたのしむ器と料理』。
ブログ:ぶち猫おかわり
Twitter:@buchineko_okawa
編集:はてな編集部
編集協力:株式会社エクスライト