飲食店にセルフオーダーを導入する際に知っておきたいこと。選び方や導入費用【専門家監修】

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近年、セルフオーダーを導入する飲食店が増加しています。お客さんは手軽に注文でき、お店は業務効率化を実現できるなど、セルフオーダーにはさまざまな利点があります。

セルフオーダーシステムを導入し、業務オペレーションを改善したいと考えている飲食店経営者に向けて、セルフオーダー化のメリットやデメリットを解説するとともに、システムの選び方導入費用利用できる補助金について紹介します。

こんな人におすすめ

  • セルフオーダーシステムの導入を検討している飲食店経営者
  • システムの種類や利用方法、セルフオーダー化するメリット・デメリットを知って導入の参考にしたい人
  • システムの導入方法や導入費用、導入時の注意点を知りたい人

高木悠さん写真

株式会社常進パートナーズ代表取締役 高木悠

大手外食FCチェーンに入社後、店長、マネージャー、FC担当等を歴任。15年以上にわたり外食・FC業界に関わっており、店舗ビジネスや大手チェーン・FC本部の実態を熟知している。
独立後は「店舗ビジネスを営む企業とそこで働く社員の社会的地位の向上」を実現すべく、のれん分け制度構築、FC本部立ち上げ・立て直し、人事評価制度整備など、店舗ビジネスの店舗展開に特化したコンサルティングを行っている。これまで企業支援に携わった企業は、延べ500社以上。著書として『21世紀型「のれん分け」ビジネスの教科書(自由国民社)』『「まずは3店舗」の姿勢ではじめる 小規模フランチャイズ展開の教科書(自由国民社)』がある。
経済産業大臣登録 中小企業診断士。

セルフオーダーとは

タブレットから注文している人の手元

セルフオーダーとは、卓上のタブレット端末やスマートフォンなどから、料理や飲み物をお客さん自身が注文するオーダー方法のことです。スタッフが注文を取る必要がないため、お客さんは気軽に注文ができ、お店側は会計作業などの業務効率化オーダーミス削減を図ることができます。

普及の背景には非接触、省力化といったメリットあり

利便性の高さから普及が進むセルフオーダーですが、新型コロナウイルス感染症の流行も一般化を後押ししました。

感染防止の観点から、スタッフと直接会話せずに注文できるセルフオーダーの導入が加速したと考えられます。

また、人手不足解消の観点からも、セルフオーダーへの注目が高まっています。オーダー業務を省人化できるセルフオーダーは、人手不足が取り沙汰される飲食業界にとって大きなメリットがあったのです。  

種類別・セルフオーダーシステムの利用方法

セルフオーダーにはさまざまなシステムがありますが、「タッチパネル注文」「モバイルオーダー」の2種類がその代表です。ここでは、それぞれのシステムを解説します。

タブレットを使用したタッチパネル注文

タブレットから注文している女性の手元

タッチパネル注文は、テーブルごとにタブレット端末を設置してオーダーを受け付けるタイプのセルフオーダーシステムです。お客さんは、専用端末からメニューを閲覧し、オーダーできます。モバイルオーダーとは違い、お客さん自身のスマートフォンからの操作は必要ありません。

QRコードを使用したモバイルオーダー

スマートフォンから注文している人の手元

モバイルオーダーは、お客さんが自身のスマートフォンを使って注文するセルフオーダーシステムです。通常は、テーブルごとにQRコードを記載したポップなどを設置して、オーダーを受け付けます。お客さんがQRコードを読み取ると、注文ページが表示され、注文できます。お客さん自身のスマートフォンを利用するため、タブレットやコンセントなどを設置する必要はありません

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飲食店における導入のメリット

飲食店は、人手不足インバウンド需要による外国語対応といった課題に日々直面しています。セルフオーダーシステムの導入は、こうした飲食店の課題解決策として期待されています。

ここでは、セルフオーダー化によるお店側のメリットお客さん側のメリットをそれぞれ解説します。

お店側のメリット

飲食店のホールスタッフ

セルフーダーを導入すると、飲食店側は以下のようなメリットが得られます。それぞれ詳しく解説します。

  1. オーダーミスやトラブルを防止できる
  2. 人員コストを削減できる
  3. メニューをデジタル化できる
  4. インバウンドに対応できる
  5. 売上データの集計・管理がしやすくなる
1.オーダーミスやトラブルを防止できる

セルフオーダーシステム導入の大きなメリットとして挙げられるのが、オーダー時のミスやトラブルを防げることです。

スタッフがテーブルごとに注文を取る従来の方法では、注文の聞き間違いや厨房への伝達ミスなど、人的なミスが発生しやすい傾向があります。オーダーミスは、顧客体験を悪化させるだけでなく、廃棄ロスが増えるなど、お店の利益減少につながる要素です。また、ミスした結果、注文がキャンセルされれば、機会損失が発生したり、リピーターの獲得機会を逃したりすることにもつながるでしょう。

一方、セルフオーダーではお客さん自身が注文するので、オーダーミスを未然に防ぐことができ、注文の聞き間違えなどによるクレームを軽減できます。

2.人員コストを削減できる

少人数のスタッフで業務を行えるようになるのも、セルフオーダーシステムの重要なメリットです。

セルフオーダー化すれば、ホールスタッフの人数が少なくても、お客さんを待たせることなくオーダーを受けられます。さらに、システムによる自動会計などがあれば、会計業務も効率化できるため、お店運営が省人化でき、人件費削減効果も期待できます。

また、オーダーや会計関連のスタッフ教育コストの削減にもつながるでしょう。

3.メニューをデジタル化でき、より豊富な情報をお客さんに提供できる

セルフオーダーシステムを使えば、メニューがデジタル化されるため、写真や動画を取り入れることも可能です。紙のメニューよりも視覚的に分かりやすく、より多くの情報をお客さんに提示でき、自店のメニューを効果的に訴求できます。

さらに、ランチメニューやグランドメニューをシステム上で簡単に切り替えられるのもメリットの一つです。飲み放題や食べ放題、席利用時間の設定なども可能で、お店に合わせてカスタマイズすることができます。

特に、季節限定や日替わりのメニューを提供している飲食店では、メニュー表の作成や印刷にかけていた労力やコストを大幅に削減できるでしょう。

4.インバウンドに対応できる

セルフオーダー化のメリットとして、インバウンド需要に対応しやすくなる点も挙げられます。

2022年10月の新型コロナウイルス感染症流行に伴う感染対策の緩和以降、日本を訪れる外国人観光客は再び増加しています。

こうした需要に対応するためには、メニューの多言語対応が必要です。セルフオーダーシステム上で外国語メニューを提供できれば、スタッフの語学力にかかわらず、外国人客の注文もスムーズに受けられるでしょう。

5.売上データの集計・管理がしやすくなる

セルフオーダーシステムを導入してオーダー業務をデジタル化すれば、売上の集計や管理業務の効率化も図れます。

システム上の注文履歴から売上の集計ができるので、日々の売上管理がスムーズになるでしょう。また、システムに蓄積されたデータから人気商品や売上の変動などを確認できるため、リピーター獲得施策集客施策につなげることができます。

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お客さん側のメリット

タブレットから注文する男女

セルフオーダー化は、お店だけではなく、以下のようにお客さんにも多くのメリットがあります。それぞれ解説します。

  1. スタッフを待たずに好きなときに注文ができる
  2. スタッフとの接触機会が減り、感染症を予防できる
  3. 注文内容や会計金額を手元で簡単に確認できる
  4. 外国語対応していれば、日本語が分からなくても注文できる
1.スタッフを待たずに好きなときに注文ができる

セルフオーダー化による最大のメリットは、お客さんが好きなタイミングで注文できるようになることです。

セルフオーダーが導入されている飲食店では、注文時にスタッフを呼んだり、混雑時に遠慮したりする必要がなくなり、お客さん自身の都合に合わせてオーダーできます。入店から料理が提供されるまでの時間も短縮されるので、待ち時間が短く、ストレスなく過ごせるのもお客さんにとっての利点です。

2.スタッフとの接触機会が減り、感染症を予防できる

新型コロナウイルス感染症の流行をきっかけに、人との接触機会をできるだけ減らしたいと考える人が増えています。

セルフオーダーを利用してスタッフと会話することなく注文できれば、飛沫感染など予防でき、お客さんにとっての安心感につながります。

3.注文内容や会計金額を手元で簡単に確認できる

注文内容や会計金額を簡単に確認できるのもセルフオーダーシステムの大きなメリットです。

従来のオーダー方法で注文内容などを確認する場合、スタッフを呼ぶ必要があり、気軽に確認しにくいという側面がありました。

一方、セルフオーダーシステムなら、「オーダーが通っているか」「予算内に収まっているか」といった確認をお客さん自身が気軽に行えるため、より快適にお店を利用できます。

4.外国語対応していれば、日本語が分からなくても注文できる

すでに紹介したように、セルフオーダーシステムで外国語のメニューを表示できれば、日本語が分からないお客さんも安心して利用できます。

宗教上の理由やアレルギーなどの事情から、食べられない食材がある場合、日本語でただ料理名を表記したメニューのみでは、注文が難しいという外国人のお客さんも多いでしょう。

外国語対応のセルフオーダーシステムを導入すれば、外国人のお客さんもメニューを理解できます。また、豊富な情報を掲載できるデジタルメニューの利点を生かし活かし、料理に使われている食材やアレルギー情報なども提示すれば、さまざまな国籍のお客さんでも安心して食事を楽しめます。

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導入のデメリットと注意点

頭を抱えている飲食店店主

以上のように、さまざまなメリットが期待できるセルフオーダーですが、もちろん、以下のようなデメリットも考えられます。それぞれを理解した上で、自店にセルフオーダーが向いているか判断しましょう。

  1. 接客できる機会が減る
  2. 機械トラブルによりオーダーが取れなくなる可能性も
  3. 客層によっては不満につながることも
  4. 導入コストが高額になる場合も

1.接客できる機会が減る

セルフオーダー化による接客機会の減少は、お店のコンセプトによってはデメリットになる可能性があります。

例えば、お客さんがスタッフとの交流に価値を感じている飲食店では、セルフオーダー化によって接客の時間が減ると、顧客満足度が下がる可能性があります。さらに、お店のリピーターが離れてしまい、売上が下がってしまうリスクもあるでしょう。

こうしたお店でセルフオーダーを導入する場合、来店時や料理提供時にコミュニケーションを取るなどの工夫が必要です。

2.機械トラブルによりオーダーが取れなくなる可能性も

セルフオーダーシステムを利用している場合、タブレット端末の故障や電波障害、システム障害により、オーダーが取れなくなる事態が発生することも考えられます。

こうした事態が起こると、営業が困難になるほか、もし端末の買い替えなどが必要になった場合、余計な経費が必要になってしまいます。このようなトラブルが起きたときの対策を導入前に検討しておくことが重要です。

3.客層によっては不満につながることも

自店の客層によっては、「タブレットやスマートフォンでの注文方法が理解できない」「ボタンが小さくて押しづらい」といった理由から、お客さんがセルフオーダーに馴染めない可能性もあります。

そのため、機械操作に慣れていない高齢者の方や子ども連れのお客さんが多い飲食店では、操作方法を分かりやすく説明する、メニューを大きく表示できるシステムを導入するなど工夫すると良いでしょう。

4.導入コストが高額になる場合も

セルフオーダーは人件費削減や売上向上といったメリットがある一方、導入コストが高額になる場合もあります。

タッチパネル注文の場合、タブレットの購入費用ネットワークの整備費用コンセント設置費用などが発生します。導入によるコスト削減や売上向上が見込めたとしても、初期費用が高額になれば、採算が合わない恐れがあります。

そのため導入時には、トータルコストを確認した上で検討することが非常に重要です。

セルフオーダーシステムの選び方

セルフオーダーを取り入れる場合、自店の業態や客層、予算に合ったシステムを導入することが大切です。ここからは、自店に合ったセルフオーダーシステムの選び方を解説します。

追加注文の多い居酒屋や幅広い客層の飲食店なら:タッチパネル注文

タブレットから注文している男性

タッチパネル注文は、追加注文が多い居酒屋などの飲食店におすすめです。

専用端末を使うため、注文の度にスマートフォンを立ち上げる必要がなく、複数人で利用する場合も一括で注文できます。タブレットなら大きめの画面でメニューを一覧表示できるため、メニュー数が豊富でも利便性が低下せず、顧客体験を損ないません

また、家族連れや高齢者の方など、客層の幅が広い飲食店にもタッチパネル注文が向いています。スマートフォンを操作する必要がなく、大画面でメニューを確認、注文できるため、代を問わず利用しやすいでしょう。

費用を抑えて導入したいなら:モバイルオーダー

スマートフォンから注文している人の手元2

できるだけコストを抑えてセルフオーダーを導入したいのであれば、モバイルオーダーがおすすめです。タブレット端末の設置が不要なため、初期費用を抑えられます。ただし、システムによっては月額利用料が継続的に必要な場合もあるので、ランニングコストも併せて考慮する必要があります。

さらに、モバイルオーダーでは、決済機能や集客機能が搭載されているシステムも展開されています。オーダー業務だけでなく、会計や集客などのオペレーションの効率化も図りたいという場合は、モバイルオーダーの導入がおすすめです。

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導入に必要な費用

電卓とパソコンを使って作業をしている人の手元

ここからは、セルフオーダーの導入にかかる初期費用運用費用を解説します。導入の際に活用できる補助金についても紹介しますので、導入時の参考にしてみてください。

初期費用

タッチパネル注文の場合、初期費用が高額になりやすい傾向があります。

例えば、タブレットの購入費用の目安は、1台あたり3万円〜6万円ほどです。セルフオーダーシステム提供事業者によっては、タブレット代も利用料金に含まれる場合もありますが、テーブル数が多い店舗の場合は高額になりやすい傾向があります。20卓ほどの店舗でもタブレットの購入費だけで60万円〜120万円ほどかかる場合もあり、加えて、メニューのレイアウト設定など、システム設定に料金がかかるケースもあります。

また、充電用のコンセントの増設が必要になる場合は、お店の規模に応じて工事費用が発生します。そのため、サービスによっては、初期費用の総額が100万円〜200万円ほどかかる可能性もあるため、注意が必要です。

セルフオーダーシステムによっては、こうした初期費用を運用費用として分割払いにし、初期費用を抑える契約を提案している場合もあります。ただし、トータルの支払額が一括払いと比べて高額になるため、注意が必要です。また、途中解約ができず、解約したい場合でも契約金額を全額支払わなければならない契約形態が多いので、リスクも大きいことを理解しておきましょう。

初期費用だけに注目するのではなく、契約条件やリスクを確認した上で、導入すべきかどうか慎重に検討して契約することが重要です。

一方、モバイルオーダーは専用端末や工事が不要のため、初期費用を抑えて導入できます。

ただし、いずれのオーダー方法でも、システムサービス契約や、ネット回線・プリンターなどの導入が必要になります。そのため、既存の通信環境や機材を利用できるか確認した上で、必要なトータルコストを見積もることも重要です。

運用費用

タッチパネル注文の場合、タブレットの設置数によって月額料金が決まるシステムが一般的です。目安としては、1台につき数百円〜数千円ほどの料金が発生します。テーブル数が多い店舗では、月額料金も高額になりやすいでしょう。

一方、モバイルオーダーは1店舗あたりで月額料金が決まるサービスが多く、1万円〜3万円ほどが目安になります。そのため、テーブル数が多い店舗でも運用費用を抑えることができるでしょう。

ただし、いずれのシステムでも通信料は発生するため、運用費用に含めた上で検討する必要があります。

セルフオーダー導入に使える補助金も

飲食店にセルフオーダーを導入する際は、「IT導入補助金」を利用できる場合があります。この補助金は中小企業や小規模事業者等を対象としており、自店の課題解決を目的に、ITツールを導入する場合に補助金を受け取ることができます

また、「小規模事業者持続化補助金(一般型)」も、セルフオーダーシステムを導入する際に利用できる補助金です。セルフオーダーのほか、業務効率化につながるツールも対象になっており、導入に必要な経費の一部が補助されます。

補助金の利用を検討している場合は、最新のWebサイトから募集要項などを確認してください。

モバイルオーダーを導入するならLINEミニアプリがおすすめ

LINEミニアプリ紹介ページより

LINEミニアプリ」紹介ページより

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LINE公式アカウントと連携すれば、メッセージやクーポンの配信も簡単に行えるので、リピーター獲得にも役立つでしょう。

まとめ:費用も考慮して自店に合ったセルフオーダーを導入しよう

お客さんにタブレットを見せている飲食店スタッフ

セルフオーダーは、お店とお客さん双方にさまざまなメリットをもたらしますが、顧客体験に大きな影響を与えるため、自店の客層に合ったシステムを導入することが大切です。セルフオーダー導入により、お客さんの利便性が上がれば、顧客満足度の向上や売上向上も期待できます。

導入時には、導入コスト運営コストなどさまざまな要素を検討し、お客さんが便利に快適に楽しめるお店づくりを目指しましょう。

 

文:相良海琴

編集:はてな編集部

編集協力:株式会社エクスライト