人流が回復しつつある現在、売上アップのために営業時間を深夜まで拡大した飲食店もあります。しかし、飲食店で深夜営業を行う際は、事前に地域を管轄する警察署へ申請が必要になるなど、いくつかの注意点があります。
この記事では、深夜営業を始めたいと考えている飲食店経営者に向け、届出が必要な条件や届出先、期日、提出書類などを伝えるとともに、深夜営業における法的なNG行為についても解説します。
こんな人におすすめ
- 飲食店の開業を考えている人
- 新たに深夜営業を始めたいと考えている人
- お店のステップアップを考えている人
- 飲食店の深夜営業に必要な届出とは?
- 深夜営業したい場合は「立地」「設備」をチェック
- 深夜営業許可の申請方法と必要な書類
- 深夜営業のNG行為とは? 始める前に確認しておきたいこと
- まとめ:事前準備が大切。ルールを守って地元から愛されるお店づくりを
飲食店の深夜営業に必要な届出とは?
飲食店が深夜営業を行うためには、「深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出(深夜営業許可)」を管轄の警察署に提出し、受理される必要があります。
ただし、業態によっては届出が不要の場合もあります。まずは、深夜営業許可が必要な条件について詳しく見ていきましょう。
深夜営業許可が必要な2つの条件
次の2つの条件の両方に当てはまる場合、深夜営業の届出が必要です。
営業時間が午前0時を超える
最初に確認したいポイントは営業時間です。深夜営業許可における「深夜」は、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律) 第十三条で「午前0〜6時」と定められています。営業時間が、この時間帯に当てはまるかを確認しましょう。
アルコール類を中心に提供する
次に確認したいポイントは、提供するメニューについてです。「アルコール類を中心に提供する」飲食店とは、主にバーや居酒屋、立ち飲み屋など。これらの形態で午前0時以降も営業する場合、深夜営業許可が必要になります。
一方、ファミレスやラーメン店、定食屋など、米飯類やパン類(菓子パンを除く)、めん類、お好み焼き、ピザといった「通常主食」がメインメニューの飲食店は、午前0時以降にアルコール類を提供する場合でも深夜営業許可は必要ありません。
しかし、自己判断で深夜営業許可を届け出なかった場合、不法営業を指摘される可能性もあります。届出が必要か不要なのかは、営業開始前に所轄の警察署に確認しておくと安心です。
なお、社交飲食店(スナックなど、飲食の提供に加えて接客サービスなども提供する業態)や雀荘は「風俗営業許可」、クラブやライブハウスは「特定遊興飲食店営業許可」の取得が必要です。いずれの届出についても、必要かどうかの判断が難しい場合は管轄の警察署の生活安全課へ確認しましょう。
深夜営業したい場合は「立地」「設備」をチェック
深夜営業許可は、立地や設備などの条件をクリアした場合に取得できます。特に立地は後から変更できないため、物件選びの時点で確認しておくべきポイントです。ここからは、深夜営業における立地や設備などの条件について詳しく解説します。
深夜営業に必要な立地条件
深夜営業許可を取得するには、都市計画法に基づく「用途地域」のルールに従う必要があります。用途地域とは、市街地の大枠の土地利用を「住居」「商業」「工業」などと定めたもので、地域内で用途が混在することを防ぐため、都道府県ごとに条例で定められています。
深夜営業が用途地域によって制限されているのは、騒音によって住民の生活に悪影響が及ばないようにするため、といった理由があります。例えば、東京都では「住居」に関連する地域において、アルコール類を中心に提供する飲食店の深夜営業は認められていません。認められているのは「商業」または「工業」系の地域ですが、このうち「工業」系では集客があまり見込めないため、飲食店の場合は「商業」系の地域を選ぶのが一般的です。
また、一定距離内に学校や図書館、病院、診療所といった「保全対象施設」がある場所では風俗営業ができないという規定がありますが、飲食店については対象外です。
このように、業態によっては「用途地域」に大きな影響を受けます。営業開始前に市・区役所の都市計画課で必ず確認しましょう。自治体によってはWebサイトでも確認できます。
深夜営業に必要な設備条件
深夜営業をする際は、店内の設備やインテリアにも配慮する必要があります。深夜営業に必要な設備条件は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行規則 第九十九条で以下のように定められています。
- 客室の床面積が9.5㎡以上(客室が1室の場合は除く)
- 客室の見通しを妨げる設備(高さ1m以上のパーテーション・家具など)がない
- 風俗環境に害を与えるような写真や装飾などがない
- 客室の出入口に施錠設備がない(店外に通じる出入口は除く)
- 照度が20ルクス(10m先の人の顔および行動が識別できる程度の照度)以上
- 騒音・振動の数値が各都道府県の条例で定められた数値未満の構造・設備
これらの条件を1つでも満たしていない場合、深夜営業を始めることはできません。
ムードを重視した飲食店では、照度を極端に落としている場合があるでしょう。また、リラックスできる個室風の客席にするべく、パーテーションを設置している場合もあります。これらは「深夜営業に必要な設備条件」を満たしておらず、改修が必要になってしまいます。設備の改修はすぐに行えない場合もあるため、時間に余裕を持って確認しておくことが大切です。
深夜営業許可の申請方法と必要な書類
立地・設備面で深夜営業が可能なことを確認したら、いよいよ届出の申請です。ここからは、深夜営業許可の申請方法と必要書類について詳しく紹介します。
深夜営業の届出期限・場所
<深夜営業の届出は、深夜営業を開始する予定日の10日前までに、地域を管轄する警察署に提出します。郵送およびインターネット経由での提出は認められていないため、多忙な場合は早めにスケジュールを確保しましょう。
また、新たに開店する場合は、保健所で「飲食店営業許可」を取得する必要があります。申請から許可がおりるまで2週間程度かかるため、こちらも早めに申請することが大切です。
深夜営業の届出に必要な書類
深夜営業許可の届出には、一般的に以下の書類が必要とされています。
- 深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書
- 営業の方法
- 営業所周辺の概略図
- 店舗の図面(平面図、求積図、照明・音響設備図)
- 住民票(申請者本人のもの。法人の場合は役員全員分が必要。要本籍記載)
- 定款、履歴前事項証明書
- 飲食店営業許可証
地域によっては追加の提出物を求められることもあるため、事前に管轄警察署へ確認しておくと安心です。「深夜における酒類提供飲食店営業営業開始届出書」「営業の方法」は、警視庁のサイトからダウンロードできます。
自分で必要書類をそろえて申請する時間が確保できない場合は、行政書士や弁護士などに依頼する方法もあります。費用はかかりますが、期限までに書類を正確に準備して提出してくれるので、書類不備といったリスクも軽減できるでしょう。
深夜営業のNG行為とは? 始める前に確認しておきたいこと
深夜営業の届出が受理されても、営業には一定のルールがあります。最後に、深夜営業のNG行為や風俗営業許可が必要な場合について詳しく見ていきましょう。
深夜営業における禁止行為
深夜営業において、下記は法律や条例で禁止されています。
- 18歳未満の者を22時から翌日の5時までの間に働かせる(労働基準法第六十一条)
- 保護者同伴の場合を除き、18歳未満の者を客として立ち入らせる(風営法第三十二条)
- 客引き(風営法、条例)
「接待行為」には風俗営業許可が必要
飲食店の中でも、接待行為を伴う接客がある場合には、風俗営業許可(「1号」許可)が必要です。接待行為とは、風営法第二条で「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定められており、次のような行為が該当します。
- 談笑……近くに座って継続的に談笑の相手となったり飲食物を提供したりする
- ショー……客用の部屋もしくは区画された場所においてショーや歌舞音曲などを見せたり聴かせたりする
- 歌唱……客に対して歌うことをすすめる、もしくは手拍子や拍手、褒めはやす、一緒に歌うなどの行為をする
- ダンス……客の身体に触れながらダンスをさせる、接触しなくても近くで一緒に継続的に踊る(ダンスを教えるに足る知識と技術を持つ人物がダンスを教えることを目的に行う場合を除く)
- 遊戯など……客と一緒にゲームや遊戯、競技などを行う
- その他……客と身体を密着させたり手を握ったりするほか、口元まで飲食物を差し出して口にさせる
まとめ:事前準備が大切。ルールを守って地元から愛されるお店づくりを
深夜営業を始めるときは、法令や条例を守るのはもちろん、土地の雰囲気や客層などを考慮しながら、地元の人に愛される店づくりを目指すことが大切です。
また、お客さんとの関係をしっかりと構築することは安定的な経営にもつながります。営業時間の変更などのお知らせにはLINE公式アカウントが便利です。情報発信をするだけでなく、クーポンの発行やポイントカード機能で、お客さんの「また行きたい!」といった気持ちを引き出すこともできるでしょう。詳細は以下のバナーからチェックしてみてください。
文:加藤良大
編集:はてな編集部
編集協力:株式会社エクスライト