小さい飲食店の開業に必要なコストを知る。開業までのステップや必要な資格、届け出も合わせて解説

飲食店にのれんをかける店員のイラスト

小さい飲食店を開業して、こだわり抜いた店内とおいしい料理、素敵な空間をお客さんに提供したいとお考えの方もいらっしゃるでしょう。「お客さん一人ひとりと向き合える」「細かいところまで目が届く」「失敗のリスクが比較的小さい」といったメリットがある一方、初めて飲食店を開業する場合は注意したい点もあります。

今回は、小さい飲食店を開くメリットとデメリット、開業資金の目安や飲食店を開業するために必要な資格・届出などを紹介します。

こんな人におすすめ

  • 飲食店を小さい規模で始めたい方
  • 飲食店を始めるために何が必要か知りたい方

小さい飲食店を開業するメリット

小さい飲食店を開業するメリットについて見ていきましょう。

1. 初期コスト、ランニングコストを抑えられる

小さい飲食店の開業は、開業資金を抑えられるというメリットがあります。物件取得費、内外装工事の費用、厨房機器や什器、調理器具の購入費といった初期費用が大規模店舗と比較して抑えられる傾向があり、その分、開業のハードルも低くなります。初期費用だけでなく、家賃、光熱費など、店舗維持に関わるランニングコストの負担も軽減されます。

2. 細かい部分まで目が届く

小さい飲食店は店舗スペースが狭い分、経営者の目が細部まで行き届きやすいです。また、インテリアや照明を工夫することで、お店は小さくとも伝えたい世界観をつくり出すことができます。掃除にかかる手間も少なくできるため、清潔感を保ちやすいというメリットがあります。

3. お客さんとの距離が近い

小さい飲食店では、お客さんとの距離が自然と近くなります。会話やコミュニケーションが活発になることで、細やかなサービスが提供できるでしょう。密な接客によって常連客獲得につながりやすいというメリットもあります。

小さい飲食店を開業するデメリット

飲食店の店員が悩んでいる写真

小さい飲食店で開業するデメリットについて解説します。

1. 売上の最大値が低くなる可能性がある

大規模なお店と比べると席数が限られるため、満席の状態が続いても思うように売上が伸びない可能性があります。客単価を上げる、回転数を多くするなど、売上を底上げするには工夫が必要です。

2. 仕入れ値がかさんでしまう可能性がある

上述の通り、受け入れ客数に限りのある小さい飲食店では、食材を大量発注してコストダウンを図ることが難しく、仕入れに必要な費用もかさむ可能性があります。生鮮食品以外の消耗品はできるだけまとめて発注するなど、コスト削減に取り組みましょう。予約客を増やし、ある程度の仕入れ量を見込めるようにしておくのも一つの方法です。

3. 人員を十分に確保しなくてはならない

小さい飲食店では従業員が少ないケースもあるでしょう。しかし、こうした状態では従業員や経営者本人の急な休み、体調不良といった不測の事態に対応できなくなる場合があります。人手が足りず休業するという状況をつくらないためにも、「スケジュールにゆとりを持たせる」「シフトを柔軟に組めるだけの人員を確保する」といった対策を考えておきましょう。

小さい飲食店の規模はどれくらい?

「小さい飲食店」の広さに基準はありませんが、一般的に10~15坪程度と認識されています。10坪は20畳程度で、1人でも飲食店が運営しやすい広さです。

客席数に関しては間取りや内装によって上下しますが、10坪であれば9~15席程度を確保できます。経営者の飲食経験の有無、業態とそれにともなうオペレーションコストなどを考慮し、お店の規模を決めましょう。

小さい飲食店開業に必要な資金の目安

小さい飲食店の開業資金を用意するにあたり、とりわけ大きな費用になるのが「物件取得費」「内外装工事費」です。

「物件取得費」は、店舗用物件の契約に必要なお金です。保証金として数カ月分の家賃と礼金、仲介手数料、オープンまでの空家賃を合計した金額で、一般的に家賃の10カ月分が相場です。

「内外装工事費」は、飲食店として経営していくために必要な厨房や店内の工事の費用で、希望する内容やグレードによって金額が異なります。厨房だけでなく空調や配線、外壁の塗装なども含まれます。

一般的に、以下の金額が小さい飲食店の開業資金の目安です。あくまで一例のため、内装業者などに見積もりを依頼して必要資金を割り出しましょう。

物件取得費
家賃10万円の物件の場合、130万円程度。概算の内訳は以下のとおり。


保証金(家賃10カ月分)……100万円
礼金(家賃1カ月分)……10万円
仲介手数料(家賃1カ月分)……10万円
前家賃……家賃1カ月分+日割り10万円+日割り分

内外装工事
400万円程度

機械や什器、備品など
190万円程度

運転資金(半年)
300万円程度

飲食店を開業するために必要な資格

飲食店を開業するために必要な資格について見ていきましょう。

食品衛生責任者

飲食店を開業するためには、各都道府県の食品衛生協会が開催している食品衛生責任者養成講習を受講して食品衛生責任者の資格を取得しなければなりません。申込方法や受講料は地域によって違うため、受講したい地域の食品衛生協会の情報を確認しましょう。

資格取得には、食品衛生学、公衆衛生学、食品衛生法についての講義を受けた後、テストを受ける必要があります。自治体によっては講義をオンラインで実施している場合もあるため、事前に確認しておくといいでしょう。資格取得費用は1万円程度です。調理師免許などの資格を持っていれば、講習が免除される場合もあります。なお、調理師免許は店舗の開業に必須ではありません。

防火管理者

防火管理者は、30人以上を収容する予定のお店、不特定多数の人が出入りする施設で必要な資格です。

「甲種」と「乙種」の2種類があり、お店の延床面積によって取得が必要な種類が異なります。店舗面積が延べ300平方メートル以上であれば甲種、300平方メートル未満の場合は乙種または甲種を取得しましょう。

防火管理者は、営業開始までに所轄の消防署に届け出る必要があります。

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飲食店を開業するために必要な届出

必ず届出が必要なもの

飲食店の営業のために必ず届出が必要なものがあります。

1. 食品営業許可申請

店舗の規模や業態を問わず、全ての飲食店に必要な申請書です。提出先は各自治体の保健所で、保健所の検査で問題がなければ営業許可が交付されます。店舗完成前に、保健所で申請内容について相談しておきましょう。

2. 火を使用する設備等の設置届

店舗でコンロなどの火を使う調理器具や設備を設置する前に、必ず提出しなければならない届出で、提出先は消防署です。届け出が必要な設備は厨房設備だけでなくボイラーや温風暖房機も含まれるので、飲食店をオープンする場合は必要になることが多いでしょう。

場合によっては必要なもの

食品営業許可申請や火を使用する設備等の設置届以外にも、お店の規模や業態によっては以下の届出が必要な場合があります。

1. 防火管理者選任届

30人以上収容できる店舗は、必ず消防署に提出する必要があります。店舗の規模によって甲種・乙種どちらかの防火管理者講習を受けなければならないため、小さな飲食店でも収容人数が多い場合は忘れずに提出しましょう。

2. 深夜酒類提供飲食店開業開始届出書

深夜12時以降にアルコール類を提供する場合は、開店の10日前までに管轄の警察署に提出する必要があります。

3. 風俗営業許可申請

カラオケ付きのスナックのように、お客さんの接待をしながら遊興または飲食を楽しんでもらうお店を開業する場合も、管轄の警察署に提出する必要があります。

4. 開業届

開業届、正確には「個人事業の開業・廃業等届出書」は税務署に提出します。出さなくても罰則はなく開業自体は可能ですが、青色申告による税制上のメリットがあります。補助金や助成金もこの届を提出していることが前提条件であることがほとんどで、屋号名義の口座やクレジットカードも開業届がないと作れません。

小さい飲食店を成功させるには?

飲食店の店員が集まって相談している写真

小さい飲食店を成功させるためのポイントについて解説します。

  1. お店のコンセプトをしっかり固める
  2. ターゲット層やコンセプトに沿った物件を選ぶ
  3. SNSを活用した集客とリピーターの獲得

1. お店のコンセプトをしっかり固める

「どういう料理を提供するのか」「どういう雰囲気の店にするのか」「どういった客層に来てほしいのか」など、お店のコンセプトや目的を固めましょう。コンセプトが明確であればライバル店との差別化を図れるだけでなく、経営者にとって「なにをして、なにをしないのか」といった意思決定がしやすくなるでしょう。

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しっかりコンセプトづくりをした飲食店の成功例のひとつとして「晩酌屋おじょんじょ」が挙げられます。「進化系レモンサワー」で人気を集めるオーナーの高丸聖次さんは、お店のコンセプトを「ネオ酒場」に定め、お店の内容やメニューに反映させています。

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2. ターゲット層やコンセプトに沿った物件を選ぶ

ターゲット層やコンセプトが決まれば、それに合った物件選びも大切です。隠れ家風にしたいならば地下、オープンな雰囲気にしたいならばテラス付きの地上1階といったように、建物の階層や外観を考えて物件を選びましょう。

『酒のほそ道』などの漫画家として知られるラズウェル細木さんが長年通っている酒場「ふじよし」は、駅から少し離れた路地裏という立地条件から「隠れ家感」や「落ち着き」をお店の魅力にしている好例です。

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3. SNSを活用した集客とリピーターの獲得

TwitterやInstagramを活用して集客を図りましょう。検索されやすいキーワードでハッシュタグを付けたり、店舗の雰囲気やメニューをアップすることで、お店に興味を持ってもらいやすくなります。特典やキャンペーンをSNSで宣伝することで、新規顧客の獲得につながる場合もあるでしょう。

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SNSを活用した集客施策を実施したひとつの例として、京都市内で4店舗を展開する国産牛ステーキ丼専門店「佰食屋」があります。「お店の外側にいるお客さん」に向けたSNS発信を心がけ、コロナ禍では週2回のSNS投稿でフォロワーの目に触れる機会を増やしたそう。ハッシュタグも積極的に活用し、ユーザーの目に触れやすくなることを意識しました。

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まとめ:LINE公式アカウントを活用して集客アップ!

小さい飲食店の集客に有効なのが、LINE公式アカウントです。

月間のメッセージ送付数によって3種類のプランがあるので、店舗の規模や客数に応じて最適なプランを選べ、コスト面でも導入しやすいでしょう。メルマガのように店舗のキャンペーン情報を配信できるだけでなく、クーポンやLINE公式アカウント上で店舗のポイントカードを作れる機能もあります。ポイントが貯まった際の特典も表示できるため、再来店を促しやすくなります。

また、LINE公式アカウント上でユーザーとコミュニケーションができ、顧客との関係性を構築できることは、小さい飲食店にとって大きなメリットといえます。手軽に利用でき、新規顧客にもリピーター獲得にも効果的なLINE公式アカウントの導入をぜひご検討ください。