接客が上手い人の特徴とは? 飲食店の接客レベルを高める対策と心構えを解説

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「接客レベルを高めたい」と考える飲食店のオーナーや従業員に向け、接客が上手い人の特徴やテクニック、考え方を解説していきます。

接客のノウハウについて教えてくれたのが、『リピート率80% 心をつかむ接客術』の著者で接客コンサルタントの仲亀彩さんです。具体的なテクニックだけでなく、良い接客を生むマニュアルの作り方、お客さんを迎える際の心構えなどについて話を聞きました。

接客の上手い人を真似したい人、スタッフの接客力を高めたいと考えている経営者の方は、ぜひ参考にしてください。

こんな人におすすめ

  • お店全体の接客レベルを上げたい人
  • 飲食店を経営して1〜2年目の店主やオーナー
  • お店の成長が伸び悩んでおり、打開策を求めている人
  • お客さんと話すのが苦手、接客が難しいと悩んでいる人

接客コンサルタント 仲亀彩さん

鉄板焼シェフ・接客コンサルタント
仲亀彩

1984年山梨県生まれ。15歳の頃から飲食業界に携わり、関東学院大学卒業後は独学でシェフの道へ。これまで接客してきたお客様は12万人以上。20代で外資系一流ホテルの高級鉄板焼店でカウンターシェフに抜擢され、その優れた接客術と調理の腕で驚異のリピート率80%を誇る。2022年に自身のお店「高タンパク!夢のハンバーグ byあやシェフ」をオープン。接客の経験やノウハウを生かし、接客コンサルタントとしても活躍中。各メディアに出演する他、自身のYouTubeでも情報を発信。著書に『リピート率80% お客様の心をつかむ接客術』『お客様の心をつかむ魔法のほめ言葉事典』など。

YouTube:仲亀彩の接客術あやシェフ 仲亀彩

 

良い接客が飲食店にもたらすメリット

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接客レベルの高いお店では、次のような好循環が生まれると言います。

  1. お店の居心地が良く、お客さんに好印象を与えられる
  2. リピート顧客が増える
  3. お店の雰囲気が良くなり、新規のお客さんが入りやすくなる
  4. 客単価や売上アップにつながる
  5. 働きやすい職場のイメージから、求人募集への応募が増える

上記のように、接客が優れていればリピーターだけでなく、新規顧客の獲得にもつながります。特に接客の上手いスタッフには固定客が付きやすく、さらなるリピート率アップが期待できます。顧客の増加や売上アップが持続すれば、新規店舗の出店にもつながるでしょう。

一方で、接客に問題があった場合、上記とは真逆の悪循環が生まれる可能性があります。例えば、お客さんの滞在時間が減ることで客単価が上がりにくくなる、リピート率が下がるなどの問題が出てきます。中でも、もっとも大きな問題となるのが集客です。

接客コンサルタント 仲亀彩さん

 

  • 接客でお客さんに悪印象を与えてしまうと、口コミサイトにネガティブなコメントが書かれ、お店の評判が下がってしまいます。リピーターだけでなく、新規顧客も集まりにくくなり、お店側はチラシやSNSなどで集客に力を入れなければならなくなります。集客するための対策に時間をとられたり、費用がかかったりする可能性もあるでしょう。

 

上記のように、接客の良し悪しだけでもお店の経営状況は大きく変わっていきます。繁盛店を目指すには、お店の接客レベルを上げることが必要不可欠と言えるでしょう。

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「良い接客」とは具体的に何か

良い接客を提供するには「お客さんが求めるサービスを提供できているか」がポイントになります。

接客コンサルタント 仲亀彩さん

 

  • お客さんが求めるサービスは十人十色です。その要望を把握し、いかにお客さんが過ごしやすい環境を整えるかが良い接客の鍵と言えます。さらに、お客さんが求めるサービス以上のものを提供できれば、より素晴らしい体験が提供できるはずです。

 

例えば、ゆっくりと料理を楽しみたい人たちには会話を邪魔しない接客をする、軽く一杯を楽しみたい人にはスピーディーに対応するなど、お客さんごとに対応を変えることが大事です。この細やかな気配りが、お客さんの満足度を高めます。

飲食店の接客に必要な心構えと事前準備

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喜ばれる接客を実現するには、お客さんの要望をくみ取ったり、求められるサービスを適切に提供したりすることが必要です。お客さん一人ひとりのニーズを読み取るには、「自分に余裕を持つことが大事」と仲亀さんは言います。

1. 時間の余裕をつくる

まず大事なのは、時間に余裕を持つことです。開店前の準備は時間に余裕を持って行いましょう。開店準備をオープン時間ギリギリまで行っている状態では、お客さんを気持ちよく迎えられません。開店前の時間配分は、店主やオーナーが調整する必要があります。その日のスタッフの能力やスキルを考慮しながら、出勤時間を調整しましょう。

2. 心の余裕をつくる

心の余裕がないと、良い接客は生まれにくい傾向にあります。個人でもできる準備のひとつが、お客さんとの話題の準備です。お店の利用目的など、予約のお客さんの情報が事前に分かれば、あわせて会話の準備をしておくと心の余裕が生まれるでしょう。その日の天気やニュースなども会話のきっかけになるため、情報のインプットを意識してください。

また、良い接客を提供するには、気持ちの切り替えも重要です。プライベートで嫌なことや心配事があっても、その感情は一旦忘れ、仕事モードに切り替えるようにしましょう。プライベートの感情を引きずっている状態では、良い接客につながりにくいからです。

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接客が上手い人の特徴4つ

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接客が苦手と感じる人は、まず接客レベルの高い人を真似してみるのもひとつの手です。実際、接客が上手い人はどんな特徴を持っているのでしょうか? 4つに分けて解説します。

  1. お客さんをよく見ている
  2. お客さんの要望を察知し、行動できる
  3. お客さんとの距離感の測り方が上手
  4. お店に合わせた接客スタイルを身に付けている

1. お客さんをよく見ている

接客の上手な人は、お客さんの行動から服装、持ち物まであらゆる部分をくまなく観察しています。お客さんに注目することで、そのニーズを的確に把握できるからです。

接客コンサルタント 仲亀彩さん

 

  • 例えば、他のお客さんより薄着の方が来店した場合、暑さに弱い方だと判断して空調のよく効く席をご案内するなど、対応は変わってくるはずです。一緒にいらっしゃった方々の関係性からもニーズをくみ取ることができます。お祝いの場面なら、簡単なプレートを用意するなどのサービスも喜ばれます。

2. お客さんの要望を察知し、行動できる

お客さんの求めるサービスを察知するだけでなく、すぐ行動に移せることも、接客が上手な人の特徴です。お客さんが次にどう行動するか、何が欲しいかをいかに考えられるかがポイントになります。

接客コンサルタント 仲亀彩さん

 

  • お客さんがキョロキョロと辺りを見回していたらトイレをご案内するなど、先回りして対応できる人は接客が上手いと感じます。自分がお客さんの立場だったら、と想像力を働かせて考えてみると良いでしょう。

3. お客さんとの距離感の測り方が上手

接客レベルが高い人は、お客さんとの距離感を測るのが非常に上手です。例えば、常連のお客さんにはある程度フレンドリーに接したり、新規のお客さんにはいつもより丁寧に接客したりなど、相手に合わせて接客スタイルを調整することができます。その適度な距離感が、お客さんの居心地の良さにつながります。

接客コンサルタント 仲亀彩さん

 

  • この距離感の測り方を身に付けつつ、自分らしさを出せるようになると、接客の質がぐんと上がります。お客さんにとっても、ただお店に行きたいというだけでなく、「良い接客をしてくれたあの店員さんにまた接客してもらいたい」というふうに、来店目的の一つになる可能性があります。

 

4. お店に合わせた接客スタイルを身に付けている

お店のコンセプトに合わせて接客スタイルを変えることも、お客さんに居心地の良さを感じてもらうには重要です。例えば、お客さんの年齢層が高く落ち着いた雰囲気のお店なら、ゆっくりしゃべったり声を低くしたりするなどの接客スタイルが好まれます。逆ににぎやかな居酒屋などでは、元気で明るい接客が求められるでしょう。

飲食店で好印象を与える接客の身に付け方

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次に、先ほど紹介した「接客が上手い人の特徴」を身に付けるための具体策を解説していきます。

1. お客さんの全てを観察する意識を持つ

まず「お客さんの全てを目で追うくらいの気持ちで見ること」を意識しましょう。全てを把握することは現実的に不可能ですが、意識を変えるだけでも観察する力が身に付きやすくなります。

じっと見つめるとお客さんに不快感を与えてしまうので、お客さんのいる空間全体を広く観察することがポイントです。目線を外しながらでも、シルエットで気づけることが多くあります。

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  • お客さんのことをよく見ることで、要望に気づきやすくなります。グループの中にトングを触っているお客さんがいたら、料理をシェアするための取り皿を提供するなど、求められる以上のサービスにつなげることができます。

 

2. 自分自身を知ること

良い接客ができるようになるには、お客さんのことだけでなく、自分自身を知ることも大切です。仲亀さんは以下の3つのポイントを挙げます。

  • 自分のクセを知る
  • 自分の修正点を知る
  • 自分の価値(得意なこと)を知る

上記をテーマにし、スタッフ同士でディスカッションする機会を設けることも有効です。共有することにより、修正点が改善できていない場合は、スタッフ同士で声をかけやすくなります。スタッフのコミュニケーションが円滑になると、お店の雰囲気自体も良い方向に変わっていくでしょう。

特に、3つ目のスタッフの「価値(得意なこと)」は、そのままお店の価値になります。スタッフの特徴を把握することも、店主やオーナーにとって必要なスキルです。

接客の良い店づくりのためにマニュアル化できること

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「マニュアルを作る場合は、マイナス行為を減らすルールがあると効果的」だと仲亀さんは言います。例えば、次の2点です。

1. 衛生面のマニュアル

臭い、汚いなど不衛生なお店は、お客さんの居心地が悪くなり、満足度を下げる要因となってしまいます。「1週間に一度はグリストラップ(厨房に設置されている、油脂や生ゴミなどが直接下水などへ流出することを防ぐための装置)を掃除する」など、店内の衛生を保つためのマニュアルが必要不可欠です。

2. スタッフの接客態度に関するマニュアル

スタッフの接客態度は、お店の雰囲気に関わります。例えば、仏頂面での接客や高圧的な態度はお客さんに不快感を与えてしまう行為なので、マニュアルには明確に「こういう接客はやめましょう」と記載すると良いでしょう。

接客コンサルタント 仲亀彩さん

 

  • 「笑顔で接客しよう」というポジティブな言い回しより、「仏頂面で接客はしてはいけません」など、NG行為をはっきり書いた方がスタッフに響きやすいと思います。特に規模の小さいお店は、現時点でできていないことをまとめたお店独自のマニュアルが効果的です。そのためには、まずスタッフの能力を知ることが大事です。

 

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スタッフの接客レベルを高める指導

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お店の雰囲気を良くするためには、スタッフ一人ひとりの接客レベルを高めることが大事です。実際に、どのように指導したら良いのでしょうか?

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  • 店主やオーナーなどお店のトップの人が、スタッフの失敗を許すことです。そして、チャンスを与え続けることが大切です。失敗に対して怒るだけで終わるのではなく、原因や改善点を考え、指導するようにしましょう。スタッフの成長速度がぐっと早くなるはずです。

 

上記を実現するには、何より店主やオーナーが自ら動いて、手本を見せることが求められます。スタッフたちは、店主やオーナーの行動や接客態度をよく見ています。また、自分自身が試してその情報を共有することで、より効率的にスタッフの接客レベルを上げることができます。

「店主やオーナーだって失敗していい」と話す仲亀さん。自分自身が失敗を経験することで、スタッフの失敗も理解できるようになります。失敗は経験やノウハウとなり、お店全体の成長につながるはずです。

近年の飲食店ならではの接客のポイント

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タッチパネルを使ったお店、公式SNSで集客するお店など、これまでとは違ったスタイルで接客する飲食店も増えています。近年の飲食店のスタイルにおける、接客のポイントも紹介します。

  1. タッチパネルやスマホ注文の場合
  2. 海外からの旅行客に対する接客
  3. 公式SNSなどでのお客さんとの交流

1. タッチパネルやスマホ注文の場合

タッチパネルやスマートフォンでお客さん自身に注文してもらう場合、お客さんと直接関わって接客する時間がぐっと減ってしまいます。そこで、少ない時間でも印象に残る接客をするように心がけると、良い接客だったと感じてもらいやすくなるそうです。まずは、お会計時の接客に注力してみましょう。

接客コンサルタント 仲亀彩さん

 

  • 注文内容を見て「季節のメニューはどうでしたか?」など、ひと声かけるところから始めてみてはどうでしょうか。そのひと言があるだけで、お店に対する印象は変わってくると思います。

 

一方、注意点は、機械も含めて店づくりだと認識すること。機械のミスで注文の間違いがあったとしても、自分たちにも責任があると考え、誠心誠意対応することが大事です。認識をあらためることで、便利な機械をよりよく使っていけるはずです。

2. 海外からの旅行客に対する接客

最近は海外からの旅行客も増えつつあります。言葉の通じにくい海外のお客さんには、日本人と同等、もしくはそれ以上に丁寧に接客することが大切です。

接客コンサルタント 仲亀彩さん

 

  • 言葉が通じない分、海外のお客さんは相手をよく見ています。特に、表情やしぐさは思った以上に多くのことを伝えてしまうので、注意しましょう。

 

もし、海外のお客さんとコミュニケーションがとれるのであれば、口コミサイトへの投稿をお願いしてみましょう。英語版のサイトに口コミを投稿してもらうと、お店の評価アップにつながり、海外のお客さんの集客も見込めます。サイトのURLなどを書いた案内カードを事前に作っておくと、よりスムーズに口コミの投稿をお願いできます。

3. 公式SNSなどでのお客さんと交流

LINE公式アカウントやTwitter、Instagramなどでお店の専用アカウントを作っているお店は、お客さんとのコミュニケーションの機会を増やしましょう。お客さんからのメッセージに返信したり、お店に関する投稿に対して「いいね」を付けたりするだけでも、お店に対する印象は変わってきます。

接客コンサルタント 仲亀彩さん

 

  • 非対面でも、お客さんとのコミュニケーションは十分にとれます。私もSNSでデリバリーの注文を受け付けていますが、こちらから積極的にメッセージを送るようにしています。一方的なメッセージでも、気持ちは伝わっていると感じています。中には、50回以上リピートしてくださっているお客さんもいますよ。

 

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接客力を上げてお店のファンを増やそう

飲食店を継続させるには、新規顧客の獲得以上に、リピーターの存在が重要です。お店全体の接客レベルを高めることで、お店のファンを増やし、リピーターの獲得につなげることができます。

特に、接客が上手い人は、お客さんの要望をくみ取り、求める以上のサービスを提供できるのが特徴です。お客さんのことをよく観察し、次の行動を予測する想像力を磨いて、お客さんの気持ちに寄り添ったサービスの提供につなげていきましょう。

リピーターを増やすには、LINE公式アカウントの活用も有効的です。クーポンの発行やポイントカード機能で、お客さんの再来店を後押しすることができます。まずは以下をチェックしてみてください。

 

取材・文:大瀧亜友美

編集:はてな編集部

編集協力:株式会社エクスライト