飲食店を開業するには、必要な資金をあらかじめ準備しておく必要があります。しかし、なかなか用意できず「自己資金ゼロ」という場合は、銀行からの融資などを検討すると同時に、なるべく費用を抑えて開業することを意識するといいでしょう。
開業を考えている人に向けて、資金調達の方法や開業費用を抑えるポイントを解説します。開業費用の目安や自己資金ゼロで開業するリスクも紹介していますので、参考にしてみてください。
こんな人におすすめ
- 可能な限り、費用を抑えて飲食店を開業したいと考えている人
- 自己資金がなくても飲食店を開業できるのか知りたい人
- 開業資金の調達方法や開業コストを抑える方法を知りたい人
飲食店の開業費用の目安
日本政策金融公庫が行った2022年度新規開業実態調査によると、1年以内に開業した企業・店舗の開業費用平均額は、1,000万円程度となっています。
この調査の内訳を見てみると、約4割は500万円未満の費用で開業しており、平均額も年々減少してきています。250万円未満で開業した人の割合も増加傾向にあり、費用を抑えて開業する人が増えていることが分かります。ただし、この調査は飲食業以外の業態も対象に含んでいるため、あくまで目安と考えた方が良いでしょう。
開業資金の内訳は、「初期費用」と「運転資金」の2つに大きく分けられます。
初期費用
- 該当するのは物件取得費と設備資金の2つ
- 物件取得費は一般的に家賃の12カ月分かかるといわれている
- 日本政策金融公庫の創業の手引+によると、飲食店開業者を対象にした調査から、店舗の内装・外装工事費で平均368万円、厨房設備やテーブル、PC、食器などの備品購入で平均186万円がかかることが分かっている
運転資金
- 物件の家賃や水道光熱費、原材料費、人件費、広告宣伝費などが必要
- 創業の手引+によると、開業者が事前に準備していた運転資金の平均額は169万円となっている
自己資金ゼロで開業する方法
自己資金ゼロでも、融資や借用、支援金などを活用すれば飲食店の開業は可能です。資金調達方法について、以下で詳しく解説します。
日本政策金融公庫の「新規開業資金」を活用する
日本政策金融公庫は、新たに事業を始める場合や事業開始後7年以内に使える融資制度として、「新規開業資金」を提供しています。創業企画書を提出して審査に通れば、自己資金ゼロでも融資を受けられます。
担保や保証人を用意できない場合でも申し込み可能です。女性や若者、シニアは金利が優遇されるため、有利な条件で利用できます。
銀行や信用金庫から融資を受ける
銀行や信用金庫から開業資金を借りるのも一つの手です。
ただし、民間の銀行は、日本政策金融公庫以上に審査が厳しく、融資に見合う優れた事業計画が求められます。自己資金がゼロだと計画性がないと見なされてしまう場合も少なくありません。そのため、銀行で融資を受ける場合は、事業計画をしっかり練ることが重要です。
なお、消費者金融は借用のハードルは低くても返済が滞るリスクが高いため、おすすめはできません。基本的には利用せず、日本政策金融公庫や銀行などから借りる方法を検討しましょう。
クラウドファンディングを活用する
クラウドファンディングで支援金を集めるのも、一つの方法です。
知人・友人が多い場合、SNSやブログのフォロワーが多い場合は、目標金額を達成しやすいでしょう。出資を募る場合は、「支援したい」と思ってもらえるよう、飲食店開業にかける思いを伝える、魅力的なリターンを設定するといった工夫が必要です。
開業費用・運転費用を抑えるためのポイント
自己資金ゼロで開業する場合、開業や経営にかかるコストを抑えることも重要です。具体的な方法としては、以下の5点が挙げられます。
- 居抜き物件を使う
- 厨房設備や備品は中古品を活用する
- コストがかかりにくい営業形態を選ぶ
- 補助金や助成金を活用する
- 手軽に使える集客ツールを活用する
飲食店の居抜き物件を活用すれば、設備費用や内装費用を大幅に抑えられます。費用がかさみやすい厨房設備や備品を中古で購入するのも良いでしょう。また、ゴーストレストランやシェアキッチン、キッチンカーなど、コストを抑えやすい営業形態にするのもおすすめです。
飲食店が使える補助金としては、小規模事業者持続化補助金や事業再構築補助金の2つが挙げられます。運転費用の負担軽減に活用しましょう。
経営を安定させるには、開業前から集客方法を検討しておくことも大切です。LINE公式アカウントやGoogle ビジネス プロフィールなど、手軽に利用できる集客ツールを導入しておくと良いでしょう。
自己資金ゼロで開業する場合はリスクもあり
自己資金ゼロでも飲食店の開業は不可能ではありませんが、開業後のリスクは高まります。
事業を継続するためには、食材の仕入れ代や物件の家賃など、ある程度の運転資金を用意しておく必要があります。経営が安定するまでは利益が出ないこともあるため、生活費を事前に貯蓄しておくことも大切です。借り入れだけでこれらの費用をまかなうと、資金繰りが厳しくなり、事業が継続できなくなるリスクがあります。
2022年度新規開業実態調査によると、実際に開業した人の開業資金のうち、自己資金が占める割合は平均で約21%、金額にすると平均271万円となっています。開業後のリスクを抑えるためには、こうした調査結果を参考に自己資金を貯めておくことが重要です。
まとめ:リスクも考慮した上で開業を成功させよう
自己資金ゼロでも金融機関などから資金を調達すれば、飲食店開業は可能です。ただし、事業を継続するためには、ある程度自己資金を用意しておく方が安心でしょう。
飲食店を開業するなら、集客方法を事前に検討することも大切です。経営が安定している飲食店は、新規顧客だけでなくリピーターの獲得にも力を入れています。
LINE公式アカウントを使えば、来店してくれたお客さんに対してメッセージやクーポンなどを配布できるため、リピート率向上に効果的です。費用を抑えて始められるので、トライアルとして使ってみるのも良いでしょう。
文:相良海琴
編集:はてな編集部
編集協力:株式会社エクスライト