ゴーストレストランとは? 今から開業しても大丈夫?仕組み・メリットを解説

ゴーストレストランの店主が複数のタブレット端末で注文を確認しているイラスト

デリバリー需要の拡大にともない、飲食スペースを持たずに宅配専門で営業する飲食業態「ゴーストレストラン」が増加しています。低コストで出店できる、失敗時のリスクが低いなどのメリットがあり、これから開業しようと考えている人もいるかもしれません。しかし、開業するにあたって、デメリットや注意点も把握した上で検討したいという人も多いのではないでしょうか。

ゴーストレストランの概要、サービス提供の仕組みやメリット、開業や運営の注意点を解説します。

こんな人におすすめ

  • ゴーストレストランの開業を検討している人
  • ゴーストレストランの仕組みを知りたい人
  • ゴーストレストランのメリットを知りたい人
  • ゴーストレストランを開業する前にデメリットや注意点を知りたい人

ゴーストレストランとは

ゴーストレストランとは、店内に飲食スペースを持たず、宅配専門で営業する飲食業態のことを指します。一部テイクアウトを行う店もありますが、多くはネットで注文を受け付けるデリバリースタイルで営業しています。

ゴーストレストランは、もともとアメリカ・ニューヨークが発祥の飲食業態ですが、Uber Eats(ウーバーイーツ)や出前館をはじめとする飲食のデリバリーサービスの拡大、コロナ禍における在宅需要を受けて、日本でも開業例が増えています。

すでに店舗を構えている飲食店が、お店の業態とは別にデリバリー専用の商品を提供するような場合もあります。この場合はゴーストレストランではなく「バーチャルレストラン」と呼ばれ、区別されています。例えば、イタリアンのレストランがピザのデリバリーを行うようなケースが該当します。

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サービス提供の仕組み

ゴーストレストランの注文から料理の提供までの流れは、以下のようになっています。

  1. Uber Eatsや出前館などのフードデリバリーのプラットフォームを経由して注文が入る
  2. 配達員の受け取り時刻に合わせて料理を準備する
  3. 到着した配達員に料理を渡す
  4. 配達員がお客さん宅に料理を配達する
  5. 手元の端末に配達完了の通知が届く
  6. 後日、プラットフォーム事業者より手数料を引かれた金額が入金される

このように、お店で行うのは調理だけで、注文も配達もデリバリーのプラットフォームを通じて行われるのが一般的です。

開業・運営のメリット

飲食店がデリバリー用の商品を梱包している写真

飲食店では「FLR」と呼ばれる3つの要素「原価(Food)」「人件費(Labor)」「家賃(Rent)」の管理が求められますが、ゴーストレストランは特に「人件費(Labor)」と「家賃(Rent)」の面でメリットが大きいと言えるでしょう。

ここからは、費用面を中心に見たときのメリットについて解説します。

  1. 人件費が抑えられる
  2. 開業資金が少なくて済む
  3. 開業・経営のハードルが比較的低い
  4. 失敗時のリスクが低い

1. 人件費が抑えられる

配達はデリバリーサービスから依頼されたドライバーに委託するため接客対応の必要がなく、基本的に返却不要の使い捨ての容器を利用するため、食器洗浄などの業務も省くことができます。そのため、限りなく少ないコストで運用しようと思えば、調理スタッフ1〜2名で対応することも可能です。

アルバイトを多数雇っていると、閑散時にも人件費が発生し、利益を圧迫することもあるでしょう。ゴーストレストランの場合は、人件費も必要最低限に抑えることができるほか、シフト管理の手間も省けるため、よりお店の運営に集中して取り組むことができます。

2. 開業資金が少なくて済む

飲食店への事業融資を行っている日本政策金融公庫の新規開業実態調査によると、2022年度の開業費用の平均額は1,077万円、中央値が550万円となっています。つまり、飲食店を開業するには500~1,000万円の費用が必要になるということです。この資金調達がネックとなり、飲食店の開業を諦めるという人もいるかもしれません。

しかし、ゴーストレストランの場合、お客さんのイートインスペースは不要なので、キッチンスペースを含めた最低限のスペースがあれば開業することができます。ゴーストレストランの業態を受け入れているキッチン付きのテナントに入れば、自分でスペースを整える必要がなく、数十万円程度で開業することも可能です。例えば、以下のようなデリバリーに特化したキッチンスペースを賃貸するサービスもあります。

【KitchenGATE】デリバリーに特化したクラウドキッチン施設

3. 開業・経営のハードルが比較的低い

オーナーが1人いれば運営することができ、アルバイトの採用や教育、シフト管理など含めた労務全般の手間を最小限に抑えることが可能です。また、調理と配達ドライバーへの受け渡しだけに集中できるため、接客の経験がなくても運営しやすいでしょう。

先述の通り、少額の初期投資で開業できるため、順調に注文が入れば比較的早期に黒字化できるのもメリットの1つです。ゴーストレストラン専用のテナントに入れば、自前で設備を管理する必要がないので、コストも抑えやすくなります。

また、通常の飲食店を経営するよりも、開業時に必要な資格が少なくて済む場合があります。「食品衛生責任者」は必須ですが、クラウドキッチン施設に入店する場合は「防⽕管理者」や「営業許可書」が不要のケースもあります。ただし、開業前にクラウドキッチン施設へ取得が必要な資格はあるか確認しておくと確実でしょう。

4. 失敗時のリスクが低い

客足が伸びず経営不振に陥るといった失敗にまつわるリスクも低いというメリットがあります。少ない初期費用で開業できるため、投資した分を回収できるまで安易に閉店することができないなどのケースも少なく、早めに撤退の判断ができます。結果として、大きな借金を抱えにくいこともメリットと言えるでしょう。

また、実店舗に比べてコンセプトやメニューを変更しやすいため、集客が困難になったときも比較的早めに業態の変更を検討できます。実店舗の場合は、外観や内装、立地、メニュー表など、提供する料理のジャンルや価格帯に合わせて準備されているものが多く、これらの変更にもコストがかかってしまいます。ゴーストレストランは、アプリ上のメニューの記載と提供する料理さえ変更できれば、比較的低コストで業態の転換が可能です。

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開業・運営の注意点

飲食店のデリバリーサービスで、配達員が商品を運んでいるイラストさまざまなメリットの多いゴーストレストランですが、もちろん注意すべき点も存在します。ゴーストレストランを開業・運営する際の注意点について解説します。

  1. プラットフォームに依存することになる
  2. プロの経営アドバイスを受ける機会が少ない
  3. 市場の変化が早い
  4. 売上金が手元に届くのが遅い

1. プラットフォームに依存することになる

まず、店舗の運営がデリバリーのプラットフォームに依存することになります。ゴーストレストランは店舗がないため、注文を受け付けるにはデリバリーのプラットフォームに登録する必要があるからです。

実店舗であれば、お店が認知されて常連さんが増えていくたびに集客コストを下げられます。しかし、ゴーストレストランは注文や配達をデリバリーのプラットフォームに依存しているため、認知を広げることが難しく、一定の集客コストがかかり続けることになります。

地域や時間帯によっては、ニーズはあっても配達員が不足して注文が受けられないことも起こり得ます。例えば、雨天時には外へ出掛けたくないというお客さんの心理からデリバリーの需要が高まりますが、同時に配達員の稼働も減ってしまうため、需要はあっても提供が難しいケースが起こりやすくなります。さらに、アプリ内での表示順や検索導線など、プラットフォーム側のアルゴリズムや設計の変化によって注文量が左右されることもあります。

また、お店独自の販促が行いにくいこともデメリットの1つです。しかし、まれにプラットフォーム側で半額セールや「1個買うと1個無料」といったキャンペーンを行うことがあるので、こうしたキャンペーンにしっかり参入してお客さんにお店を知ってもらうことが大切になります。

ほかにも、TwitterやInstagram、LINE公式アカウントなどを活用して、デリバリーのプラットフォーム以外でも積極的に情報発信をしたりファンをつくったりすることも検討すべきでしょう。

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2. プロの経営アドバイスを受ける機会が少ない

ゴーストレストランの場合、少額の資本で開業できるがゆえに、銀行の融資審査をはじめとするプロによる経営アドバイスを受ける機会が少ないこともデメリットとして挙げられます。そのため、情報交換ができるチャンスを積極的に活用することが必要です。

ゴーストレストラン専用のテナントなどに入る場合は、同業者と知り合う機会が多く、最近需要がある業態や業界の現況などを知るチャンスもあります。積極的に情報交換をして、経営アドバイスの代わりとして自店に役立てるようにしましょう。

3. 市場の変化が早い

ゴーストレストランは注目されているビジネスモデルのため、参入者が多く、運営ノウハウやインフラそのものの進化が早いことにも注意が必要です。市場の変化にともなって行うべき施策も変わります。常に先の動きを予想できるよう、積極的に情報を収集することが求められます。

特に昨今はコロナ禍や食材の高騰など、社会的な動向も流動的になっており、細心の注意が必要です。実店舗であれば、近隣の競合店の開店などは事前に察知しやすいですが、ゴーストレストランは競合店の動きが見えづらいという難点もあります。そのため、先述した業界のノウハウだけでなく、社会の動向や競合の情報なども意識的に集めるようにしましょう。

4. 売上金が手元に届くのが遅い

飲食店でもキャッシュレス化は進んでいますが、ゴーストレストランの支払い方法はほぼキャッシュレスです。そのため、賃料や仕入れコストの回収に時間がかかります。開業コストは低いというメリットがある一方で、手元に売上金が届くまでに時間を要するため、運転資金をある程度用意しておく必要があります。

実店舗の場合、一般的に飲食店の開業から安定した運営に要する期間は6カ月以上とされています。商品は売れているのに手元のキャッシュが無くなってしまう「黒字倒産」の可能性もゼロではないため、ゴーストレストランも実店舗の経営と同様に、手元資金には余裕を持たせておく必要があります。

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コロナ禍が収束した後もゴーストレストランは定着する?

エヌピーディー・ジャパン株式会社が発表したデリバリー市場規模の変化をまとめたグラフ

2022年計、外食・中食売上はコロナ前2019年比10.4%減 デリバリー市場規模は7754億円で前年比1.6%減 <外食・中食 調査レポート>|エヌピーディー・ジャパン株式会社より

コロナ禍になる以前から、デリバリー市場は右肩上がりに成長をしていました。在宅需要やリモートワークの定着など生活様式の変化により、今後の出前需要も一定数見込まれています。

しかし、デリバリー市場にとって追い風となったコロナ禍による行動制限も、2023年3月現在は収束に向かっています。また、足元では、経済成長の停滞や世界的な物価高などにより、消費者の節約志向も高まってきています。

マスクの着用が個人の判断にゆだねられるなど、行動制限が緩和され、飲食店に客足が戻る反面、その分、デリバリー需要が減少する可能性はあります。デリバリーの競合はデリバリーだけでなく、実店舗を持つ飲食店、テイクアウト、中食(家庭外で調理された食品を家庭や職場に持ち帰って食べる食事形態)など、ほかの業態も含まれるからです。また、デリバリー利用が増えた結果、デリバリー業者に対する消費者の目も肥えてきています。

そのため、参入者が急増したデリバリー専門の業態は、今後競争が激化する可能性もあります。また、実店舗をともなわないゴーストレストランに対して、ネガティブなイメージを持つ消費者も存在します。味はもちろんのこと、メニュー写真の見せ方や価格設定、衛生管理など、消費者から選ばれるお店にするための工夫はますます求められていくと言えます。

まとめ:集客効果の高い情報発信が成功のカギ

飲食店のデリバリーサービスの配達員の写真

実店舗を持つ飲食店に比べて少ない元手で開業できるのは、ゴーストレストランの大きなメリットです。調理に集中しやすいので、店舗経営の経験がない人でも比較的始めやすいというハードルの低さもあります。

ただし、集客がデリバリープラットフォームに依存するため、配達地域内のデリバリー競合店の動向をよく観察した上で参入する必要があります。コロナ禍によるデリバリー特需は一旦落ち着き、今後は顧客の取り合いが激化すると考えられます。また、アプリ内などでお店を比較されやすい構造になっているため、お店の売りになるポイントを明確にすることが必要です。

お客さんにお店の存在を知ってもらい、お店の特徴を効果的にPRするためには、SNSや広告などを通じてお客さんにお得な情報を発信するなど、プラットフォームに頼らない活動も重要になってきます。その際は、費用や労力に対して効果の高い集客手法を選ぶことが成功のカギとなります。

高い効果が得られる方法の1つとして、LINE公式アカウントが挙げられます。容器のふたにQRコードを記載したシールを貼る、またはチラシを封入するなど、注文してくれたお客さんLINE公式アカウントの登録を促すことで、お得なクーポンを送ったり、新しい商品の情報を送ったりすることができます。お客さんとのつながりを大事にすることで、リピート注文をしてもらえる可能性を高められるでしょう。詳細は、以下のバナーからご確認ください。

イラスト/つのがい