今注目の「無人の飲食店」とは? 事例やメリット・デメリットを解説【専門家監修】

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飲食業界における新たなトレンドとも言える無人飲食店は、2015年にアメリカでオープンした無人レストランを皮切りに、世界中に広まっています。

飲食店の無人化で話題になった事例無人店舗のオペレーション方法を紹介します。無人化によるメリット・デメリットも解説するので、店舗の無人化や新規事業を検討している方は参考にしてみてください。

こんな人におすすめ

  • 最近ニュースなどでよく聞く「無人飲食店」について知りたい人
  • 飲食店を経営していて、店舗の無人化を検討している人
  • 無人飲食店の経営を検討している人

高木悠さん写真

株式会社常進パートナーズ代表取締役 高木悠

大手外食FCチェーンに入社後、店長、マネージャー、FC担当等を歴任。15年以上にわたり外食・FC業界に関わっており、店舗ビジネスや大手チェーン・FC本部の実態を熟知している。独立後は「店舗ビジネスを営む企業とそこで働く社員の社会的地位の向上」を実現すべく、のれん分け制度構築、FC本部立ち上げ・立て直し、人事評価制度整備など、店舗ビジネスの店舗展開に特化したコンサルティングを行っている。これまで企業支援に携わった企業は、延べ500社以上。著書として『21世紀型「のれん分け」ビジネスの教科書(自由国民社)』『「まずは3店舗」の姿勢ではじめる 小規模フランチャイズ展開の教科書(自由国民社)』がある。
経済産業大臣登録 中小企業診断士。

無人飲食店とは?

料理を運んでいる配膳ロボット

無人飲食店とは、飲食店の従来のオペレーションをテクノロジーによって自動化し、店員が不在でも営業できるようにした新しい形態の飲食店のことです。無人販売店や無人店舗など、無人化の動きは世界中に広がりつつありますが、新型コロナウイルス感染症拡大を契機に、感染リスクの低減や人手不足解消、人件費削減の対策としても注目を集めています。

無人店舗や無人販売で注目された事例

火鍋の具材を運ぶ配膳ロボット

無人飲食店は、どのようにオペレーションを自動化しているのか。飲食店の無人店舗経営食品の無人販売で話題になった事例を、海外と国内に分けて紹介します。

海外の事例

easta(イーツァ)

2015年にオープンし、無人飲食店の先駆けとなったのが、アメリカ・サンフランシスコに店舗を構えるファストフード店「easta」です。

店頭には店員が一切おらず、料理のオーダーはお客さん自身がモニター上で行います。支払いはクレジットカードのみで、レシートはメールで送信。店内には、料理を受け取るためのロッカーが並んでおり、お客さんがロッカーの扉をノックすれば受け取りができるため、店員による配膳や受け渡しも必要ありません。

海底撈(ハイディーラオ)

日本にも5店舗を展開する中国の火鍋チェーン「海底撈」は、2018年から無人レストランの開発を開始し、厨房や配膳などの無人化に成功しています。

タブレットからの注文に合わせてロボットアームが火鍋の具材をピックアップし、配膳ロボットが客席まで運ぶといった流れでオペレーションを自動化。店員が接客に注力できるため、高いホスピタリティーを提供する店として人気を博しています。

onaji.me

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日本国内の事例

beeat sushi burrito Tokyo(ビートスシブリトートウキョウ)

「beeat sushi burrito Tokyo」は、秋葉原に2018年にオープンした寿司ブリトー(日本の寿司とメキシコのブリトーのスタイルを組み合わせた巻き寿司)専門店です(現在はすでに閉店)。

システム開発や導入コストを削減するため、お店側で端末は用意せず、注文や決済はお客さんのスマートフォンで完結するシステムで運営。メニューの原材料や販売時間などによって、AIが商品の価格を決めるというユニークな設定が注目を集めました。

PRONTO IL BAR (プロントイルバール)渋谷フクラス店

昼はカフェ、夜はバーとして、メニューや店内の雰囲気を変えて展開している飲食店「PRONTO」。

その別形態である「PRONTO ILBAR 渋谷フクラス店」には、店内に立ち飲みスペースがあり、お客さんは自動販売機で酒やつまみを買って、その場で飲むことができます。酒の種類は豊富で、全ての酒が1杯300円とリーズナブル。オーダーや配膳の手間がない分、安く手軽に飲めるため、にぎわいを見せています。

餃子の雪松

近年、肉やスイーツなど食品の無人販売店が急増しています。なかでも店舗数を増やしているのが、餃子の無人販売店「餃子の雪松」です。コロナ禍の需要アップに伴い、関東を中心に100店舗以上を展開しています。

店舗に設置された大型の冷凍庫に餃子を陳列し、24時間購入可能な完全無人店舗として営業。入店や支払いなどにデジタルツールを使用せず、お客さんが冷凍庫から商品を取り出し、料金箱に現金を入れるシステムで運営されています。

飲食店を無人化するメリット・デメリット

メリットとデメリットの比較

次に、店内オペレーションを無人化した際のメリットとデメリットを紹介します。

無人化のメリット

飲食店を無人化することで得られる主なメリットは、以下の5つです。

  • 人手不足の解消
  • 人件費の削減
  • 24時間営業の実現
  • 作業の効率化
  • 集客や販売へのデータ活用

モバイルオーダーや配膳ロボットなどを取り入れて無人化を図ると、少ない人数で店舗が運営できるようになるため、人手不足の解消や人件費の削減、24時間営業が可能になります。無人化にあたっては、導入費用やランニングコストが必要となりますが、求人用の広告費を含めた人件費と比較すると低コストで済む可能性が高いことも、一つのメリットでしょう。

また、料理の提供スピードは顧客満足度に直結するため、非常に重要なポイントです。オーダーから配膳までのオペレーションを自動化すれば、作業効率が上がり、提供にかかる時間を短縮できます。

さらに、モバイルオーダー顔認証システムを導入すれば、データから顧客の購買行動や好みを分析し、マーケティング戦略に生かすことができます。集客や販売を効率的に行えるのも、無人化のメリットと言えるでしょう。

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無人化のデメリット

メリットの多い無人化ですが、デメリットも少なくはありません。

まず、高額な初期費用が発生すること。パネルや配膳ロボットの購入費用、配膳ロッカーの設置費用など、規模や提供するメニューに応じて経費を用意する必要があります。

また、機械に依存しているため、停電・システム障害などによって営業ができなくなる事態も想定すべきでしょう。サービス提供の観点では、人間味や温かみを感じられないという点が懸念されています。

さらに、人の目がないことにより、無銭飲食・窃盗・迷惑行為などが起きる可能性も否定できません。キャッシュレスによる事前決済や防犯カメラ・顔認証システムなどで対策可能ですが、経費がさらにかさむといった課題もあります。

まとめ:飲食店の無人化で、経営課題を解決しよう

配膳ロボット

飲食店を無人化すれば、人手不足の解消や人件費削減、作業効率の向上、24時間営業の実現など、数々のメリットを享受できます。実際に、セルフレジや配膳ロボットは国内でもすでに普及しつつあり、さらに無人飲食店が普及していく可能性は高いと言えるでしょう。

無人飲食店を経営する際には、LINE公式アカウントなどのデジタルツールの活用が欠かせません。LINE公式アカウントでは、スマートフォンを使ったモバイルオーダー予約機能を利用でき、クーポンやメッセージの配信もできます。完全な無人化が難しい場合でも、業務の一部を自動化することで、人手不足の解消や集客の効率化を推進できるはずです。

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文:大杉元則
編集:はてな編集部
編集協力:株式会社エクスライト