新型コロナウイルスが5類に分類され、お客さんの流れが戻ってきた飲食店もある一方、売上がなかなか伸びず経営不振に陥っている飲食店もあります。
飲食店を立て直すことは簡単ではありませんが、立て直しに必要な知識や方法を知っていれば、経営難を脱するチャンスをつかむことができます。
「売上や利益を伸ばしたい」と考える飲食店経営者に向けて、経営不振に陥る原因やその対策方法を、飲食店経営者兼コンサルタントの山川博史さん監修のもと解説していきます。
こんな人におすすめ
- 飲食店の売上や利益が伸びない原因について知りたい人
- 経営難を脱するための基本思考を身につけたい人
- 利益が残る店舗にするための具体的な方法を知りたい人
- これからの時代の・飲食店マネジメント協会
代表理事 山川博史 -
1971年生まれ。複数の会社経営に関わり、一般社団法人これからの時代の・飲食店マネジメント協会【これマネ】の代表理事として、採用・育成・定着・自走をテーマに、飲食店向けeラーニング【これマネ教育DX】を活用した指導を行っている。著書に『1店舗目で成功したオーナーはなぜ2店舗目で失敗するのか』『これからの飲食店マネジメントの教科書』などがある。
Webサイト:これマネ教育DX
X(旧Twitter):@yscrewproduce
Instagram:@yamakawahiroshi
飲食店の立て直しは原因を探ることが大切
飲食店の立て直しを図る際には、ただやみくもに取り組んでも思ったような効果が得られません。まずは、経営不振に陥っている原因を分析した上で、対策を練ることが必要です。正しい方法で立て直しに取り組めば、経営難を脱する道が見えてくるはずです。
ここでは、「売上」と、売上から仕入れ値などを差し引いた「利益」について、それぞれが伸びない原因を具体例とともに解説します。
売上が伸びない原因
売上が伸びない原因として、客単価が低過ぎる、来客数が少ないなどの問題が考えられます。特に客単価が低過ぎると、来客数が多くても売上が伸びません。
他にも、ファンが獲得できずリピートが少ない、追加注文を受けることができず客単価が上がらない、またはメニュー表でセットメニューやおすすめ料理の魅力が伝わらないなど、さまざまな理由が考えられるでしょう。
さらに、売上の減少は利益率にも影響を与えます。利益率の低さは、経営を圧迫する最大の要因です。
単純に売上が低いだけでなく、高騰している人件費や材料費、光熱費、各種手数料などのコストが余計にかかっていることで利益率が減少している場合もあります。このような収支管理を細かく行っていないと、気づいたときには経営が悪化していたという事態になります。
また、冷蔵庫内の管理や商品棚の在庫管理が不十分な場合も、利益率の低下につながる可能性があります。余剰在庫によって発生した賞味期限切れや季節外れの商品は売れなくなるため、結果的に赤字になってしまいます。
利益が伸びない原因
来客数は、利益に影響をもたらす要素のひとつです。来客数が伸びない原因には、店舗の立地や集客力不足などが考えられます。
すでに集客施策を行っている場合、その施策に問題があるかもしれません。集客方法は、業態や出店エリアで適した手法が異なるからです。
お店のコンセプト設計も重要です。近隣のライバル店と似たようなコンセプトを掲げていると、イメージを差異化できず集客へとつながりにくくなってしまうでしょう。
また、来客数を増やすために必要なのはリピーターの存在です。商品やサービスの質が低い、清潔感のない店舗で居心地が悪いなど、マイナスの要素があるとお客さんのリピート率が下がる可能性があります。
ほかにも、単純にお店に行くきっかけがないケースもあるため、来店を促す施策も重要です。
飲食店の立て直し方法とは?
上記のように経営不振の原因が判明したら、対策を練ることが大切です。売上に原因がある場合と来客数に原因がある場合に分け、それぞれの対策方法を詳しく紹介します。
売上に原因がある場合
売上の低さが問題となっている場合、まずは現在の収支の把握と分析から始めましょう。
人件費や原価、賃料、光熱費、各種手数料などの固定費や変動費を分析し、削減できるコストがないか見直します。
原価を削減するためには、在庫の管理も重要です。例えば、月に1度の頻度で棚卸しを行い、適切な仕入れの量を把握することできれば、利益率アップを目指せるでしょう。これは食品ロスを防ぐ観点からも、非常に重要な取り組みです。
売上を伸ばすために、メニュー表の見直しや接客力を上げる工夫も必要となります。例えば、おすすめ料理やセットメニューが一目で分かるようなメリハリのあるメニュー表にアップデートすることで、注文率アップや理想とする単価でのセットメニュー販売が目指せます。
ホールスタッフが説明しやすいメニュー表に工夫することができれば、自然とスタッフの接客意識も上がり、追加の注文につながって客単価を伸ばせる可能性もあります。
上記の対策でも改善が見られない場合は、助成金や補助金、資金調達の利用、専門家への相談なども検討してみると良いでしょう。
利益に原因がある場合
利益に原因があり、来客数を増やしたい場合は、ターゲット層に合わせたコンセプトや店づくりが必要です。
例えば、家族連れが多い地域であれば「主婦が子ども連れでもゆっくりくつろげるお店」をコンセプトとして、子ども用の食器を用意するなどの工夫ができます。必ず地域の客層やライバル店の様子を見て、集客力アップのための見直しを図るようにしましょう。
あわせて、集客力の強化も必要です。立地が悪くても工夫次第で集客力を高めることは可能です。
例えば、通行量の少ない通りにある店舗でも、SNSなどで魅力を発信することでお店を知ってもらう機会を増やせます。現在はポータルサイトへの掲載、チラシの配布、ホームページの作成などさまざまな集客方法があります。経営状況などを見直した上で、自店に合う手法を選ぶことが重要です。
特に、LINE公式アカウントやX(旧Twitter)、Instagramなどでお店の専用アカウントを運用しておくと、お客さんとコミュニケーションをとる機会が増え、リピーターの獲得にも効果を発揮してくれます。
LINE公式アカウントの場合、お客さんに対してメッセージの配信やクーポンの配布などが可能です。お客さんにとってお得だと感じるような「次回来店時に◯%オフ」といったクーポンを配布すれば、来店のきっかけをつくることができるでしょう。
まとめ:原因と対策を知れば、飲食店は立て直せる
飲食店が経営不振に陥る原因は、売上の低下と利益の低下が最大の理由です。来客数を増やすことがシンプルな立て直しの基本思考になるため、まずは「なぜお客さんが来ないのか」の原因を分析し、適切な対策を講じれば、経営難を脱することができるはずです。
特に来客数を増やす取り組みは、売上アップにもつながるため重要です。メッセージ配信やクーポン配布、ショップカードなどを活用できるLINE公式アカウントは、お店の独自性をアピールでき、集客率アップが目指せます。まずは下記をチェックしてみてください。
文:大瀧亜友美
編集:はてな編集部
編集協力:株式会社エクスライト